神竜になる!
「助けて……」
か細く綺麗な女の人の声がする……。
「滅べ!」
血でも吐いているような絞り出す低い男の声がする……。
何?
誰?
声をかけても返事はない。
「助けて」
「消えろ!」
真っ白な世界で、相対する声が繰り返される。
どこにいるんですか?
そう声をかけても同じ言葉が繰り返されるばかり。
「死にたくない」
「死んでしまえ」
救いを求めているのは女性。
滅びを求めているのは男性。
真っ白な世界で私は声の主を探す。
どちらに手を差し伸べればいい?
滅びと救済。
反比例する願い。
私は辺を見回すが何もない。
どこまでも続いているような白い世界。
戸惑っていると、金色に光る球体が目の前に浮いていた。
なに……?
「僕にはもう力がない」
女性でも男性でもない、少年のような声がそこからする。
力?
「僕の最後の力をあげる。だからそれを使って世界を救済するか、滅ぼすか君の好きにしていいよ」
え?
「君の1分を1年として僕に与えて?」
一年?
一分?
え?
どういうこと?
言われている意味が判らず戸惑ってしまう。
「君の10分を僕にほしい。僕の力が尽きるまで……。お願い。僕を助けて珠李……」
苦しそうで切なげな声。
珠李は私だ。
男の子は私に助けてと願っている。
私の時間を上げればいいの?
「君の10分はエルフィージュの10年。君はグランドドラゴンの神竜になって世界の行く末を決めるんだ。救うも滅ぼすも好きにしていい。エルフィージュはもう病んでいる。僕はもうボロボロで力もわずかだ……」
掠れた声は時々苦しそうに呼吸している。
「珠李……」
救いを求めた声が私の名を呼ぶ。
私は夢を見ているのだろうか?
今流行の創作。
昨日たまたま観たアニメもそんな感じだったはず……。
「夢を媒体にはしてるけれど、僕にとっては現実だよ」
どうして私?
「君の生まれ持った能力が必要なんだ」
生まれ持った力?
今まで生きてきてそんな力感じた事ないけど?
「自分の力だからこそわからない。何かを映すものがなければ自分の姿を見ることが不可能のように……。君の力は君にはわからないんだ」
私にはわからない私の力……。
それがあるから私は選ばれた?
「そう。選んだのは力だけじゃない。君は善人でもなければ悪人でもない。人の悪を見て怒りもするが自分の都合で逃げもする。人に対して優しいが時に冷酷にもなれる。天然でボケてるところもあるが意外と計算高いところもある。君を見ただけで人が惹きつけられるが人によってはひと目で嫌悪されることもある。君の中にあるたくさんの反する面の同居。それが僕の選んだ理由だよ」
なんか、ちょっとディスられているような気もするんだけど……。
つまり、私がそのグランドドラゴンになって世界の行く先を決めればいいの?
「うん……。10年の時間の中で君の目で見て決めてほしいんだ」
本当に私が決めていいのね?
「うん」
私の世界じゃ10分なんだよね?
「そうだよ。全ては君が寝ている間の出来事だ」
わかった。
エルフィージュだっけ?
