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【短編】ぶたぶたこぶたの物語 ~悪役令嬢は断罪されたいので我儘に生きることにした~【書籍化】  作者: 富士とまと


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ぶひぶひぶひぶひぶひぶひぶひぶひぶひぶひぶひぶひぶひぶひっ

 いや、中身もちゃんとしてたよな。漫画では。素敵な王子様だったよね。決して豚と言ったり、人のカニ食べたりしない。

「仲良く食事をするのも」

 いや、これは仕方なくだよ!

「追いかけっこして遊ぶのも」

 遊んでないわ!

 っていうか、お前は逃げる女の子を追いかけまわすことを遊びだと思うなら、改めた方がいいぞ!っていうか、改めろ!

 いいか、いくら皇太子だからって、許されないお遊びだぞ!

「こんなに、美味しくて、楽しく、幸せな気持ちになったのは初めてなんだ」

 ……そう、ですか。

 ちょっぴりしんみりしちゃうわ。王宮での食事風景は味気ないものなのかな。広いテーブルでマナーを気にしながらの毒見を終えた冷めた食事……。

 って、しんみりしちゃったけど、けども、この台詞、漫画の中でヒロインに言ってたような……?

 言ってたよね?ってことは、これ、口癖じゃんっ!何度も同じこと言うの、単に口癖じゃんっ!

 あっぶねぇ。その口でおんなじことを何年か後にヒロインに……あなたの子豚ちゃんに言う日がくるんですよ!

「また、来る」

 ぽっちゃり君は、最後にそう言い残して、迎えに来た護衛と共に帰っていった。

 ……また、来るだと。

 来るなよ。いいな。来るなよ。護衛達も、公爵令嬢たちの皇太子に対する態度はあまりにも不敬だったとかちゃんと報告しろよ?

 しかも、皇太子に対してバケモノのような恐ろしいものを食べさせていたので、ぜったい近づけてはなりませぬと、ちゃんと報告しろよ。

 あ、こら、護衛!こちらにカニを届けに来ようとしている漁師さんからカニを受け取らないの!

 ちょ、それ、あたしの!あたしの!

 持って帰ってどうする気だ!

「お姉様……」

 イーグルたんが私の顔を見た。

「僕は、毎日お姉様と美味しいご飯を食べられて楽しくて幸せです」

 にこにこと笑っている。

 可愛い~!!

 思わずぎゅっと抱きしめる。食事中にぎゅってするのは控えるけど、それ以外は容赦しません!

 だって、私は悪役令嬢。我儘が許されちゃう、いや、我儘にすることが私の使命なのだもの!

「私もよ!私も、イーグルと一緒で幸せ!」

 ぎゅっぎゅギューッと抱きしめると、初めて会った時のあの細い体ではなく、肉肉っとした柔らかい体が腕の中にある。

 ……これが数年後には私よりも身長が高くなって、しっかり鍛え上げられた筋肉質な体になるのを私は知ってる。

 んじゃなくて、漫画ではそんな感じだったから、そういう風にダイエットしてちょこっと体を鍛えるようにしないと。学園で他の人に馬鹿にされないようにしないと!

 そのころになると、私は疎まれてイーグルたんをぎゅっと抱きしめるなんてさせてもらえないかもしれないから、今のうちにいっぱい抱きしめておくんだ。

「婚約の打診をしてきた皇太子というのはさっきの……?」

 腕の中のイーグルたんが不快なことを口にする。

 そうだ、思い出した。肉が食べたいから婚約してやるとか言ったんだ。

 はっ!今度はカニが食べたいから婚約してやるとか言い出すんじゃ……?

「僕はお姉様とずっと一緒にいたい……だから、結婚しないで」

 きゃぁーん。なんて可愛いことを言うのかしら!

「ええ、大丈夫よ。私、結婚しないからね?」

 独身幽閉生活が私の人生に敷かれたレールの行き先だから。

「僕以外と……」

 ん?何?最後の一言よく聞き取れなかったわ。

 まぁ、いっか。イーグルたんと、明日は何食べようかな。


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