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第2話

   

「俺にカノジョが出来たぜ!」

 長山が坂田のところまで報告に来たのは、今から数ヶ月前、まだ残暑が厳しい頃だった。

「何言ってるんだ? 女の子と知り合う機会なんて、俺たちにはないぞ?」

 あまりにも長山が浮かれているので、少し坂田は怖くなり、あえて厳しめの口調で否定してみせた。

「まさか、夢でも見てるのか? 現実の世界に戻ってこいよ……」

「夢じゃない、ほんとのことさ! ほら、これがマミちゃんだ!」

 長山はスマホを取り出し、いくつかの写真を坂田に示す。

 どれも同じ少女であり、ポーズや表情は異なるものの、セーラー服姿ばかり。

「ほう、可愛い子だな。お前の好きなアイドルにも似てるような……」

「そうだろ? 初めて見た時、BNKA99のユリリンかと思って、俺も驚いたぜ!」

 BNKA99とは、長山が熱を上げているアイドルグループだ。

 かつての坂田は、アイドルに夢中な長山を冷ややかな目で眺めていたが、今では「同世代の女子と接点がない以上、偶像の女性に憧れるのも仕方ない」と考えを変えていた。坂田自身、いつのまにかVTuberにハマってしまい、小遣いの大半をスパチャに費やす日々だった。

 とはいえ、それとこれとは別問題だ。興奮している長山に対して、坂田は冷静に指摘する。

「でも長山、お前のその写真、どれも彼女単独じゃないか。恋人だっていうなら、なんでツーショットがないんだ?」

「そりゃそうさ。まだデートしてないからな」


 二人が知り合ったきっかけは、間違い電話ならぬ間違いメール。マミが友人に送ったつもりのメールが、ちょっとした入力ミスにより、アドレスの似ていた長山のスマホに送られてしまった。

 普通ならば放置するところを「本来の宛先にメールが届かず、しかもそれを送り主が把握していないままだと、後々困りそうだから……」と考えて、長山は律儀に返信する。そこからメールのやりとりが始まり、二人は意気投合。恋人同士になったのだという。


「それじゃ、何か? 実際に会ったことは、一度もないのか?」

 わざとらしく目を丸くして、坂田は驚いた表情を作る。

 坂田の過剰な反応にも臆せず、けろっとした顔で長山は返した。

「ああ、だけど毎日のようにラインで語り合ってるからな! この通り、たくさん写真も送ってくれるし、たまには直接、電話で声を聞いたりもする。恥ずかしがってるらしくて、ボソボソした小声なんだけど……。そこがまた可愛いじゃないか!」

 彼女が住んでいるのは隣の県。車があれば一時間くらいだが、電車だと遠回りする形になり、片道二時間以上かかるそうだ。

「だから会えないのも仕方がない。ほら、お互い高校三年、受験生だからな。今は学業に専念して、高校卒業したらデートしよう、って約束してるのさ!」

   

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