その世界を見てくる。
「ああ、良かった。……じゃあ、その光に触れて」
そう言われて光に向かって恐る恐る手を伸ばす。
すると触れたわけでもないのに段々と光が大きくなり、私はあまりの眩しさに目を閉じた。
気づくと真っ暗で何も見えない所に私はいた。
手をのばすとすぐに硬い壁のようなものに手がぶつかる。
なんか狭い場所にいるみたい。
何だろうかと思って壁を触ると内側に曲湾していることがわかった。
表面は少しザラザラしてて、手を握って軽く叩いて見れば、ピシッと何かの音がして亀裂が入った。
その亀裂から光らしきものが差し込む。
私はその亀裂を思い切ってぐっと押してみれば、ピシピシと音とともにその亀裂が広がっていく。
とたん視界が揺れたのだ。
地震?かと慌てると、辺が一気に眩しくなって目を開けていられなくなった。
そうっと目を開けて、私の体が硬直する。
思考も停止し、呆然と目の前のモノをただ見つめることしかできない。
「キュ」
目の前のモノから発せられる音。
それはどこから見てもドラゴンだ。
赤い縦長の瞳孔の瞳。
前に小さな角が2本。
少し後ろに長く湾曲している角が2本。
背中にはコウモリの羽のようなしっかりとした骨格の大きな羽。
びっしりと青い鱗に覆われた高さ5メートルはありそうな大きな竜。
それが私の目の前にいて私を覗き込んでいた。
ドラゴンは私を見ただけで、横にある何かを咥える。
何をかと思えば、大きな半月の形をした大きな卵の殻を咥えていた。
殻?
殻がどうして……と思っていると、竜はその殻を私の前に置く。
『食べなさい』
頭の中に直に響くような女性の声が聞こえる。
食べる?
殻を?
殻に視線を落とすが、テレビで観たダチョウの殻の厚みの比じゃない目の前の殻は軽く1センチは厚みがある。
こんなものを食べろと言われても……と、視線をもっと下に落とすと、何か変なものが視界に入った。
なんだろうと、よく見れば。
大きなトカゲのような足が見える。
まだ何かいるのかとそこから動こうとすると、そのトカゲの足も動く。
え?
何?
なんで一緒に動くの?
と、混乱したのは一瞬で、すぐにそのトカゲの足が自分の足なんだと理解する。
あ、そういやさっき、グランドドラゴンになってほしいとか頼まれたよね?
……つまり私、ドラゴンになっているってことじゃないの?
ドキドキしながら自分の手を目の前に出すと、トカゲの前足が視界に入った。
やっぱりぃーーーー!!
予想通りの展開にがっくりと項垂れる。
しばらくうなだれていると、横からバリバリと何かを砕く音がしてそちらに視線を向けた。
視線の先では茶色い色した小さな竜が、私の目の前にあるのと同じような殻を前足を上手く使ってバリバリと食べているところだった。
あ、食べてる……。
どうやら自分の殻は自分で食べなくちゃいけないらしい。
私は諦めて目の前の殻を手に取る。
殻の内側にはなんかうっすら血のようなものがこびり付いていた。
これ洗わなくても大丈夫なのかな?
恐る恐る殻に噛み付いてみると、たいして力もいらずに殻が砕けた。
そういや押すだけで亀裂が入ったもんね。
見た目の割に脆いのかも。
とりあえず殻をそのまま咀嚼してみる。
味は何もしない。
口の中の水分が持っていかれるくらいだ。
お母さんドラゴンでいいのかな?
目の前のドラゴンは残りの半分をバリバリと食べている。
私は何とか殻を食べ終わり、自分の姿をまじまじ見下ろしてみた。
ぱつんぱつんの手足。
しっぽの上側には金色の石がくっついて、それが見えない背中まで続いているようだ。
鱗の色は白乳色なんだけど、表面が虹色に光っている。
うーん。
どこかで見たことあるような……。
そう思って記憶を探れば、わかりました。
会社の給湯室の壁のタイルと同じだ。
まじまじと自分の鱗を見て乾いた笑いが浮かぶ。
お母さん竜とも隣の子供竜とも色が違う。
親と同じ色にはならないのだろうか?
私は前足を伸ばしてぺたんと座る。
大きさは1歳の子供くらい。
背中を振り返ると、思った通りコウモリのような羽がある。
飛べるのかと思ってパタパタと動かしてみるが、1ミリも体は浮かないようだ。
まさか飛べないとかじゃないよね?
訓練すれば飛べるようになればいいんだけど……。
羽をパタパタしてると、頭上からバッサバッサと大きな羽音と風が巻き起こる。
なんだなんだと見上げれば、緑の鱗と青い瞳のドラゴンがこちらに降りて来るところだった。
お父さんドラゴン?
