表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【短編】ぶたぶたこぶたの物語 ~悪役令嬢は断罪されたいので我儘に生きることにした~【書籍化】  作者: 富士とまと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/15

ぶひぶひぶひぶひぶひぶひぶひぶひぶひぶひっ

 海沿いの別荘には理由がある。ダイエットするなら、肉より魚!流通網が整っていないこの世界で魚を堪能するには、自分が魚の方に移動するのが一番。

 肉断ちからの、おさかなダイエットですわ!

 残念ながらお父様は王都で仕事があるので一緒に行けませんが……。

 でも、だいじょーぶ!

「ああ、それから、この屋敷の料理人は連れて行きますので、しばらくお父様は外食で御願いします」

 外食イコール、あんまりおいしくない食事で食欲減退、これでお父様のダイエットは完璧なはず。

 スパルタですが、仕方がありません。

「え、え、えええええ?!フローレン、ど、どういうことだ?」

 てなわけで、海沿いの別荘生活の始まりです。

「お、お嬢様、本気でございますか?」

「文句があるのかしら?私が欲しいといっているのよ?さっさとカニを捕まえてきなさい!」

 カニ、カニ、カニ。

 やっぱり、公爵家の財力を振りかざし、悪役令嬢としてめいっぱい我儘に過ごすならば、高級食材からいただかなくては

 ダイエットとはいえ、みじめな食生活なんてまっぴらごめんよ!

「お、お嬢様……こ、これ、痛てて……カニです」

 うわー!すごい!めっちゃデカいカニだあ!

「今すぐ食べるわよ!」

「た、た、食べる?え?食べるとおっしゃいましたか?おやめください!」

 料理人が真っ青な顔をしている。

 まさか、カニを食べる文化が無いの?

 どゆこと?って、どうでもいいわ!

 カニ、新鮮なカニ、カニぃ!

「さっさと言う通りにしなさい!」

 浜辺でカニパーティー開催よ!

 ほーっほっほっほ!

 泣きながら料理長がカニの足を落とし、甲羅をむいて、お湯を沸かし、カニしゃぶの準備万端となりました。

「はい、しゃぶしゃぶ、ぱっくん」

 うわーっ。

「あっまぁーい!おいしぃー!いや、ナニコレ、なーにーこーれー!」

 最高なんだけど!

 カニ食べ放題とかよくテレビで見るけど、なんかちまちまほじってちっちゃなカニの足を必死に食べてる映像、あれすらうらやましいと思っていた前世の私よさようなら。20センチ以上ある大きなカニの足の身を、他の人にむいてもらって、それを私はしゃぶしゃぶして口に入れるだけ。

 ああああ、なんて、贅沢なんでしょう!

「しあわせ」

「お姉様……甘いのですか?」

 イーグル君が半信半疑の顔をしている。

「僕もいただいていいですか?」

「ええもちろんよ!」

 イーグルたんの言葉に、周りの人たちがさらに青い顔をして、口をぱくぱくとしている。

「おぼっちゃままで……」

 それに引き換えイーグルたんってば、食べ物に対して何の偏見もないのよね。

 私が食べていれば疑いもしない。

 うう、これって、もしかして、イーグルたんってば、私を信用しきっているってことよね?

 イーグルたんの信用は裏切れないわ!

「ちょっと、あなたたち、今のうちにこういうとげとげっとしたバフンみたいに見えないこともないやつとってきなさい!」

 次はウニ、ウニいくぜ!

「はぁ?お嬢様、さすがにそれは……」

 もう。ぐだぐだうるさい。

 すくっと立ち上がり、両手を腰にあてて、顎を上にむける。

「この私に逆らうおつもり?言われた通り取ってくればいいのよっ!」

 悪役令嬢も年々板についてきたわ。

「さっさとお行きなさいっ!」

 びしっと海をさす指が真っすぐ伸びて美しいこと!って、もうすこし細いほうが見た目がいいわね。

 ちょっとやっぱり、ぽってりした指ではいまいち絵にならないわ。

 見てらっしゃい。海鮮生活で、あっという間に痩せてみせるんだから!

「さぁ、イーグル食べましょう。こうして殻をむいてないところを持って、お湯に殻をむいた方をくぐらせるのよ」

 しゃぶしゃぶっと。

「しゃぶしゃぶする時間は好みでいいですが、新鮮なカニです。刺身でも食べられるくらいのものですから、あまり長時間でなくても大丈夫ですよ」

 それっと。ぱくっと。あんまぁーい!くぅっ。これぞ、カニ!日本で食べたら一杯1万はするわよね。ああ、なんたる贅沢。

 イーグルたんが迷うことなくパクンとカニの足をしゃぶしゃぶして食べた。

 あら、まだ7歳のイーグルたんには少し大き過ぎたかしらね。

 めいっぱい大きなお口を開けて必死にもむもむする姿のなんて愛らしいこと!

 ああもう、ダイエットなんていいから、好きなだけいっぱいお食べ!と、思わず甘やかしてしまいそうだわ!

 ぱぁーっと、カニを食べたイーグルたんの表情が光り輝く。

 ああ、ちょっと子豚ちゃんだけど、やっぱり天使に違いない。そう、超天使ではなく、今は子豚天使。くっ。なんたる、なんたる愛らしさ!

「おじょうさま、言われたものを作ってまいりました」

 料理人が別荘から浜辺まで運んでくれた。

 お盆の上に載っているのは、まずは酢。

 蟹に酢は定番よの。

 それからピーナッツバターと酢と砂糖をまぜたもの。味噌の存在しない世界だから、見た目だけでも酢味噌。そしてバターはドレッシングにも使うので酢と混ぜるとサッパリする。それに、ピーナッツって適量であればダイエットにいい食材なのですよ!ピーナッツバターをもりもりパンに塗るから太るんであって。適量なら問題ない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