婚約披露パーティー
陛下の謁見室には、アレクサンダーの母であるダリア妃は当然いたが、その反対側にヒラリー妃と第一王子であるマキシミリアン王子もいた。
マキシミリアン王子はアレクサンダーより濃いアッシュブロンドの髪にアレクサンダーと同じ碧い瞳をしていて、この方もそれなりにイケメン。
王家ってのはどうなってるんだか…。
ただ、どうみてもアレクサンダーの方が超絶の美形であることには変わりはないが…。
アレクサンダーはヒラリー妃とマキシミリアン王子にも1年後に結婚する旨を報告していた。
「へぇ。結婚するの?俺はまだなのに?」
どうやらマキシミリアン王子は厭味ったらしい性格らしい。
まず、瞳が厭味ったらしかったし、同じ碧い瞳なのに、魅力が半減して見えるのはきっとそれが原因だろうとグレースは心の中で理解した。
「ええ。愛し合ってますから。早い方がいいでしょう?」
そんなマキシミリアンの嫌味をものともせず、アレクサンダーはさらっと言ってのけて、グレースの手をとった。
そしてにっこり笑って見つめてくる。
舞台俳優か!
そう叫んでやりたいと思いながらもグレースもにっこり笑って応えるとマキシミリアンは黙り込んで何も言わなくなった。
さて…
その後パーティー会場へ移動した2人だが…
王宮のホールは人でごった返している。
ロージーのときに舞踏会や夜会、パーティーや茶会などには何度も出席しているが、ここまで人にあふれているパーティーははじめてだ。
「す、すごい人」
思わずつぶやくと、アレクサンダーがとなりでボソッと言った。
「気、ひきしめろよ。ここは舞台だと思え」
「ええ。わかってるわ」
会場でわかったことといえば、アレクサンダーのすごさっていう1点だ。
ただの猫なで声イケメンだと思っていたが、全然ちがっていて、彼の人望の厚さには驚くばかりだった。
このパーティー自体が第二王子とフィッツジェラルド公爵家の主催なので、そっち側の人間が集まるので当然と言えば当然だが、国内だけでなく国外にもルートをたくさん持っているようだ。
彼の母親がガルフレッド王国の王女なので、ガルフレッドに知り合いが多いのは納得としても、それ以外の国にも知り合いが多く、何よりもそれらが口先だけのものでなくきちんとした人望であるという点がすごいと思った。
こういうことが分かるのもロージー時代に伯爵家後継者としてガードナー家を取り仕切っていたからであるのだ。
その時に、信用できる人間と口先だけの人間の区別をつける方法は身に着けたはずだ。
アレクサンダーのまわりにやってくる人間は間違いなく信用できる人間のほうだった。
そして、彼は語学がとても堪能で、ほとんどの国の人たちと普通に会話を楽しんでいた。
くそーっ。
勉強好きのロージーだったころの血が騒ぐ。
話してる内容がわからないわ。
ムカつく…!
ガードナー家の領地はガルフレッド王国と隣接していたので、ガルフレッド語はなんとか理解できたがそれ以外はさっぱり。
これは勉強する必要がある。
結婚するまでにせめて同盟国であり国交のあるベル王国の公用語であるベル語くらいは話せるようになる必要があるわ。
どれくらい挨拶の時間を過ごしただろう。
ようやくダンスの時間が来たらしい。
壇上に戻り、アレクサンダーから目配せで合図があり挨拶をはじめた。
「本日はわたしたちのためにお集まりいただきありがとうございます。本日ここにわたしたちの婚約を発表し、結婚の儀を1年後の4月20日に執り行うことを発表させていただきます」
アレクサンダーが宣言すると会場がわーっとわいた。
「アレクサンダー王子万歳!」
「ご婚約おめでとうございます!」
「お美しい王子妃万歳!」
最後の声援にグレースは苦笑する。
グレースの人望のなさを象徴しているかのよう。
それはそうだ。
一度も社交界に顔を出さずに突然王子妃になると宣言されたのだ。
美しさしか取り柄の無い令嬢が。
これじゃあダメね。
とグレースは気持ちを新たにした。
1年後の王子妃に向けて、『自己啓発+人望集結活動』 はじめるわよ!
当然、ダンスは1曲だけで息絶え絶えになったことは言うまでもなく…グレースはその後、ゆっくりと部屋で休む羽目になったのだった。
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