アレクサンダーの事情〜つづき
今回短めです。すみません
だから、アイツには失脚してもらわねばならない。
アレクサンダーが正式に婚約し、結婚の日取りも発表したものだから、今まで群がっていた名家の令嬢たちはマキシミリアンに鞍替えしはじめた。
いつもならチェックマイスター系列から選ぶのだが今回はどうやらチェックマイスター家は分家も含めて年ごろの令嬢がいないらしい。
どこかチェックマイスター派の令嬢から選ぶしかないのだが…。
ちょっと覗いてやろうかな。
「ケニア。第一王子宮の方、少し顔を出してくるよ」
「はい。かしこまりました」
できるだけ王宮の使用人達の前でも素は出さないようにしている。
だが、ケニアは小さいころからずっとアレクサンダー付で信用している。
唯一と言ってもいい。
毒入りの菓子に気づいてくれたこともありケニアのおかげで何度も命拾いしているのだ。
アレクサンダーは第一王子宮に向かって歩き出したがおそらくケニアは見えないように付いてきている事だろう。護衛騎士は空気みたいに控えているものだ。
第一王子宮に近づくと、女たちがわんさかいる。
かつては自分のまわりに群がっていた女たち。
美しく着飾り誘惑してくる女。
身体の関係を持った女も何人かいる。
げんきんなものだ。
誰とでも寝るビッチな女たち。
さすがにそんな女をマキシミリアンも相手にはすまいが…。
「あら、アレックス殿下ではございませんこと?」
早速声をかけてくる女もいる。
こういう女は誰とでもいいのだ。
「アレックス様ぁ。お元気でしたかぁ?面白みのない女の相手は疲れますでしょう?」
胸の大きさを強調したドレスを着ている。
昔ならすぐにでも空いている部屋を探して行為に及んでいたことだろう。
だが、今はそういう気分になれない。
適当に手をふり、愛想だけふりまいた。
マキシミリアンのところへ急ぐ。
「兄上。お茶会をされているというので挨拶に伺いましたよ」
にっこり笑ってあたりにいた女性たちに手を振る。
「わたしの方は結婚が決まりましたのでこういう場に呼ばれることも少なくなりましたから少し寂しくてね。」
母親同伴の令嬢も多く、母親たちにもにっこりと笑いかけるとほとんどは扇で顔を隠すが、これがまた効果的なのは心得ている。
「何をしに来たんだ。アレックス。おまえにはあの美しいだけの令嬢がいるじゃないか。こんなところに来ている暇があったら、フィッツジェラルド邸にでも顔を出してきたらどうだ?」
『美しいだけ』を強調する。
まぁ美しいだけだと思っていたよ。俺もな。
「そうですね。わたしはさみしく引き上げる事といたしますよ。未来の妻の元へ参じることといたします」
アレクサンダーは会場全体に笑顔を振りまく。
敵に笑顔を売っておくことも大事なのだ。
敵から嫌われてはならない。
いつかそいつが主に見放されたとき、あるいは見放したときに、こちら側につく可能性がある限り。
少しだけ会場でめぼしいと思われる夫人たちと会話をしてからアレクサンダーは会場を後にしたのだった。
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