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すばらしきかなこの世界  作者: 蝉時雨
第二章 ディヴァイン編
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第二章(10) 水面下の策謀

ふふ、データ消えちゃったんだよ?

泣いちゃいそうだ。というか、ふてくされてました。

そして気がついたらまた時間が経つ…。

◆Firo◆


 おかしい。フィーロは正座をしつつそんなことを思った。これはとばっちりというものではないのだろうか。

 かれこれ二時間だ。

 フィーロとシンドは説教を受けていた。

 当然、やりすぎということだ。リカルドはため息を漏らして、とりあえず二人に拳骨を見舞った。これをとばっちりと言わずしてなんと言うのか。

「だぁってよ……」

「だってではないよ。加減を考えなさい」

「うう……」

 さしものシンドも反論の余地はなく、ただ呻くだけだった。元はと言えばこいつが悪い。元凶だ。もっとどついてやればいい。

 勝負はある意味引き分けだった。オーバードライブした神器(ディヴァイン)がぶつかり合った結果、草原は荒地に変わった。背後は陥没した穴がある。まるで爆発でも起こったみたいな感じだ。というか完全に爆発していたので、まるでも何もない。

 だがこれでもマシなのだという。ダンデは自ら言った通りに「相殺」をした。俺にはわからなかったけれど、シンドの一撃を内に閉じ込めるようにしたらしい。非常に細かい演算とやらが必要らしく、もしダンデの機能がなければむしろ倍加し、破壊の規模はこの程度では済まなかったのだと。まるで意識していなかった分、俺はそのことをリカルドに咎められた。知らなかったという言い訳は神器遣い(プロヴィデンス)には通用しないのだと、それほどまでに圧倒的なものなのだと言われた。

 確かにその通りかもしれない。

 これほどの破壊を行える術など、魔術以外はないと思っていた。しかし現にここに存在するのだ。魔術以外の圧倒的な存在が。

「ダンデライオンのお陰でこの程度で済んだとはいえ、近辺の街から視認されているだろう。シンド、わかっているかい?」

「わかってるよ! 神器は秘匿するもの、だろ?」

「わかっているなら実行しなさい」

「けっ……」

「全く……まさかフル稼働させるとは思わなかったよ。戦いになると周りが見えなくなるのは君の悪い癖だ」

「なら最初から言えよな。オーバードライブは無しってよぉ……」

「暗黙の了解だろう、そんなものは。フィーロ君には先に説明すべきだったな、神器については。その辺は我々の配慮が足らなかった」

「いや、まあ、俺も悪いですし……」

 言ってみて、別に俺悪くないんじゃないかとか思った。とはいえ自分で認めてしまった以上覆すことは出来ない。

「ともあれ神器の力はわかってくれただろう。神器は、それ一つが兵器なんだよ」

「兵器……」

「魔術ではない。だが魔術と同等、あるいはそれ以上の力を持っている。現存する神器は少ないが、だが脅威だ。国が保有すればパワーバランスはあっという間に崩れ去るだろう」

「余計な刺激を与えないってことですか」

 言っていることは、わかる。だが疑問が残る。

「でもそれじゃあ、それはなんのためにあるんですか。まさかギギドを殺すためだけの奉仕団体じゃないでしょう?」

「敵を知れば、君は否応なしに我々に協力せざる得なくなるが、それでも聞きたいか?」

 リカルドは、質問に質問で返す。それはつまり覚悟がいるということだ。聞けば、後には引けない。巻き込まれることになる。現に巻き込まれた。ギギド。次も襲われるかもしれない。聞いておくべきか。

 それは出来ない。

 明らかに厄介事だ。個人的には関わりたくない。絶対やだ。危ないのがわかってて飛び込むほど愚かじゃない。それに、俺個人の問題じゃない。シェリカもいるのた。関わらせるべきじゃない。

