現実でやっぱりにゃんはつらい
「あれ?もしかしてあなた?」
いや、ごまかす前に気が付かれている。絶対、ごまかせない。
「やっぱりそうよね。同じ学校のこの前、少し話しした子だよね」
彼女にとってあれは会話になるらしい。私からすればオドオドとしている変な下級生を優しくしてくれるも完全に逆効果でテンパるという状況としか思えず、会話という会話は一切無かった様な気がするのだがどうやら気のせいのようだ。そして彼女が私のことに気がついているのも気のせ・・・
「まさかこんな形で出くわすとはね!びっくりしたー。友達欲しかったの?」
「いや・・あの・・・」
こちらの反応をよそに次から次へとわんこそばの様に質問が飛んでくる。その蕎麦を避けながら手元のお椀を振り回すのだが振り回した先で既に先回りされている。
「何回か使ったことあるの?いつもなの?」
「ちょっとネットで見つけて・・・初めてで・・・暇つぶしに・・・」
絞り出した言い訳としてはこれほどのベストは無いだろう。と自画自賛してみるが彼女は納得していないようだ。
「まぁ良いや。あんまり詮索されるの苦手そうだものね」
「先輩こそ何で・・・」
「あぁ!私はアルバイトとしてだよ!うちの家、貧乏だから割の良い仕事探してたら見つけて。しかもほんとに健全なんだよねー。まぁ女の子としか遊ばないからかもだけど」
さらっと言っているがアルバイトといえばコンビニぐらいしか思いつかない知能の持ち主の私には既にパンク状態だ。
「あれだよ!変なこと考えてるでしょ?まぁ私も最初胡散臭いなぁって思ったし怖かったけど。ちゃんとしたお店で楽しく出来るんだよね。系列でメイド喫茶もやってるからよろしくね!」
普通に営業されとる・・・
「さて、時間も決まってることだし何処に行こう?行きたいとこある?」
フルフルと首を左右に振る私を見てあっとした顔をする。
「そういえば名前聞こうと思ってて聞いてなかったよね。私はね。梓!これ本名ね。だからあずにゃん。あなたの名前は?」
「栞です」
「そっか!じゃあしおりんって呼ぼう!」
「梓さん、あの・・・」
「駄目だよ。しおりん!今は私達は友達なんだからあずにゃんって呼ばないと」
いや、一万歩譲って、梓さんが私のことをなっちゃん呼びは分かる。だが彼女の問に対して「そうだね。忘れてたよ。あずにゃん!」なんて言おうものなら身体が砕け散りそうだ。
なにこれ拷問・・・おかしい。あんなに天使の様に見えていた先輩が今は地獄の底からやってきた悪魔か鬼にしか見えない。しかも可愛い。
時間はまだたっぷりある。無駄に張り切って一日コースなんて選んでしまった結果、既に私の頭には撤退戦のシナリオが書かれようとしていた。




