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先へ

 ルーカスが一歩踏み出そうとしたところで、バーナードがルーカスの前に進み出る。


「バーナード?」


「こんなとこでゆっくりしてる暇はないだろう?」


「ここは俺とアーノルド、ファハドに任せてくれ」


 アーノルドとファハドが頷き、二人もルーカスの前に進み出る。



「はぁ? お前ら三人ごときで俺たちの相手が本当にできると思ってるのか? 調子に乗り過ぎなんじゃない?」


「お前たちが前に倒した上級魔物と俺たちを一緒にしないほうがいいぞ? あいつは人間が呼び出せる程度の上級魔物だ。俺たちはあの方直々に呼び出された上級魔物だからな」



 上級魔物たちの(あざけ)る視線に、バーナードが挑発するように笑う。


「いや、俺たちだけで十分だと思うぜ」


「エミリーさん頼みます」


「エミリー、お願い」


 バーナードたちが魔石を握り込んだのを確認し、エミリーは三人の持つ魔石に向かって光属性の魔力を流し込む。

 それと同時に咆哮が響き、次に顔をあげた三人の瞳が神々しい金色に変わっていた。

 三人の獣化に上級魔物たちの顔色が変わる。




「気配が変わった?……これがあの方の言われていた獣化……でもそれで俺たちを倒せると思うなんて、甘いんじゃない?」


「なんだっていい。あの方の命だ。これより先には行かせない」


「お前らには俺らの相手をしてもらうぜ! ルーカス、行け! エミリーをしっかり守れよ!」



 バーナードがニヤッと笑い走り出すと同時に、ルーカスもまたエミリーの手を取り走り出す。そしてそのまま上級魔物の横を走り抜ける。



「通すわけがないだろう」



 上級魔物はすぐさまルーカスへと爪を振り下ろす。

 しかし、それをバーナードが受け止めた。



「だからお前らには俺らの相手をしてもらうって言っただろ?」


「くそっ! 邪魔だ! どけ! おい、お前の魔法で止めろ」


 上級魔物はイラついた様子でバーナードを睨みつけると、もう一体の上級魔物に視線を向ける。

 もう一体の上級魔物は頷き、魔法を放とうと構えた。しかし、それと同時にファハドとアーノルドが剣を振り下ろす。



「チッ!!」


 魔法を放つ隙を与えず、次から次へとファハドとアーノルドが攻撃繰り出し、上級魔物は舌打ちしながら、何とか二人の攻撃をかわす。



「獣ごときが俺たちの邪魔をするな!!!」



 上級魔物たちの怒号が響く中、エミリーはチラリと後ろを振り返る。

 その視線に気づいた三人が余裕のある笑みを見せる。



「獣化した獣人族を()めてもらっちゃ困るな」


「そうですね時間もありませんし、手早く片付けましょう」


「すぐ追いつくからね」


 三人の自信に満ちた声を聞きながら、エミリーはルーカスに手を引かれ、その場を三人に任せ先へと進んだ。



 それからしばらく走り続け、やっとルーカスが足を止める。エミリーは肩で息をしながら何とか呼吸を落ち着かせる。


「ここまで来れば、戦闘に巻き込まれることはないだろう」


「エミリー大丈夫か?」


「私は大丈夫です」


 エミリーは走って来た廊下を振り返る。


(バーナードさんたち、大丈夫だよね?) 



 エミリーが不安気に廊下を見つめていると、それを察したルーカスとアドルフが笑みを見せる。



「あいつらなら大丈夫だ」


「そうそう! バーナードなんて丈夫さがとりえだしな!」


 エミリーを安心させるように(おど)けて笑う二人にエミリーも笑みを浮かべる。


「そうですよね! 三人は強いのですから、負けるはずありませんね!」


 ルーカスとアドルフはにっと笑うと、力強く頷いた。


「さて、せっかく三人が奴らを引き受けてくれたんだ。私たちは先を急ごう」


「はい!」





 エミリーは先へと進みながら先ほどの上級魔物たちの言葉を考えていた。


(あの方っていったい誰なの?)


 獣王国で戦った上級魔物を彼らは『人間が呼び出せる程度』と言っていた。

 それならばさっきの上級魔物たちは人間では呼び出せないということだろう……では人間では呼び出せないはずの上級魔物をいったい誰が呼び出したのか……


(まさか……魔族?)



 嫌な予想にエミリーはブルリと体を震わせる。

 もし魔族であったなら、今のエミリーに倒すことができるだろうか?


(歴代最高峰の力を持ち、魔族を倒したと言われる五百年前の光の守り手の力には私は到底及ばないわ……もし彼らの言う『あの方』が魔族だったら、私は……)



「エミリー? 大丈夫か?」


 エミリーがはっとして顔をあげると心配気な様子のルーカスがエミリーを覗き込んでいた。


「大丈夫です」


 エミリーが何とか笑みを浮かべて答えると、ルーカスは眉を寄せる。



「大丈夫という顔色ではないぞ」


 ルーカスはふっと笑みを見せるとエミリーの手を取り、優しく握り込む。



「何度も言うが、エミリーのことは私たちが守る。たとえどれほど強い者が相手でも絶対にエミリーを傷つけさせない。だから大丈夫だ」


「ルーカス様……」


「そうだぞ! 俺たちがついてる!」


 アドルフがルーカスの後ろからの顔を覗かせ、余裕のある笑みでニヤッと笑う。


(そうだ……私は一人じゃない!)



 エミリーは気合いを入れるため大きく息を吐き出すと、黒いモヤがさらに濃くなる廊下の奥へと歩き出した。



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