 シェリカを一瞥すると、微笑んでいた。なんで笑ってるのか。不気味ですらある。火事場に興奮しているのか。違う気がする、

 フィーロが決めればいい。そんな風に言っているようだ。なんだそりゃ。笑えない。なんで笑ってられるのか。馬鹿姉。そんな顔されたら、答えはもう決まったようなもんだろ。

「やめときます。関わりたくないですし」

「そうか」

 リカルドはただ頷いた。シンドが唾を吐き捨てた。

「おーいおい。逃げんのかよぉー」

「悪いかよ。俺は平和主義なんでね。ドンパチはごめんだ。勝手にやってろ」

「けっ。んだよ、とんだ腰抜けじゃねーか」

「シンド。やめなさい」

 リカルドが窘めると、シンドは舌打ちをして黙った。良くも悪くもガキなんだろう。まあ、俺もガキだけど。

「君の事情はわかった。無理に引き込みはしないさ」

 シェリカを一瞥してリカルドは言う。フィーロの心中を察してのことだろう。無理を押し通すならフィーロは剣を抜く。なら、無用な戦闘は避けるだろう。

「どうも。こいつはどうするんです?」

 となれば次なる問題はこの喋る剣だ。

 性能は言わずもがな、あるに越したことはない。喋らなければいい剣だ。とはいえ鬱陶しいから、返せというなら返す。惜しいけど、他を探せばいい。あてはないけれど。

「ダンデライオンは君のものだ。我々にはどうすることもでかないさ」

「そう、ですか」

 とんだ肩透かしを食らった気分だ。別に返してもよかったんだけど。まあ、貰えるなら貰おう。喋ることはこの際仕方ない。諦める。

『では改めてよろしくお願いします、フィーロ殿』

「不本意ながらな……」

 全くの不本意だ。

 とはいえ、長い付き合いになりそうだ。俺はこつんと柄の部分を小突いた。

「よろしくだ」

 フィーロとダンデの会話が途切れたタイミングを見計らって、リカルドが口を開いた。

「さて、長話もなんだ。街まで送ろう。グランゼ、シンドはこのまま哨戒しつつ帰投。メイディーは私と共に」

「わかりました」

「了解」

「敵がいたらぶっ潰していいんだよな?」

「トルトゥリエには休息がいる。無用な戦闘は避けるように」

「ちえ……」

 不服面を隠そうともしないシンドに、リカルドは微笑を浮かべた。懐でかすぎんだろこの人。

「街までフィーロ君には、神器について話せることを話しておくとしよう」


◆◆†◆◆


「神器の構成については我々もまだまだ研究段階だから話すことは出来ないが、わかっていることはそれがほぼ永久的に活動出来るということだ」

 森の中を歩きつつ、フィーロはリカルドから神器の説明を受けていた。歩きにくい道なので、話に没頭すると躓いて転けそうだ。現に、シェリカは話しもしてないのに三度転けている。運動音痴ここに極まれり。敵との戦闘より多く擦り傷を作りそうな勢いだったので途中で背負うことにした。苦ではないので構わないけれど、運ばれる側の態度としてはこれは腹立つものがある。起きろ、馬鹿姉。耳元に届く安らかな寝息に嘆息せざるえない。

「神器はディヴィニクスと呼ばれる鉱物から成る。どうやって生成されたものか、これも不明なのだが、少なくとも普通の鉱物ではない。Dフォトンと呼ばれる物質……とでも言うべきか、これも何かがわかっていないのだがね、一種のエネルギーだと思ってくれればいい。ディヴィニクスはこれを内包する。いや、生成しているのだ」

「わかるようなわからないような……」

「使っていれば自ずとわかるさ。君が展開したセラフィスは、Dフォトンの結晶体だ。言わばDフォトン自体が本質であり、ディヴィニクスという鉱物はそれを内包するための殻でしかない。Dフォトンは流動する不定形のエネルギー体だ。無限に可能性を秘めている。セラフィスのように形を成すことも出来るし、それこそ光線のように放つことも出来る。スライムみたいなものだよ」