と思っていると目の前を何かが横切り、何かが落ちる音がした。
つい反射的に見れば、ぐちょぐちょのミンチに近い状態になっている動物らしき肉の塊が落ちている。
いやぁあああああああ!!
思わずその場からおののいてしまった。
恐怖から首をプルプル降ると、お父さん竜とお母さん竜がお互い顔を見合わせる。
『ご飯だ。食べなさい』
低い男の声が頭の中に響く。
どうやらお父さん竜の声らしいんだけど、ぐちょぐちょの物体がぁ!!
気持ち悪くて直視出来ずに首を振る。
無理!
しかも生肉!
焼くか他のにしてください!
ぜーったい無理です!!
食べられません!
半泣きで見ると、横から短い足でフラフラと歩いてくる子供ドラゴンが、ミンチに手を伸ばした。
どうやら食べたいらしい。
どうぞどうぞと首を立てに振っていると、今度はお母さんドラゴンが羽を広げて羽ばたくと体がふわりと浮き、更に強く羽ばたいてどこかへ飛んでいってしまった。
残ったのはお父さんドラゴンと子供ドラゴンと私。
くちゃくちゃと肉を食してるような音がしばらく続き、私はそこからずっと目をそらしているだけだ。
一緒にいるってことはこの子供ドラゴンって私の兄弟になるんだろうか?
孵化のタイミングも同じだったし他にドラゴンはいない。
子供ドラゴンがミンチを食べているし、することがないから辺を見回す。
周りは崖に囲まれた窪地で、上にぽっかり空いた空しか見えない。
ここがエルフィージュなのかな?
周りが見えないからこの世界がどうなっているのかまったくわからない。
あの男の子はこの世界は病んでしまっているって言ってたよね?
何が病んでいるんだろ?
空以外何も見えないし、戦争とかしてるのかな?
鼻をクンクンとさせて匂いを嗅いでみる。
血はさっきのミンチのせいだと思うけど、葉の匂いくらいしか匂いはしない。
飛ばなければここから出られなさそうなので、これ以上私にはどうすることも出来ない。
とりあえず飛べるようになってからの話になるだろう。
私はまた羽をパタパタと動かした。
何度も繰り返しているうちに飛べるようになるかもしれなからだ。
しばらくするとお母さんドラゴンが戻ってきた。
口には果物らしい木の実を沢山くわえている。
お母さんドラゴンは私の目の前にその木の実を落としてくれた。
肉が食べられないから果物を持ってきてくれたらしい。
私はありがたく果物らしい木の実にかぶりついてみたのだった……。
私には果物。
子供ドラゴンはミンチ肉が主食になって、家族でここに暮らすようになって何ヶ月くらいになったのだろうか。
お父さんとお母さんドラゴンとはそれなりに声が聞こえ意思疎通が出来るが、子供ドラゴンからは言葉らしいものは聞こえず、意思疎通が困難な状況だった。
遊んでいるつもりなのか、子供ドラゴンに何度か齧られた。
皮膚は頑丈だから血が出たりはしないんだけど、力加減をしてくれないから痛い痛い。
お父さんドラゴンかお母さんドラゴンのどちらかがいつも残っている。
残った方が子供を見て、もう片方がご飯の調達係らしい。
何もすることがないので、暇を持て余した子供ドラゴンはそういう時、私にじゃれついてくる。
じゃれつくのは我慢するけど、興奮してくるとだんだん加減しなくなってくるので、そんな時はすぐに大人の竜の隙間に逃げ込む。
子供ドラゴンが追いかけてきても、そういう時、大人の竜が私から子供ドラゴンを引き離してくれるのだ。
いつの間にか体も2歳くらいの子供くらいに大きくなった。
そして相変わらず、ここから出ることは出来ないし飛べない。
うーん。
この状態がいつまで続くんだろうか?
