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Re:Maria Rose  作者: 以星 大悟(旧・咖喱家 )
第2章 マリアローズは止まらない
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27話 問題解決、美少年再び

 翌日、さっそく調査を始めると皆で意気込んでいたらグスタフさんが昨日の内に街にある全ての飲食店を回って事情を聴いて周っていてくれたみたいで、お店にはその飲食店の代表者達が集まっている。


「つまりだね、料理人がいなと?」

「そうです、腕の良い料理人は他の領地に移住してしまい」

「内にいた若いのも、先月辞めました」


 と、飲食店の代表者さん達は口々に事情を話している。


 どうやら領税がまた上がってしまった事で給料の支払いが遅れ、料理人が次々と辞めてしまい、残った料理の出来る人達で頑張っていたけどついに不満を持っていた常連客が一斉に淑女の酒宴に鞍替えしてしまった。

 だからあの異常な量のお客さんが来たという訳で、納得だけどそれでも不可解なのは、一斉に常連客が鞍替えするという異常事態は普通なら起こらないと思うけどな。


「最近はサラダとスープ、ハムやソーセージ、それとパンというのがどの店も共通している事です」


 ああ、確かにそれなら一斉に鞍替えが起こると思う。

 それに最近では村単位で移住も重なり、空き家だらけの宿場街をアパートに改修して貸し出していると聞いたし、それも重なってのあの異常事態だったのか。


「助けてください!ギョーザとかカラアゲとか、作り方を教えてください!」

 その言葉を皮切りに次々と料理を教えてくれと言う声が上がる。

「どうするかね、アグネス、あんたならどうする?」


 女将さんの問いに副女将さんは少し考えてから答える。


「このままだと早晩、過労死する者が現れます。それならある程度まで教えてお客の分散を図るべきかと」

「まあ、それしかないね……」


 女将さんの言葉に代表者達の顔は明るくなる、だけどトマトケチャップやウスターソースに関しては教えないと女将さんが言うと難色を示しだした。


 図々しい人達だな。


「文句あるなら帰りな!そもそもあんたらが内にして来た事を忘れたとでも言うのかい!?」


 女将さんの一喝に代表者達は黙ってしまう、つい最近までハムやソーセージの類にサラダや煮込み料理まであれも出すな!これも出すな!と言って来ていた、カプレーゼやポテトチップを出す様になった時も苦情を言いに来て、最初はお酒が出せるからと我慢していた女将さんも限界に達して今ではハムカツやクロケット(コロッケ)、他にも日替わりでボクが作ったハッシュドポークとかも出す様になった。


 女将さんにしてみれば難癖を付け続けて来た相手を助けないといけないという、不本意極まりない状況だけど、助けないとこっちが潰れてしまうから仕方がなく助けるという状況だ。


 それに対して代表者達も自分達が今まで何をして来た事を棚に上げて、訳の分からない理屈を並べて女将さんから更なる妥協案を引き出そうと必死だ。


 女将さんは助けてはやるけどそこから先は自分たちでどうにかしろ、と言い代表者達は最後まで助けてくれと言って来る、話し合いはその平行線を辿って先に進まないけど何人かの人は図々しい事を言う人を止めているから、そこを突いてみようかな。


「一旦、表決を取りましょう。目を瞑ってください、そして女将さんの案に賛成の方は手を上げてください」


 ボクがそう言うと一斉に図々しい事を言っていた数人を除いて手を上げる。

 やっぱりね、さっきから喚ているのもあの4人だった。


 つまり飲食店の間で強い発言力が合って他の人達は従うしかなかったみたいだ、もしかしたらこの惨状もこの人達が原因かもしれない。


「では手を下ろしてください、では反対の人は手を上げてください」


 4人が手を上げてそれ以外の人は微動だにしなかった。


「女将さん、質問があるのですが」

「何だい?」

「今まで難癖を付けて来ていたのってこの4人の方達ですか?」

「ああそうだよ、成程ね。そう言えばこいつらは領主館で働いている役人と仲が良いね」


 女将さんの言葉に4人を除いた残りの代表者達の顔が一斉に険しくなる、そう言えば領主はこの街で最も嫌われていている存在だった、そんな領主の手下と仲が良いとなるとこんな険しい顔になる訳だ。


「キッドさん、もしかして急にギルガメッシュ商会からルッツフェーロ商会に取引相手を変えろと言って来たのは……」

「変えなかったら急に材料を卸してくれていた業者が卸してくれなくなったのも……」

「変な客が来て難癖付けてのも……」

「……」


 全員が4人を囲む、他にも急に価格が吊り上げられたとか不良品が良く混じるとか代表者達のどんどん殺気立って来ている。


「それ以前に淑女の酒宴に制限が掛けれているなんて俺たち知りませんでしたよ、言いましたよね、仲間として受け入れようって」


 この後、この4人は家族と共に逃げる様に他の領地に移って行った。

 そして代表者達に料理の指導を行ったおかげで以前の様にパンクする程のお客さんは来なくなった。




「いらっしゃいグスタフさん、それに君はアレックス?」

「ん?アレックス?」

「グスタフ殿!」

「あ、ああ、ゴホン…、そうかそうかマリアともう会っていたか。おおうそうだマリア、この子は――王都にいる友人の孫でなアレックスと言うのだ、少しばかり預かる事になっての……」