「途端にしょぼくなりましたね……」

「まあいいじゃないか。とにかく、それを武器としたのが神器だ。ここまではいいかい?」

「なんとか」

 木の根っこが段差になったいて、かくんと膝に負荷がかかる。背中でううんと唸る声がした。しかしながら起きなかった。

「そのDフォトンを武器に循環させ、変質させ、時に放出するための装置がDリアクターだ。もちろんダンデライオンにも備わっているし、私の神器にも備わっている。個体によって数は異なるがね」

「こいつが形状変化出来るのもそのお陰ですか」

「察しがいいね。とりわけダンデライオンは多くのDリアクターを持っている。第一から第七までの七つに、補助リアクターが五つの合計十二のリアクターがある」

「多いですね……」

「それだけ出力の調整が必要な神器なんだろう。コマンドは便利に見えるが、そもそも形状変化にもエネルギーが必要になる。無尽蔵ではないんだよ」

「え、でもさっきほぼ永久に活動するって……」

「ああ。それが面白いところでね、ディヴィニクスはまるで生き物だ。Dフォトンを使い切っても、回復させればまた蓄えられている。どうやって回復しているのかは未だに不明だがね」

「休息が必要……」

「これも個体差があるが、ダンデライオンなら最短半日である程度回復する。まあ、これも環境などに左右されるようだ。本当に生き物みたいだろう?」

「笑えないですね……」

 喋る剣。生き物ね。剣が生きているなんて、あまり想像したくない。いや、あるか。それこそ、神具、魔剣の数々は生きている。聖体の秘蹟(ユーカリスティア)など最たるものだろう。

「ともあれ、フィーロ君ならそれを正しく使いこなせるだろうと信じているよ。あとはあまり公にしないことを約束してくれれば特にこちらからの要求はない」

「そうですか」

 気味が悪いほどにあっさりしている。リカルドは優しげな笑みを浮かべているが、しかし信用ができない。むしろそんな笑みがあからさまに怪しいのだ。

 だが、反発する理由はない。向こうが干渉しないと言うのだ。無用な波風は立てるべきじゃないだろう。

 メイディーは瞳を伏せている。彼女の考えていることを窺い知ることは出来ない。話すべきことは話したのだろう。フィーロも質問することはこれ以上なく、ただ耳元のシェリカの寝息だけがこの場の沈黙を掻き立てる。えも言えない緊張に苛まれつつも、一行は森を抜け街に到着した。

「着いたな。我々はこのままグランゼたちと合流するから、ここまでになる」

「いえ。ありがとうございました」

「いいんだ。神器についてもう少し詳しく知りたければ連絡をくれ。この端末を渡しておく」

 リカルドから渡されたのは小型の機械だった。見たことのないもので、フィーロは手にとってまじまじと眺める。ボタンが下に三つ、左に三つ付いているだけの薄っぺらいものだった。どこの技術なのか検討もつかない。

「携帯電話というものでね。番号は登録してある。とはいえダンデライオンに聞けば神器については粗方はわかるだろうがね。それの使い方も彼が知っているよ。折を見て聞いてくれ」

