改めて、許せない者たちへの復讐を誓う
きまぐれゆっくり更新ですみません
「ねえ。あなた」
さっきから常に近くにいることの多い侍女を呼ぶ。
「はい。お嬢様」
「新聞を持ってきて頂戴。えっと…」
「メイにございます。新聞…でしょうか?」
びっくりしたように目を見開いている。
きっと今までのグレースは新聞など見向きもしなかったのだろう。
「ええ。読みたいの」
「わ、わかりました」
さきほどから率先して世話をしてくれているメイというこの侍女はどうやら、感情を表に出しやすいタイプらしい。侍女としてはよいとはいえないが、まわりの状況を伺いながらグレースとしてふるまわなければならない自分には必要な人間だとグレースは思った。
「メイ。あなたのこともすっかり忘れているみたい。ごめんなさいね」
新聞をとってきてくれたメイに御礼をいうと、少し頬をあからめながらそばに控えてくれているようなので、新聞を開けてみる。
『ミゲル暦982年4月12日』
ロージーが死んだ翌日。
1枚1枚注意しながらめくり、死亡記事と叙爵、廃爵などの情報のページを入念にチェックしてみるが、ロージーの件はまったくどこにも載っていなかった。
貴族が死亡したら翌日に新聞に載るはずだ。
だが、載っていないという事は…すでに北方針葉樹林にでもロージーの遺体は捨てられており、魔物の餌食となっていることだろう。
おそらく死亡届すら出さず、失踪したことにでもするに違いない。
新聞で顔をかくしたままギリッとグレースは奥歯をかみしめた。
絶対に許さない。あの2人。いや、3人よ。
かわいい妹だと思っていたシエナ。
お母様が死んでから人が変わったように憎しみを前面に出し始めた大嫌いな義母ネリー。
そして好きになろうと努力していた婚約者の顔だけ男サミュエル・クレーバー子爵令息。
グレースの使命を全うすることはミゲル神との約束だから別としても、やつらを地獄に落とすまで絶対に死ねないわ。事実、ミゲル神はこの件についてはグレースの心に一任すると言った。だから好きに復讐していいはずよ。
由緒正しきガードナー伯爵家をのっとったアイツらは絶対に!地獄に落としてやるっ!
「メイ。これからは毎日新聞をお願いね」
「はい」
「ねぇ。メイはわたくしに仕えてくれているのは、長いの?」
メイがキョトンと目を大きくする。
「こんなこと聞いて悪いと思うのだけれど、覚えていないから」
少し目を伏せて言うと、ブンブンと首を横に振った。
「悪いだなんて滅相もごさいません。わたくしは3ヶ月前よりお仕えさせていただいておりますし、その他の者もだいたい同じ頃からです。」
「え?そうなの?」
「はい。3ヶ月前にそれまでいた使用人がたくさん辞めたのだと聞いております。詳しいことは…存じませんが…」
なんなのそれ…
きっと何かあったのだわ。
けれど…この者たちは問い詰めても知らないだろう。
でもお陰で都合がいいわ。
本来のグレースと全然違う性格になっていても、あまり疑われないってことだもの。
そのあともグレースはメイに色々と質問して、今の状況をとりあえず把握することにその日は費やし、瞬く間に日は暮れて行った。