エピローグ
ドタバタの3ヶ月後、盛大な結婚式が開催された。
そして同時に、アレクサンダーの王太子と、グレースの王太子妃の任命式が行われ、2人は正式に夫婦となり、王太子並びに王太子妃となった。
結婚式では、兄のニコラスの隣にミリュエル王女がいたり、マキシミリアン殿下の横には一ヶ月前に結婚した夫人がいて、2組とも仲良さそうにしている。ミリュエル王女は完全にとげが抜けていたし、マキシミリアン殿下も嫌味ったらしさがなくなった。
色んな夫婦の形があるのね…
グレースは2組の夫婦を見て思った。
自分たちだって、結構特殊だ。
仮面夫婦からはじまっての…今だから。
披露宴の宴では各国の来賓が押し寄せ、もちろんランバートやフィオーネも来てくれている。
「グレースちゃん。あの魔道具は画期的だね。試作品作れた?」
「それが忙しくてまだなの」
「ああコイツのせいだろ?ほっとけばいいのに」
「おいっ!だいたい人の妻に向かってグレースちゃんとか呼ぶのはもういい加減にやめろ。手紙のやりとり禁止にしてやるぞ!」
「はいはい」
「アレックスさまあ。もう結婚しないってほんとですかぁ?」
相変わらず猫なで声のフィオーネにはもう勝手にしてくれという心境だったけど…
「お前ももうそろそろわきまえろ。俺の妻はグレースだ」
「え?」
アレクサンダーがはっきりと言ってくたおかげでフィオーネはしゅんとしてしまったが、おかげで気を使わなくて良くなった。
「あーあ。お前ら見てたら俺も結婚したくなってきた。ちょっと本気で考えようかな?」
ランバートならする気になればいつでもいけそうだ。
「ああ。はやく結婚しちまえ」
「じゃ。早速探しに行ってくる」
切替はやっ。
レイトンの新しい王太子と王太子妃の各国への評判は上々で、グレースもアレクサンダーもホッとして、そしてやっと…一日の予定を終え、部屋に戻ってきた。
「あら?」
「なんだよ?」
「お部屋が…」
「当たり前だろ?今日から夫婦なんだぞ。やっと夜這いかけなくてすむんだぞー。堂々とやれる!」
やれるとか直接的すぎる表現やめてよ…
侍女もいるのに。
そういえば…侍女がいても隠さなくなったなとグレースはその時気づいた。
きっと隠す必要が無くなったんだわ。
いいことよね…。
「さ、寝ようぜ。はやく」
「まだ湯浴みもしてないのよ」
「関係ない。おいお前らもう下がれ」
「ちょっ…」
「風呂のお湯だけはっておけ。勝手にやるから」
「は?」
「一緒に入ればいいだろ?」
そんな言い合いをしている間に侍女たちはすーっと誰もいなくなっていた。
「さ、行くぞ」
慣れた手つきでドレスを脱がされ、そのままお風呂に…。
「あー。さすがに疲れたなぁ…」
「うん…そうね…」
お風呂に2人で浸かりながらアレクサンダーは目を閉じている。
「やる?それともベッドまでとっとく?」
「もう。ベッドまでに決まってる」
「そ、残念」
そして汚れを落とし、お風呂で疲れをとった2人はそのままベッドに入った。
「あのね…アレク」
「ん?」
「今日は優しくして」
「なんで?なんか俺いつもがっつきすぎ?」
少し傷ついた表情。
「じゃなくてね。たぶんだけど…」
グレースはそっと視線を下に落とした。
「いる気がするの」
「は?」
「ここ」
お腹の上にアレクの手を持っていく。
「え?ここって?え!それって」
「うん」
「ほんとかよ!」
アレクサンダーがガシッと抱きしめてきた。
「ほんとだったらいいな」
「おお」
月のものが遅れているし、昨日から少し食べ物の匂いが気になるようになったのだ。
「明日王医の先生に相談してみるわ」
「早すぎって言われるけどな」
「ええ」
「ま、二人の子だし、愛してるからいいよな。あ、やってもいいのか?」
「うん。いいみたいよ。それは妃教育で聞いたから。ただ激しいのはダメだって」
「そうか。じゃあやさしくする」
「うん。あ!ミゲル神!」
「何?」
「うん。何でもない。たぶんこれでいいはずだから」
「ふうん。まあいいや」
そんな仲良しなふたりの会話を未来の王太子はお腹の中で聞いていたのかどうか…
この後、レイトンは2人の代で栄え、たくさんの王子王女の大家族として大陸に君臨することとなるのはまだもうちょっと先のお話…
仮面夫婦は…ようやく本当の夫婦に…なりましたとさ。
〜fin〜
いままで読んでいただきありがとうございました。
作者としてはもう終わりか…っていう感もありますが…
これにて完結となります。
ランバートに恋が訪れますように…
この後ちょこっと番外編あります。(明日公開)