「そうですか。ま、使わないことを願いますよ」

「そうだね」

 渡されたものが何であるかはともかくとして、これがどういう意味を持つのかぐらいはわかるつもりだ。

 あくまで、俺は監視されるのだろう。

 全く厄介なものを拾ったものだ。

 学園に戻ったらとりあえずイネス先生に文句を言わないとな。問いただしたって答えは返ってこないだろうが、文句の一つくらいは聞いてくれるだろう。多分。



◆Licald◆


 少し歩いたところで振り向く。姉を背負いながら戻っていく少年の背中を見つめる。もう小さい。すぐに見えなくなるだろう。

 メイディーは溜め息を漏らした。

「意地悪な人ね」

「そうだろうか」

「あの子は巻き込まれるわ。否応なしに」

「だが意思は尊重すべきだろう」

「それはエゴね」

「痛いな。君の言うことは」

「そもそもあの子たちはもう巻き込まれてるわ。それこそ生まれた時から。その血に縛られている。しかも神器まで手にしてしまった。もう逃げられない」

「弱い子じゃない」

「強さの問題じゃないでしょう。この先どうするの?」

「今の我々は決定打に欠ける。どうあっても後手に回るしかない。その上でもし彼の力が必要になるなら、説得するしかない」

 赤月の民。あの空に浮かぶ異界の門。仮初の月だ。その末裔はもう少年を残して他にはいない。先代は死んだ。だが受け継がれたのだ。あれは稀有な力だ。

 どんな場所だったのか。精霊を殺すなど。想像もできない。だからこそ彼らは異端だった。殺されたのだ。かつての魔王たちによって。

 だがその力を見出したのも魔王。因果なものだ。この世界はどの時代も魔王によって成り立っている。魔王など符号でしかない。それでも、絶対者としての言わば証明なのだ。

 逆刃王クトゥルフ。否、かつて機導王と呼ばれた力が我々に力を与える。やはりここでも魔王が付いて回る。

 彼の王は狂王だった。神器はその名残だ。負の遺産と言っても過言ではない。しかし私には関係がない。我々の目的が彼の大義と同じくしていても、それは結局後付けに過ぎない。誰も彼もが個々の思いで戦う。ノーデンスはそういった組織だ。だからあの少年にも無理強いはしない。

「言い訳だな……」

「え?」

「いや……メイディーの言う通りだ。私もまた狂っている。人のことをとやかく言える立場ではないな」

 自らを嘲る笑いにももう何も感じないほどに、私は狂っているのだ。携帯を与えた意義を少年は察しているだろう。あべこべだ。やっていることも、言っていることも。

 利用しようとしているのだ。少年には伝えるべきだったかもしれない。選択の自由など与えたところで、少年はもう我々の側にいる。

 一つ違うのは、確固たる目的がないことくらいか。

 あるいはそれがあれば私の言葉などなくとも少年は立ち上がっただろう。目的、あの双子の姉か。少年にとって特別なのだろう。

 もともとあの少女も特別だ。精霊王の魂を受け継いだ少女。どういう因果か、対局とも言える関係が交わっているのだ。

 あの二人は異常なのだ。

 だが、こんなにも恐ろしいことを考えている私もまたやはり異常だ。あの人の最愛の子だというのに。

 胸元に手が触れた。

「貴方が狂人なら、わたしも狂人になるわ。共に歩むと決めたあの日から、わたしの思いは一つよ」

 メイディーは微笑む。ああ、この女もまた狂っているのだろう。健気で、それでいて気高い。私に何を求めるのか。何も求めていないのかもしれない。共にあるだけで。傷の舐め合いのようなものだ。

