表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フェイク社会  作者: 8000Q
1/2

その1

いつもとは違う日常。いや、日常って、ほんとうはちょっとづつ違って当たり前ですね。そして大きな事件があっても日常は続きますし、大きな事件が続きすぎても日常は続きます。

家に帰ってきてこたつに入ろうとしたら、おっさんがこたつの中にいた。

「げっ」

 と驚いたら、先に入っていた父が、

「どうした?」

 という。父は何事もなくこたつに入っている。そしてこっちを見て何だかニヤニヤしている。これが誰なのか、何故ここに人が入っているのか聞こうと思ったが、やめた。どうせ父が何か企んでいる。それだけだ。黙ってこたつに入ることにする。足がどうしてもおっさんにあたるので、あぐらをかく。

 持ってきた数Aの問題集を広げる。すると、父は、

「お、数学の勉強か。珍しいな」

とニヤニヤしながら言う。俺は慌てて

「いや、何、たまにはね」

 肩まですっぽりとこたつ布団をかけた父は、ニコニコしながら

「そうか、中間テスト、すぐだもんな」

という。

 おい、父。どうしてそんな入り方をしているんだ。こたつ布団を肩まで上げておく必要はないだろ。隙間があって中が暖まらないし。もっと普通にやれよ普通に。

 俺は、ちょっとカマをかけてやろうと思って

「違うよ。中間テスト、もう終わったとこじゃないか。昨日も話したよね」

 といってみる。すると父は、非常に慌てて、

「そうだった、そうだった。いやいや、忘れてた」

 苦笑いを作り、おでこをペシペシ叩きながらそう言った。そのときこたつ布団が肩からハラッと落ちた。父の上半身がちらりと見えた。太っている。細身の父が、でっぷりと太っている。

(やっぱり)

 俺は確信した。フェイクだ。そもそも俺はもう大学生で、中間テストとかあるわけないだろ。これは、予備校のバイトの予習だっての。そんなことも知らないのか。

 父はさっとこたつ布団をかけ直すと、何事もなかったかのように座っている。黙って座っているのではない。待っている。次に何が起こるのかを楽しみにしながら待っている。しかし俺はその期待に応えることもなく、今日講義で教えなければならない確率の問題を黙々と解き、演習問題をどれにするか選んでいた。

 そこへトントントンと二階から妹が降りてきた。コタツのあるこっちの部屋をキョロっとみると、あれ?という顔をして、ニコニコして部屋に入ってきた。今年高一になったかわいい妹だ。まだ制服姿だ。妹の通う聖ハレルヤ女学院は、制服がかわいくて有名なのに、妹にはそれががたまらなく似合っている。

 妹は、チェックの膝上のスカートをちょいと抑えながら、ささっとコタツに入ろうとする。すると、足に何かあたったらしく、こたつ布団をチラリとめくった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