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ラクアート離宮へ2

「仮面夫婦なんてやめようぜ」


「え?ええっ?!」


つつーつとアレクサンダーの長い指がグレースの首筋をなぞるとゾクゾクはさらに増していく。


「アレク?」


「お前は…俺のこと…嫌いなのか?」


「え?」


「俺は…好きだよ。グレース」


そしてキリッと視線をまた合わせてきた。


「目、逸らすな。ちゃんと応えろ。俺の質問に」


目をまたそらせようとしていたグレースは、仕方なくそのまま…視線をからませた。


「お前のこういうとこ、最初から好きだった」


「どういうとこ?」


「目そらすとこな。かわいいって思う」


か、かわいい?


真っ赤になっていく顔をそらしたいけどそらさせてくれない。


「ズケズケもの言うくせにさ、かわいいって思ったよ」


あごをクイッてあげられた。


「で?こたえろよ。質問」


それは嫌いなのかってことよね…


「嫌い、じゃないわ」


「それだけ?」


もう。どうしてこんな突然こういうことするのよっ!

わたしだってずっとずっと…

そうよ!


「好きよ!とても好きだわ。仮面夫婦なんてやめたいって思ってるわよ!」


言ってしまった。

こんなこと言うつもりなかったのに…


アレクが好きだとか言うから…


そしたらアレクサンダーは…にっこり笑って言った。


「それじゃ何の問題もないな。今すぐ仮面夫婦なんてやめちまおう」


そして…そして…


そのまま…とても色っぽいそのイケメンの顔で見つめられたグレースの唇は、一瞬の後に、柔らかい唇に塞がれてしまっていた。


「おいでグレース。1週間思い切りかわいがってやる」


お姫様みたいに抱き抱えられ、気づけばベッドの上に落とされていたグレースはそのまま次の日の朝まで…はなしてもらえはしなかったのだった。





ふぅー。


隣で眠る愛しい女。


くそーっ。

何度でも抱けるじゃねーか。


相手ははじめてだしと思いながらも止められないなど、遊び人アレクサンダーにはありえないことだった。


鈴がなるようなベッド上での声も、恥ずかしがる時に視線をそらせるのも、ベッドの上でさえズケズケものを言うのも全部愛しくて仕方ない。


こんな女と仮面夫婦だと?

ありえない。


何よりも…こいつの魂が好きだ。

求めるのは俺にズケズケとものを言うコイツで、俺にズケズケ言われても動じないコイツで、そして俺だけがこいつの全てを知ってるという優越感。


もっとはやくに抱いておくべきだった。

いやでも今だからこそ、感慨深いってのもあるかもしれないし…。


まぁ要は離れられない女だということだけはわかった。




結婚までダメだと思いながらも中に思い切り…


まあいいか。

結婚すんだし。



けど…グレースはどう思うだろう?


俺が…もし…


「ん…」


パチパチとその長いファサファサのまつ毛を瞬いている。

起きるらしい。


「あ…アレク」


そして顔を真っ赤にする。


「わたし変じゃなかった?」


「んー。変だった」


「え?ウソ」


「くくく」


笑ってキス。


「変なわけあるかよ。こういうのはさ、俺の言う通りやれば上手くいくの。俺百戦錬磨なんだからさ」


「え、あ、うん。それは知ってる」


知ってるっておい!なんか妬くとかないの?


「でも言っとくけど、お前と出会ってからは1回も女抱いてないぞ」


「へ?ウソでしょ?」


「ホントだよ。抱く気になれなかった。誘われたけど」


「あやしい」


「信じないとは思ったよ。けど主張くらいはさせてくれ」


「うん。主張だけね」


「おいっ!」


コツン、額を指でつつく。


「いた…」


これも好きなやつだ。


でキスをした。


まあこのまままた第○ラウンド行きたい気もするけど、こいつの身体が持たないから一旦休憩しよう。朝だからな。




それからの1週間は静かな雪の離宮でまったりゆっくり、休暇を楽しんだ。



1日をのんびり過ごし、夜は激しく。


当然、ご飯は全部めちゃくちゃおいしかった。

グレースと2人で食べるからな。



このまま時が止まればいいのにと思った。

そしたら…考えなくて済むのに…





「なぁ。グレース」


休暇の最後の日の夜、アレクサンダーはグレースを抱いたあと、愛しげに髪をかき分け、おでこにキスをした。


まだはぁはぁと息が上がっている。


「俺が…王太子になれなくても、お前は俺を好きでいてくれるか?」


「え?」


グレースが目を見開いた。


「アレク?何かあったの?」


心配そうなグレースの瞳が、陰るのはやっぱり見たくない。


アレクサンダーは決意した。


「キャメルロードが王女を差し出してきたんだ」


グレースの瞳の奥を見つめながらアレクサンダーは言った。


「え?」


ほんの一瞬だが…グレースの瞳の奥にチラっとよぎった動揺をアレクサンダーは見逃さなかった。


俺はそんなお前を見たくはない。


「それって同盟を結ぶということ?」


「ああ。その通り」


「ならば、それを受ければあなたが後継者という事ね?」


「そうなるな」


そしたらグレースはパッと顔を輝かせた。


「よかったじゃない!受けるべきだわ。これで…」


やっぱりそう言うと思ったよ。

だけどな…


「俺は…その権利は…マキシミリアンに譲ろうと思う」


「は?なぜ?」


「お前を…」


「あなたは!国王になりたかったのでしょう?だからわたしとの結婚を選んだ。そうじゃなかったの?」


「そのつもりだったよ。だけど…」


「断るなんてバカよ。国王陛下があなたに先に話をもちかけたということはあなたの方が王太子として適任だと思われているからなのよ。なのに!」


「それはわかってる。それでもさ」


「そんなことしてもらってもわたしは…」


「これは俺の問題だ。嫌なんだもう」


「え?」


「お前がいい」


「何を…」


「お前しか嫌だ。ほかの女を抱きたくない」


「アレク?」


ポスッとグレースの胸に顔を埋めた。


「お願いだ。王太子でなくても俺を好きだと言ってくれ」


「アレク…」


彷徨うグレースの腕。


アレクサンダーはその腕がアレクサンダーの背中を包んでくれるのを待っていた。


けれど…


「いやよ」


グレースのかわいた声がした。


「あなたが王太子でないなら、嫌」


ああ…そうかよ…

そんなにお前は…


「わかった」


アレクサンダーは顔を上げた。

せっかく心通い合ったはずなのに…

なんだかまた暗雲が…

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