第三話
「はぁ……」
委員長があかりを説得したあの日から、1年が経過した。
「あれあれー?委員長頭抱えてどしたのさ」
「いやさ……君……」
「?」
「もうちょっと考えて行動しようよ……」
委員長とあかりは今、インクまみれで空き教室の真ん中に立っている。
「うっわぁ……大丈夫?ふたりとも」
彼女は無道 芽依花。2年3組の副委員。
「大丈夫!ちょっと先生に怒られるかもだけど、デザインは好きだから!」
「あはは、言われてみれば確かにカッコいいね。流石穂慈綴さん、着眼点が違うね」
「そんなこと言う暇あったらここ綺麗にしないと!」
教室はシートをひいているとはいえ壁や机にはシートはひいけない。つまりは……
「いやぁ、一気に塗ろうとしてバケツごと投げるもんじゃなかったね」
「ホントだよ全く……さ、ふたりとも。片付けよう」
「「はーい」」
先程も述べたが、あれから一年。
あかりをいじめていた生徒12名は停学の後、2名が不登校、3名が自主退学、6名が転校、そして普通に打ち解けた者が1名という結果になった。
なお、担任はいじめのもみ消し以外にもパワハラなどの余罪が見つかり、この学校からはいなくなった。
「……おいお前らー。確かに俺は文化祭用の看板を塗れとは言ったが、何故こんなことになるんただー?」
「「「うげっ、先生!」」」
《《まるでずっと一緒に片付けをしていたかのように》》普通にそこにいた一人称俺の女性は、あかりたちの担任である、松菜食喜先生。
「まぁちゃんと片付けてるし良いけどさー、物は大事にしろよー?じゃ、私はこれからタバ……ちょっと用事があるからじゃあねー」
彼女はそう言い終わった瞬間に《《まるでずっとそこに居なかったかのように》》普通に消えていた。
(煙草かな……?)
(煙草だな……)
(煙草だね……)
「さて、松菜先生も行ったし続きをしよう」
「それじゃあ……」
芽依花の掛け声に合わせ、三人は腕を思いっきり上げ、声も揃えてこういう。
「「「えいえいおー!」」」
ちなみにこの後なかなか取れなかったり何故か余計に汚れたりして最終下校時刻ギリギリになったとか。
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登場人物紹介
名前 松菜 食喜
所属 2年3組担任
血液型 O
備考 気づいたらそこにいて、気づいたらそこにいない。通称『全く這い寄らない空気』