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ぶひぶひぶひぶひっ

「きっとそれは、素晴らしく愛らしい場面に違いない……きっと、その様子を思い出すだけで、今日は1日幸せな気持ちで働けるはず……!ロッテン、今日の朝食メニューはソースたっぷりの」

 あ。お父様ってば、天使な私が、超天使な義弟の口元を拭いてあげる様子を想像して悶えていたのね。

 ……なんとなく、分かっちゃったんだけど、私の性格はお母様じゃなくて、お父様に似たのね……。了解。

「ご主人様、朝食はすでに準備されておりますのでメニューの変更は致しかねます」

 イケオジお父様の顔が少しだけしょんぼりとしたのを私は見のがさない。

「それは夕飯の時にでもお楽しみくださり、良い夢を見てください」

 くっ、それもまたいい!幸せな気持ちで1日過ごすのもいいけど、夢の中で繰り返し堪能するのもまたよき。

 って、お父様思ったでしょう。そうかと小さく頷いて大人しくなった。

 ……うん、ロッテンさんお父様の暴走を止めるプロね。プロだわ。

 朝食としてテーブルに並んだのは、丸パンと、野菜たっぷりのスープとフルーツジュースだった。

 玉子焼きとかはないんですかね?ベーコンやハムとか。

 うちって、国内有数の……っていうか、ぶっちゃけ王室より金持ちな国一番のお金持公爵家じゃなかったです?

 タンパク質足りませんよ!

 食事前のお祈りみたいなのしてから、早速いただきまーす。

 まずはスープを口に運ぶ。

「まっず!」

 思わず声が出た。

「おお、野菜嫌いのフローレンがスープを口にしたぞ、もしかしてイーグルにいいところを見せようとしたのか?ふふふ、すっかりお姉さんだなぁ」

 お父様がニコニコしている。

「そうか、そうか、まずかったか。うんうん。だが、今日は一口食べられたんだ、何かご褒美を考えないとな」

 ……は?

 6歳で野菜嫌いで1口食べたらがんばったご褒美とか……。

 甘やかしすぎでは?と思ったものの、イーグルたんが私の頭をなでるお父様の姿を見てうらやましそうな顔をしている。

「イーグル、そうよ、一口食べた私は偉いの。イーグルも一口食べられる?もし、2口食べられたら、お父様からだけではなく、私からもご褒美をあげるわ!」

 よし。いっぱい食べさせる作戦をするチャンスだ!

 イーグルたんが、小さなおててでスプーンを持つと、スープを救ってぷるんぷるんの桃色のお口に運んだ。

 くっ。可愛いですな!可愛いですな!

 イーグルたんが上手にスープを飲んだ。それから、間髪入れずに二口目を。

「おお!イーグルは2口も食べられるのか!すごいぞ!すごい!」

 お父様がほめちぎる。

 もやっと。もやっとして、思わずイーグルたんを褒める前に、スプーンを手に取ってまっずいスープをもう一度口に運んだ。

「おおお!フローレンもまさかの2口目……」

 お父様が感動している。

 おっと、つい。お父様の愛情が欲しくてイーグルたんに張り合うようにスープを食べてしまったわ。

 おえー。まずいっ!なんでこう、まずいのよぉぉぉぉ!!!!

 見た目だけは美味しそうなのよ。綺麗にカットされた人参の色鮮やかなこと。インゲンも青々としていて美しい。そして玉葱は透き通った透明感のある白というか、透明?飴色にしちゃうとオニオンスープだけれど、これは野菜スープ。

 ……私が日本で作ってたスープなんて野菜は型崩れしてたし、なんか適当に切った野菜を適当に入れて固形コンソメで適当に味付けてただけだから、見た目も味付けも超適当だった。でも、今目の前の美しいスープに比べたら、何倍も美味しかったよ……。

 なに、このまずいスープ。

 漫画でヒロインがメシマズをどうにかするみたいなの無かったはずだけど!

 っていうか、昨日までの私は、野菜が嫌いだからスープを飲まなかったんじゃなくて、単にまずいからじゃないの?

 ……まずい。人参は、にんじーんっていう味が濃い。

 よく野菜の味を楽しむための料理みたいなレシピあるけど、あれは美味しい野菜ならばいいよね!って話。

 良くも悪くも現代の野菜はかなり品種改良されて美味しくて食べやすい物になっているわけで。自生してる原種に近い野菜を食べてみ?エグイは苦いは酸っぱいわ種が多いわ実が小さいわ、とんでもないものばっかりよ?

 そうねぇ、例えばピーマンだって、昔はもっと食べにくいものだったのに、今はフルーツピーマンなんて出てきたってそういうことよ!トマトだって青臭かったのがフルーツトマトなんて言われるまで……。

 まぁとにかく野菜本来の味を楽しむ系は無理。しかも子供の味覚って大人よりも苦みとかえぐみを強く感じるんだよ!

 なんで、こう、野菜の味を誤魔化しまくったスープとかじゃないのか!

「こんなまずいスープとても飲めませんわ!」

 うきーとばかりに声を上げた。

 シーンと静まる室内。

 ……あわわ、しまった。作ってくれる人への感謝も忘れ、食べられることへの感謝も忘れ……。

 なんたる我儘な発言を!

 ……あ、れ?

 そうだ、私、悪役令嬢じゃない?我儘いっぱい育つ、自分の思い通りにできないことはないっていう悪役令嬢フローレンよね?

 むしろ、我儘を言うのは、悪役令嬢の大切な役割なのでは?


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