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プロローグ
「止まれ…止まれぇ!!!」
深く抉られた右横腹の痛みや重度の疲労から体中が悲鳴をあげているが、俺は目の前で瀕死状態に陥っている青年の止血に必死だった。
「くそっ!」
何度も治癒回復をかけるが、深紅の血は溢れ出るばかりで一向に止もうとしない。ここでも己の無力さを知り唇を噛み締める。
──俺は"また”大切な人を失ってしまうのか…?
ふいにそんな考えが浮かんでしまったが、どうにか思考を絶つ。
そして──、
『お前は必ず俺が救う、だからもう少しだけ待ってろ』
そう言いかけたが、なぜか言葉に出せなかった。それは昔のことを思い出してしまったからだろうか。それとも…コイツはもう《ダメ》だ、と思ってしまったからなのか。