ぶひぶひぶひぶひぶひぶひぶひぶひっ
まぁ、と言う感じで過ごしたんですよね。6歳からの3年間で、私は9歳になりました。
イーグルたんは、先日誕生日がきて7歳になったところです。
9歳になった私は、初めて王宮の子供舞踏会なるものに招かれることになりました。
ちなみに、15歳16歳17歳が漫画の舞台となる貴族たちが通う学校。
社交界デビューも15歳。で、その15歳になる前に子供達を交流させたり、プレ社交界としてマナーを実践したり、色々な理由で9歳から子供舞踏会が開かれるんですよね。参加するのは、9歳から14歳の貴族の子息令嬢。
一応家庭教師なりなんなりついて、9歳になるまでにある程度のマナー教育は受けるものの……。
前世で言えば、9歳など小学校低学年のガキです。
走っちゃ駄目なのに、走り回る男の子たち。
大声を出しちゃだめなのに、大声で騒ぐ女の子たち。
うん。ここは小学校か?
13歳14歳の子たちなんて……。
すでに色目を使う女の子や、退屈だからとゲームを始める男の子……いや、その年齢でも男の子のが精神年齢低いですわ。さすが中学生。
そんな子供達を横目に、私は大人しく会場の隅に用意された食事をつまんでいた。
ぶっちゃけ、自宅の料理の方が数段美味しいので、つまむのは主に菓子類。甘いは正義。甘けりゃそこそこ美味しい。
てなわけで、テーブルの横に立ってクッキーを口に運んでいたときのことです。
「おい、豚!」
唐突に声が聞こえてきた。
うん。豚肉料理なんてあったかな。いや、いろんな料理が並んでるのは知ってるけど、不味いだろうなって思ってあんまり真剣に見てなかったんだろうな。このクッキーはなかなかの味。もぐもぐ。
「おい、無視するな!この俺様が話しかけてやってんだぞ!」
……と、肩をつかまれた。
はぁ?
「申し訳ございません、私豚肉料理には興味がなく、話しかけられているとは気が付きませんでしたわ」
ったく。誰だよ。
口にいれたクッキーをごくんとよく噛まずに飲み込み、にこやかに笑って失敬な人間に対応する。
仕方ないわ。ガキの集まりだもんな。私は大人。大人の私が我慢しないと。
振り返ってみれば、金髪に碧眼の10歳前後のぽっちゃりした生意気そうなガキがいた。
顔の作りは悪くない。痩せれば美少年なんだろな。
「気が付かないわけないだろう!豚なんてお前以外いないだろう!」
何をおっしゃる。私の目の前のお前こそ豚じゃねぇか。ちょっとまだ肉付けは足りないけれども。
「申し訳ございませんぶひっ」
「は?馬鹿にしているのか?」
「ぶひぶひ」
「おいっ!」
「私はあなたから見て豚のようですので、豚らしく対応しませんと失礼かと思いましてぶひ」
ぽっちゃり君は、ふっと目を細めて私を見下した。
「謝罪は受け入れよう」
は?
私、何か謝罪しました?めっちゃ馬鹿にしたつもりですけど?
「うむたしかに、俺が豚と言ったことで、真に豚になり切ろうとするのは謝罪として誠意ある対応であろう。ぶひぶひというのは申し訳ございませんという意味なのだろう?」
……大丈夫か?誰かしらないけど、このぽっちゃり君。
「何の御用でしたでしょうか?」
面倒くさい臭いしかしないので、さっさと用件を済ませて逃げよう。
「父上に、お前と結婚すればヒーダ牛やコーベ牛が好きなだけ食べられると聞いた」
ええ、まぁそうですわねぇ。今や飼育数も安定してきましたし。牛侍丁の腕も上がってきましたから。ヒーダ牛やコーベ牛と名付けるに値するランクの牛も増えてきましたよ。
まぁ、流通させるにはまだ数が足りないため、王族でも月に何度かしか口に入れられないんですけどね。予約がいっぱいで。高いのに貴族たちは取り合いですよ。
うちはなんせ生産側なので。順に出荷するときに、確実に自分たち用の肉を確保できるので、まぁほんとう、好きなだけ食べられますよ。ふへへ。
「だから、お前と婚約してやる。ありがたく思え」
は?
「そうか、嬉しいか。豚の分際でこの俺様と婚約ができるんだもんな。ぶひぶひ鳴くがいい!」
肉が食べたいから、私と婚約?
「申し訳ございませんが、子供たちだけで決められることではないと存じます。失礼いたしますっ」
すぐさまその場を立ち去る。
「待て!」
ぐっと腕をつかまれた。
レディに向かって豚と呼ぶような方と誰が結婚するもんですか!ぜったいいやだわ!肉もお前の家には売ってやるもんか。ばーかばーか!
と、心の中で悪態をついて捕まれた腕を振りほどいて会場を後にする。