「それに、貴方はもう立ち止まらないのでしょう?」

「ああ……そうだな」

「なら前を向きましょう。貴方は貴方の思う通りにすればいい。わたしはただ貴方に従うわ」

 思う通りに。

 たとえ何を犠牲にしても。

 奴は絶対にこの手で殺すのだ。

 アルフレッド・クロムウェル。

 現代に生きる、古代の魔王。

 いたずらに数多の命を弄んだその罪、そして何より、最愛の人を私から奪った罪は、死をもって償わさてやる。



◆Unknown◆


 玉座に座る男に、女が近付いた。

「m908に放っていたギギドの反応が消滅しました」

「わかっている。あれは我のものだ」

「出過ぎた真似をいたしました……」

「よい」

 そう言い、頬を撫でてやる。女は赤らめて、目を細めた。扱い易い女だ。健気とでも言うべきか。

 後ろに立つ男は我に射ぬかんばかりの視線を向ける。だがすぐに目を伏せた。これもまた滑稽だ。

 しかしまたあの哀れな狂王の遺産か。先の大戦で粗方破壊したのだが、それでも根絶やしには出来なかった。まるで羽虫のようだ。反吐が出る。

 神器などと仰々しい名をつけているが、あんなものは所詮紛い物。滑稽と錯誤の産物だ。我が生み出したる宝剣に比べれば、芥屑に等しい。

 そんな瑣末なことよりも、あの場に赤月の末裔と精霊王の末裔が居合わせていたことの方が気になる。赤月の末裔はどうやら狂王の遺産を手にしたようだ。なるほどそういえば以前もそんなことがあったか。瑣末すぎて記憶に薄いが。

 もともとギギドは探索のための道具に過ぎないが、存外役に立っている。改良を施したのは間違いではなかったようだ。

 贄の庭園の扉を開く手立ては完了している。障害になり得るものはなく、掌握したといっていい。ほぼ計画通りにことは進んでいる。が、やはり大羅天への道筋の探索は必要だ。

 そもそも贄の獄域(サクリファイスプレーン)と世界の繋がりは断続的なものだ。それは大羅天も同様だが、無理にこじ開ければ神々の配置した防衛機構が働く。あの堕ちた畜生が亡き今、彼の地を侵略するのは容易だが、立ち塞がるのは死神だ。そして背徳の化身、フォリア。贄の獄域の管理者は元々あの女神だ。堕ちた魔王は代役をさせられたに過ぎない。女王という名の、ただの慰み者だ。

 神とやらも名ばかりの矮小なものだ、自らの身を差し出すのは怖いらしい。我が身が可愛いいのだろう。それが神などと嗤わせる。

 だがどれだけ愚物であろうとも、奴らは己の責務だけは果たす。こじ開ければ無理やり押し返そうとする。フォリアは強力無比だ。我が力をもってしても退けるのは容易ではない。手の内を知っていてもだ。ならばいたずらに力を浪費するのは愚かだ。

 ならば選択は二つ。正規の取り引きをもって扉を開くか、神々に気付かれず扉を開くかだ。

 正規の取り引きとは死だ。あるいは堕落。女王亡き今、神々は贄の獄域の支配者を求めている。取り入るのはそう難しいことではない。が、話にならない。ならばもとより答えは後者しかない。大羅天の最奥に異物が紛れ込めば、防衛機構はそちらに目が行く。神々にとって、そちらが最重要の場所だからだ。

 神という名の言わばシステム。構造化された世界はもはや哀れなほどに御しやすい。奴らは神であるがゆえにイレギュラーに弱いのだ。

 ギギドは尖兵だ。各所に女王(クイーン)を放ち、その勢力を拡大すると同時に大羅天の痕跡を探る。あれは贄の庭園よりも断片的にしかこの世界と接続しない。大羅天は古龍という巨大な地盤に打ち立てられた移動要塞だ。定められた周期でしか現れず、それ故に何度も煮え湯を飲まされてきた。古龍は臆病で、こちらの接近に対して過剰に反応する。いや、あれは単に生あるものに反応するのだろう。あの要塞はむしろ、最奥から魂を逃さないための牢獄としての役割が大きい。

 神域の時間感覚は我々のそれとは全く異なる。時間などという概念があるかどうかさえ疑わしい。そして古龍の気質が大羅天の位置特定をことごとくかわしてきた。神ごときが随分とこけにしてくれる。だがそれもこの女がいれば問題ない。まあ、余計な染みがあるのだが、瑣末なことだ。

「ふ……撒いた種はすべて実りつつある」

「喜ばしく思います、我が君」

 後は農夫の真似事のように、収穫していくだけだ。

 手始めはそうだな。

「あれらを野に放って三百余年か。そろそろ摘んでもよい頃合いだろう」

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