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第4話

   

 画像修正アプリを手に入れたのが、そもそもの発端だった。

 何か面白い遊び方はないだろうか。そう考えた坂田は、ふとした思いつきで、長山が好きなアイドルの写真を取り込み、加工してみる。すると出来上がったのが、似ているけれど別人に見えるような、普通の女子高生っぽい美少女だった。

「我ながら良い出来じゃないか! 長山にも見せてやろう!」

 でも普通に見せても面白くない。そこで、架空の女子高生をでっち上げる、という悪戯を思いついた。

「本当に熱心なファンなら、好きなアイドルの加工写真だと見抜けるはずだよな?」

 つまり、ちょっとしたテストだったのだが……。

 長山は気づかなかった。

「だったら、気づかない方が悪い」

 と自分に言い聞かせて、坂田はマミを演じ続ける。「声を聞きたい」という長山の要望に合わせて、ボイスチェンジのアプリも利用。「会いたい」に対しては「高校を卒業してから」と先延ばしにした。

 そうこうするうちに、とうとう高校生活が終わってしまったのだ。


「ここまで長く続けるつもり、元々なかったんだよなあ。ドッキリのネタバラシって、タイミングを逸すると、こんなに大変なのか……」

 気が重いまま帰宅した坂田は、罪悪感を拭い捨てるかのように首を振りながら、二階の自室へと向かう。

「とりあえず……。考えても仕方ないことは、考えるだけ無駄だよな。後回しにしよう」

 部屋に入ると真っ先に、気分転換のつもりでパソコンを立ち上げる。

 インターネットを開いて、お気に入りのVTuberのチャンネルに繋いだら、それだけで自然に顔がニヤけてきた。

「おお、ミス・ロングちゃん! 今日も可愛いなあ!」

 画面の中では、紫色の衣装を来た美少女アバターが、同じく紫の長髪を振り乱しながら、キレのあるダンスを披露している。

 坂田にとっては、いわば一目惚れの相手だった。

「よし! 今日もいっぱい応援しちゃうぞ!」

 今月の小遣いは、まだ半分以上残っている。

 頭の中で金額を確認しながら、スパチャを投げる坂田。

 この瞬間、既に長山の件は忘れているのだが……。


 坂田は知らなかった。

 その長山こそが『ミス・ロングちゃん』の中の人であることを。




(「坂田くんと長山くん」完)

   

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