 そう言うと二人はカウンター席に座る。

 何だったんだろう、今の間は……まあ、いいかな。


「今日はどちらにしますか?」

「ふむ、ではビールとメイド風ピクルとあとギョーザを2皿、アレックスには日替わりジュースを」

「はい分かりました」


 ボクは注文を受け取って準備を始める。


 今日の日替わりジュースはオレンジとレモンのミックスジュースだ。

 親方さんに作って貰ったジューサーを使って作る日替わりジュース、家族連れが増えた事で提供する様になったメニューで、今では子供に人気のメニューとしてお馴染みになっている。


「お待たせしました、ビールと日替わりジュース、それとメイド風ピクルです」

「ふむ、やはりこれはビールが進むのう」


 グスタフさんは嬉しそうにピクルを食べてはビールを飲むを繰り返している、何時もより上機嫌だけど何かあったのかな?


「ようやく妻が帰って来るのでな、それが待ち遠しいのだ。それと近い内に妻と来るつもりだよ」

「それは良かったですね、でしたらその時は何かとっておきを注文しますか?」

「ビーフシチューか、ふむ次は何時かな?」

「来月の、たぶん中ぐらいだと思います」


 ボクは冷蔵庫からギョーザを取り出して焼いて行く。

 ああ、つい最近まで修羅場続きだったから今のこの穏やかな時間が尊い。


「グスタフ殿、このピクルは変わった味ですね、辛みがありながら甘みもあってそれに魚の味もします」


 おや、アレックスは随分と良い味覚をしているみたいだ。


「それで驚いていては身が持たんぞ、マリアが考案したギョーザはさらに上を行くからのう」

「グスタフ殿、さっきから言っておられるギョーザとは一体どんな食べ物のですか?」

「簡単に言えば小麦粉で出来た皮で野菜などを混ぜた挽肉を包んで焼いた料理だよ、ただその味は絶品だぞ、何せ一時はそれを食べたい者が大挙して押し寄せていたからのう」

「それ程の料理とは、やはり外に出なければ分からない事が多い」


 ギョーザの話をしているだけなのに何でそんなに深い感銘を受けているんだろう、外にって…そう言えばアレックスは王都の事を言っていたから実は王子様だったりするのかな?まさかね、ラノベじゃないんだから、たぶん伯爵家とかの子息かそれなりに裕福な商家の子供だ。


「お待たせしましたギョーザです」


 グスタフさんはタレは付けない派なのでそのまま出したけど、アレックスはどうするのかな?味付けは濃い目だから付けない派の人が多いけど……反応を見てから決めよう。


「これがギョーザ、何となくラビオーリに似ています……!これは、野菜の甘みに肉の旨みが合わさってそれに焼いているので香ばしくて、これ程の料理は王都でも食べた事がありません!」


 よし!王都越えだ!アレックスは夢中でギョーザを食べている、ふふふ、ギョーザだけで驚いていては舌がもたないよ、まだまだ色んな絶品料理があるんだから。


「他の店では蒸したり茹でたり、揚げたギョーザも提供されている。ギョーザはアーカムが誇る料理の一つになっておる」


 他にもメンチカツもお店によって違いを出していて茹で卵を入れて揚げたり、拳と同じ大きさのメンチカツを提供していたり、ソースに工夫を凝らしていたりと今やアーカムに来たら美食が味わえると言われているのだ。


 そしてギョーザを食べ終わったアレックスは少し残念そうな顔をする、食べたりなかったのかな?


「これなら晩餐はお断りするべきでした、知っていればもっと食べられたのに……」


 そういう事か。


「なら明日も来てください、明日は副女将さん特製のフライドチキンが出ますので、このお店で一番美味しい鶏肉料理なんです!」


 あれ、何でアレックスは顔を真っ赤にしているんだろう?ホットオイル入りの酢醤油は出していない筈なのに……。


「マリアよ、お主の笑顔は純情な少年には刺激が強い」

「?」

「分からぬならそれでいいが、明日はこれそうかアレックス?」

「え?あ!その申し訳ない、明日は周らないといけない場所が多く、明後日なら問題ないが…とても残念だ……」


 確かにそれは残念だ、この街に来たなら副女将さんが作るフライドチキンと女将さんが作るビーフシチューは必ず食べないと、人生の半分を損すると断言できる。


「そうですか、でもまだこの街には滞在されるんですよね?機会があれば絶対食べてください、腰が抜けるくらい美味しいですから!」


 その後、アレックスはジュースを飲み干してグスタフさんと帰って行った。


 それにしても美少年だ、大人のお姉さんなら間違いなく声を掛けてしまう美少年だった、昔のボクとは大違いだ、羨ましいなもし男に生まれ変われるならアレックスみたいな野性味のある美少年がいいな。

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