10年って言ってたからまだ時間もあるし、大丈夫なのかな?
そんな事を考えていると目の前ででんぐり返しをしていた子供ドラゴンが、突然人間の子供の姿になったのだ!
ええーーー!
そんなんあり?
なんで急に人間の姿になった?
え?
グランドドラゴンって人間の姿にもなれるってこと?
めちゃくちゃクエッションマークが頭の上を飛び交う。
子供ドラゴンは焦げ茶の髪と緑の瞳でもちろんすっぽんぽん。
顔からすると男の子みたいなんだけど、性別を示す身体的特徴がない。
気候的に初夏くらいなのかな?
わりと温かいけど、服もないから裸だ。
裸のままでんぐり返しをして遊んでいる。
寒くないのか?
私もでんぐり返しすれば人間の姿になれるのだろうか?
そう思ってでんぐり返ししてみるが何度転がっても人間の姿にはなれなかった。
何が違うんだぁ!
私も人間の姿になってみたい!
そう思ってでんぐり返しを諦めずにする。
『おとうさん、私の姿変わんないよ!』
お留守番の父親に言ってみると、ドラゴンの姿が滲んで揺らいだと思ったらお父さんも人間になっていた。
もちろん緑の髪に青い瞳だ。
そして意外とイケメン。
さらに何故か服を着ている。
何故だ?
『マナを使いなさい』
『マナ?』
『大気にあるマナを使えば人間の姿になれるだろう?』
『え? よくわかんない』
『え?』
何度もマナマナと説明されるが、マナがわからない。
そうこうしているうちにお母さんドラゴンが果物咥えて戻ってきた。
人間の姿になっているお父さんと何か話すと、お母さんドラゴンも人間の姿になる。
こちらも青い髪に赤い瞳。
もちろん美女で巨乳!
そして服を着ている……。
子供ドラゴンを見るけど、やっぱりすっぽんぽん。
え?
服は?
なんで親は服を着てるのに子供はないの?
それから両親にマナのことやドラゴンのことなどたくさん話してもらった。
マナはこの世界で生きていくのに重要なエネルギーの元。
マナがあると精霊が生きれて、魔法などが使えるらしい。
エルフィージュには12の国があり、1つの国に一本づつ世界樹という大きな大樹がある。
世界樹がマナを生み出し、マナから精霊が生まれ育ち、精霊がいるから魔法が使えるそうだ。
グランドドラゴンは竜種では上から2番目に高位のドラゴンで普段は人間の姿をして人間に混じって隠れているらしい。
ちなみに竜種のピラミッド1位はエターナルドラゴンで、グランドドラゴンから進化するんだとか。
鱗の色でそのドラゴンの属性魔法がわかるようになっているらしく、私は給湯室のタイルのような自分の鱗を見つめた。
私神竜になるとか言われたよね?
つまりエターナルドラゴンに進化するってことかな?
飛べないし、人間の姿にもなれないし、魔法も使えないけどね!
毎日でんぐり返ししつつ、飛ぶ練習してまた季節が変わった。
夏なのかな?
