抜刀術
とうとう俺の番が回ってきた。
合格できるかどうかは別として、全力を出して戦う。ただ、それだけだ。
「君で最後だな。……さあ、かかってこい!」
俺は慎重に息を整え、剣を構える。
そして、一気に加速して斬りかかる。
「抜刀一式 緋炎」
これは俺が作った剣術、抜刀術だ。昔に剣の修行をしている時に作ったものを試行錯誤しながら、今の形へと改良した。
この「緋炎」は左上から右下へと大きく振り下ろし、斜めの力で敵の防御を崩す技だ。重心を上手くかけれたら、強力な一撃となる。
この試験官は強い。だから、俺は牽制の一撃のつもりで「緋炎」を放った。だが、俺の予想は外れた。
俺の「緋炎」で試験官は大きくバランスを崩し、後ろにのけぞったのだ。
俺は一瞬戸惑ったが、チャンスと見て一気に畳み掛ける。
「抜刀三式 青嵐」
この技は剣速を高めることで、一瞬で六連撃を放つことができる技だ。必殺の一撃ともなりうるこの技で俺は勝負を決めにかかる。
そして、「青嵐」の六連撃は全て命中した。
「がはっっ!!!」
六連撃を全て受けた試験官は白目を剥いて倒れた。周りの空気が固まっているのが分かる。
(剣術に自信はあったが、こんなにあっさりいくものなのか……?)
俺は少々疑問を抱きつつも、剣を鞘に収めた。
記録をしていたもう一人の試験官は慌てて、どこかへ行ってしまった。まあ、試験官が一人気絶してしまっているから、慌てるのも無理はないか。
「ウィル!!あんた、すごいね!」
ラナはそう言って、俺の背中をバシッと叩いた。
「いてっ……もう、いきなり叩くなよ。まあ、ありがとな」
「あんな技は見たことなかったけど、まさか隠してたの?」
「別に隠してた訳じゃないけどな。ただ使う機会がなかっただけだ」
「……でも、試験官を倒したから合格は間違いないわね。となると、心配なのはレミィだけど……」
「うーん、それは何とも言えないな。試験官のレベルが同じとも限らないし、点数の付け方も微妙に違うかもしれない。だから、合格を祈るしかないな」
そんな話をしてると、どこかへ行っていた試験官が戻ってきた。
「えー、これにて試験は終了となります。えと、これからは自由時間となりますので、学園内を見回ってもらってもいいですし……お帰りいただいても構いません」
試験官は所々詰まりながら話していた。おそらく、元々は倒れた試験官が言うセリフだったんだろうな。
「ひとまず戻ろうか」
「そうだな」
俺たちはレミィと合流するべく、別れた場所まで戻った。
◇
その場所に戻ると、先に試験を終えていたレミィがとても暗い表情で立っていた。
(もしかして、結果が悪かったのかな?)
隣を歩くラナもレミィの様子を察しているようだった。
「あれは結果が悪かったっぽいわね」
「そうみたいだな」
顔を上げたレミィが俺たちに気づくと、全速力で走ってきた。そして、俺とラナの目の前で急停止する。
「はぁ、はぁ、もう、二人とも遅いよ!私がどれだけ苦労したことか。もう!」
どうやらレミィは試験で表情が暗くなっている訳ではないようだった。
「えーと、何があったんだ?」
俺たちはひとまずレミィの話を聞くことにした。