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【短編】ぶたぶたこぶたの物語 ~悪役令嬢は断罪されたいので我儘に生きることにした~【書籍化】  作者: 富士とまと


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ぶひぶひぶひぶひぶひぶひぶひぶひぶひぶひぶひぶひぶひっ

「あっ、ああ。ありがとう」

 ぽっちゃり君がちょっと戸惑った顔でカニを受け取った。

 何戸惑ってんの?まさか、私がお前に食べさせるカニなんかねぇよ。ばーかばーかって言うとでも思ったの?

 っていうか、むしろ、お礼を言われるとは思ってなくて、こっちがびっくりだわ。

「さぁ、じゃぁ、み、みんなで、カニ、食べましょうね!」

 と、仲良く残りのカニは三等分して食べた。

 食べ終わると、ぽっちゃり君が立ち上がる。

「ご馳走になった」

 はいはい。

 ご馳走する気はこれっぽちもありませんでしたけどね。

「急にいらっしゃいましたので何の準備もできずに申し訳ありませんでしたわ」

 訳*連絡も無しに突然来るんじゃねぇ。

「いや。十分にもてなしてもらったよ」

 満足そうな顔をしてほほ笑むぽっちゃり君。

「殿下のお気遣いに感謝申し上げます」

 訳*もてなせてないけど、もてなしてもらったって臣下を責めない定番のセリフだよな。もてなせてないんだよ。どこに皇太子に浜辺でカニ焼いてもてなす貴族がいるんだよ!

「今度は、王都のお屋敷でもう少しましなおもてなしが出来ればと思っております」

 訳*つまり、ここに来るな!王都の屋敷に連絡してから来い!まぁ、お父様が拒否ったら知らんけど。お父様には会いたくないですって私は言うけど。

「いいや……これは俺の本心だ……。十分だ……むしろ、どんなもてなしより素晴らしかった」

 はにかんだ笑みを見せるぽっちゃり君。

 ははーん。カニか。

 カニが美味かったと言いたいんだな。まぁ。そうだよねぇ。初めて食べたカニのうまさは衝撃的だったにちがいない。

 うん、うん。分かるよ。分かる。美味しいもんなぁ。いろんな美味しい物を食べられる日本人がとりこになる物なんだから、当たり前だよ。

「分かりました。では月に一度、カニを王宮にお届けするよう手配いたしましょう」

 お前に食べさせるかにはねぇ!って言いたいところだけれど、こうやって押しかけられるよりはマシだ。

 交通網が整っていないんだけれど、馬車で1日。取れてから食卓に上るまで2日程度ならば大丈夫だろう。

 ボイルして運べば問題ないはず。

 いや、それよりも、生け簀を作って生きたまま送る方がいいか。

 ん?そういやぁ、カニって、生け簀なんてなくたって、生きたまま流通させられたんじゃなかろうか?なんか手足ぎゅっと縛られて生きたまま店頭に並んでるカニとか見た気がする。そっか!

 カニって、王都でも食べられるんだ!ここからある程度の距離のある場所でも、腐らせずに運べるじゃんっ!

 カニは養殖は難しいっていう話しだけど、捕まえたカニを囲いに入れておくのはできるよね?それを必要な時に必要に応じて生きたまま出荷してもらう。

 お、おおお!

 海沿いの別荘から王都や領地のお屋敷に帰っても……幽閉されてもカニが食べられる未来が見えてきたぁーーーっ!

「いや……送らなくていい」

 ん?

 カニがいらないだとう?!

 どういうことだ。はっ!そうか。いくら美味しくても、バケモノ扱いだもんな。カニ。そうか。こんなもの食べらさせられないとか王宮で色々問題になるかもなぁ。か、わ、い、そうに!

 ぷーくくく。

「また、俺が……私が食べにくるよ」

 ぶひ?

 ……。

「月に一度、食べに来るよ」

 ぶひぶひ?

 私、豚なので人間の言葉分からない。

 どゆこと?

 私、来るなって言いましたよね。まさか、遠回しに言いすぎて伝わってない?

「で、殿下っ!そうはおっしゃいましても、海の幸というものは、天候に左右されいつでも手にはいるとは限りません。突然いらっしゃっても、ご用意できるか分かりませんので」

 訳*来るな!来るんじゃねぇ!ふざけてんじゃねぇぞ!皇太子だからって我儘が通じると思うな!むきぃー!!

「構わないよ。カニは確かに美味しかったけれど……カニが無くてもいい」

 え?

 まさか、ウニを今から堪能しようとしてるのバレてる?

 それともタコでアヒージョもいいわねとか思ってるのもバレてる?

 アワビもサザエもイセエビも、なんかこの海色々ありそうな予感はしてる。

「初めてなんだ……」

 いや、そりゃ初めてでしょうよ。色々知識があるはずの料理長すら知らないばかりか、地元の漁師さんも魚以外は食べたことないし、食べようとも思わないとか言うくらいだから。

 なんていうか、ヘタに魚が豊富に取れて美味しいから、わざわざ得体のしれない物を食べるほど飢えないというか……。なんたる体たらくな人たちなのだろう!

 毒のあるフグや、とても食べられる味じゃない渋柿や、はたまたどんだけの工程を経ないと食べられないコンニャクイモ、何でも食べようとして食べられる方法を見出してきた日本人からすれば、見た目がちょっとなだけなんて本当に微々たる問題なのに!!!

 見た目が悪魔?知るか!見た目が馬糞?知るか!

「こうして……気を遣わずに話をするのも……」

 はっ。気を使っていつも話をしているだと?

 気を使ったうえで、豚って呼んでんのか?

 はっ!もしや、お前は豚好き?!

 子豚のイーグルたんをかわいいって言っていたし……それに、未来で選ぶピンクのふわふわ髪も、ピンクって、豚さんの色だ。

 それに、小動物系って、ミニブタだって、小動物に含めようと思えば……。身長が低くて丸顔系でピンクの髪……。

 こ、皇太子、お前……豚好き?

 ってことは、今の私、皇太子のドストライク?

 そうか、そもそも、ぽっちゃり皇太子って時点でおかしいんだよ。中身はさておき見た目だけはっていう漫画の内容から逸脱しちゃってる。


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