少し日差しが強い。
ぽっかり空いた穴にいる私達は日の光を遮る場所がどこにもなく暑いので、お母さんドラゴンに訴えると、崖の一部を掘って穴を開けてくれた。
私はこそに入り込み涼む。
子供ドラゴンは姿を自由に変えられるようになったらしく、今はドラゴンの姿だ。
何がそんなにハマるのか理解できないけど、子供ドラゴンは飽きずにでんぐり返しをして遊んでいる。
子供ドラゴンがしっぽで地面を叩くと、下の土がぽこっと一部盛り上がった。
土属性の魔法だ。
未だ何も出来ず、魔法も使えない私はめちゃくちゃがっかりだった。
面白くなくてお母さんドラゴンのそばに行く。
『おかあさん、暑いよ。水遊びしたいよ!』
そうおねだりすると、お母さんドラゴンは私と子供ドラゴンを前足で掴んで飛び上がり、近くの川に連れて行ってくれるようになった。
キレイな川はとても浅くて流れも緩やかだ。
私は川の水に浸かってしっぽを使ってパシパシと水面を叩いて楽しんでいた。
飛沫が体にかかって気持ちがいい。
子供ドラゴンは川の底の石の間に鼻を突っ込んでいる。
川の底には小魚やカニのような生き物がいて、それを食べているのだ。
子供ドラゴンはめちゃくちゃ食いしん坊で、私が果物を食べていると横からいくつか奪っていく。
果物ばかり食べて他は何も食べないけれど、不思議と飽きたりはせず、毎日果物をお腹いっぱい食べている私は川で水遊びを楽しむ。
近くにいたお母さんドラゴンは目を閉じて昼寝の時間だ。
私は川底の石を積み上げる遊びに熱中してた。
ふと、何とも言えない甘い匂いがした。
周りを見回す。
なんだろう。
果物とかそういう甘い匂いじゃない。
無視出来ない強い匂い。
私は立ち上がって匂いがどこからするのか嗅ぐ。
匂いはここから少し離れた西側の方から流れてきていた。
痺れるような甘い匂いは嗅ぐほど思考がどんどん鈍ってくる。
川から出て、惹かれるままにその匂いをたどっていく。
歩く度、匂いが強くなる。
何か酔っ払ったように進む足元が覚束なくなって、早く欲しくてとうとう四本足で歩いて匂いを辿りだした。
進めば進むほどすごく匂いが強くなり、草をかき分けてみるとそこに人が倒れていた。
まだ幼さが残る男の子でマントのようなものをつけてるが、ギザギザに裂けマントの意味をなしていない。
あっちこっちすす汚れているのかと思ってよく見れば、切られた傷が数箇所あり、血が固まってどす黒くなっているのが汚れているように見えているだけだった。
甘い匂いはこの男の子からする。
くらくらしながら男の子の血の塊を私は舐めてみた。
感じたこともない痺れるような甘さに、ゾクゾクと体が震える。
もっと欲しくて、味のする場所を次々と舐めた。
甘い。
美味しい。
美味しい!
もっと舐めたくて服に隠れている場所は爪で邪魔な布を切り裂いて舐める。
夢中になって舐め回し、味がしなくなるまでなめると、段々と意識がはっきりしてきた。
目の前にはあっちもこっちも服が破け(ほとんど私が引き裂いちゃった)、私に舐められてキレイになった男の子がいる。
綺麗な長い銀髪は1つに編み込まれ、容姿は目を閉じていても子供にしてはかなり綺麗な子だとわかるレベルだ。
すぐ近くには剣が転がっていることを考えれば、騎士見習いかなんかで、何かか誰かに襲われて気を失っているんだろう。
呼吸は落ち着いているし、なぜか傷がなくなっていた。
うーん、もしかしてドラゴンが舐めると怪我が治るのかな?
でももう怪我している場所がないので検証はできない。
また誰か怪我していたら舐めてみよう。
そう決めて周りを見回してみるが、男の子以外誰の気配もしなかった。
この子どうしよ?
とりあえず男の子の目が覚めるまで待とうと、男の子の横に座る。
差し込む木漏れ日からまだ日は高いようだ。
さわさわと木々が風に揺れ、鳥の声が聞こえる。
人の争うような声など何も聞こえない。
近くで戦争とかそういう争いごとが起きているわけでもなさそうだ。
男の子はだいたい中学生くらい。
年齢的に13、4くらいかな?
キレイに舐めたのに、男の子からまだ微かに甘く痺れるような匂いがする。
私はもっと嗅ごうと男の子の体の上に乗っかって丸まった。
すごくいい匂い……。
なんでこの子こんなにいい匂いがするんだろ?
私は匂いに包まれて目を閉じた。