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シエナの罪を証言できる男

「おい。起きろ!2人とも」


どれくらい経っただろう。


アレクサンダーの声がして、重たい瞼をあげた。


「アレク様?」


まだ体がだるい。


どうやら眠ってしま…


はっ!


「どうしよう。寝てしまったわ!」


バサッと起き上がったら、前のソファでもランバートがガバッと起き上がったところだった。


目の前にはアレクサンダーが心配そうに覗き込む顔がある。


「揃いも揃って眠ってるなんて不用心にも程がある。ケニアに護衛頼んどいてよかった」


「悪いね。けど、2人で王宮中を封じたからかなり体力使ったんだよね。部屋入ってすぐもう記憶ないよ。俺」


「わたしもです」


「今あれからどのくらい?」


「ああ。1時間ほどだな」


「そうか。体力回復するにはまだ時間は必要だけど応急的にはなんとかなったレベルかな。対策会議しないとな」


「ああ。大丈夫なんだな?」


「大丈夫です。事態は急を要することですもの」


ランバートもこくりとうなずいた。


さてと…

と3人が膝を合わせて話し合う態勢に入る。


「あの魔女を捉えるには魅了の効かない男を囮にするしか無いと僕は思ってるんだよね。僕がなってもいいんだけどさ。あの魔女となんの面識もないからね。やっぱりここは…」


「俺って言いたいのかよ」


アレクサンダーは憮然とした顔でそれでも仕方ないというふうに呟いた。


「おっ。話が早いね。あの魔女と会う時にさ、この目薬させば、オレンジのにせ魔力光が身体から1時間だけ出るようになってる」


「そんなものがあるんですか?」


「うん。俺が開発した。こういうの必要だよ。グレースちゃんも用意しときな」


す、すごい。

ランバートはいつから魔術師をやってるんだろう。

戦争では彼は魔術師として大活躍してることだろう。


それはさておき、要はアレクサンダーが魅了にやられたと勘違いさせるということだ。

要するに、これからもアレクサンダーはシエナと会うということになる。


胸の奥がザワザワする。


正直なところ言って嫌だ。

シエナと接触するなんて…、視線をかわすなんて、想像しただけでムカついて身震いする。


けれど…シエナを消すためには仕方ない。


「さっき王宮から連れ出した時に次会う約束くらいしてきたんだろ?その時に使って。それでいつ?」


「明日の夜、飯に誘った」


「まあ早いほうがいいからね。じゃあこうしよう。アレックスはその場で断罪できる罪をあの魔女に認めさせるだけの状況を作らねばならない。その断罪は俺とグレースちゃんがやる。その場で殺してしまわなければならないんだ。今、王宮から魅了者が消えている間に。それをあの魔女が気付く前に」


「ああそうだな」


「そうしなければレイトンは滅ぶ」


ランバートの言葉に背筋をスッと寒いものが駆け抜けた。

そうだ。このまま放っておけばレイトンは…滅ぶ。


そんなことがあってはならない。絶対に。


「わかってる」


「何か…ないかな?なすりつけられる罪」


「あるわ」


こんな時に…自分のことばかり考えてられない。


「なんだ?」


「姉殺しの…罪よ」


それしかない。


「姉殺し?」


「やっぱり…そうなんだな」


アレクサンダーが渋い顔でグレースを見ていた。


「ええ。それを証言できる男がいる。サミュエルよ」


もうこれを使うしか。ない。


嫌だけど…。



「じゃあ、そのサミュエルという男になんとしても白状させなければならないよ。できる?」


「やるわ。今から…彼のところへ行くわ」


「待て。俺が一緒に行く」


アレクサンダーが真剣な瞳でグレースを見た。


「わかったわ」


覚悟を決めて、グレースはアレクサンダーとともにサミュエルと対峙するために旅立った。


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