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Re:Maria Rose  作者: 以星 大悟(旧・咖喱家 )
第2章 マリアローズは止まらない
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25話 美少年だ!

 フランシスさんが謝罪に訪れてから一週間後、普段は読む価値がないと買っていない新聞を珍しく女将さんが買って来ていた、そこには店主のボッシュが横領や脱税に殺人の疑いで逮捕されたという見出しと小さくフランシスさんが自首したと書かれていた。


 ボクは複雑な気分だった、ボッシュに関しては当然の末路だと思ったけどフランシスさんに関してはそうは思えなかった。

 確かに自業自得だ、最初から全てを打ち明けていれば良かったのに、言わずに目を瞑ってしまった、だから共謀者として罪に問われるのは仕方が無いと分かっている、けどフランシスさんは悪い人には見えなかった。


 ボクは頭では理解していても心が納得していない、だから被害者の遺族からしてみれば憎い相手かもしれないけど、せめて重い罪にならないで欲しいとボクは思う。


 それと新聞の最後の方には近日中にアーカムに商会本部で働く若手の青年社員を送り信用回復に努めると書いてある。


 うん、気持ちを切り替えよう。

 そうだ表の清掃をしよう。


 最近、やたらと馬車が通る様になって大通りは普段よりも泥が多いから店の前はすごく汚れている、水で排水溝に泥を流したりして綺麗にしているけどまた何台も馬車が通って泥だらけになってしまったのだ。


 雨が降ったら色々と大変だから、気付いたらすぐに水で流さないといけない。

 ボクはバケツに水を入れて外に出る、思っていたよりも泥が散っていた。


 セイラムは舗装されている道が極端に少なくてしかも雨でも降れば、車輪に泥が付いて街に入れば大量の泥を撒き散らしながら馬車が疾走する、おかげでお店の前の通りは泥だらけでそこをさらに泥だらけの馬車が通るから大量の泥が歩道側にまで飛んで来る。


「流すだけでは無理ですね、ブラシを取って来ましょう」

「クエェ~」


 鳴き声が聞こえてボクは上を見上げるとアストルフォが屋根に止まっていた、もうすぐ梅雨が始まる、そうなると思う様に飛べなくなるし、最近は少しずつ雨の日も増えて来たから、今の内に飛び溜めをしておきたいみたいだ。


 ボクはお店の中に入りブラシを取って外に出ると突然、石が飛んで来た。


「どういうつもりなのかな、人に石を投げつけるなんて危ないですよ?」


 ボクは飛んで来た石を掴み、投げた犯人達を睨みながら注意する。

 如何にも悪ガキという感じの子供が三人、ボクの目の前に立っていた。


 普段からメイド道の修練を続けていて手加減を何度も間違える鬼教官アデラさんの土人形ことゴーレムと戦っているから、子供の投げる石程度なら難なく掴めるから問題ないけどこれが普通の女の子なら大怪我をしていた。


「な!?嘘だろ……」

「化け物って噂は本当だったんだ!?」

「俺たちで退治するぞ!?」


 ん?何を言っているんだこの子達は、化け物?ボクが?これでもお母さんと一緒に淑女の酒宴の看板娘と言われているボクが、お母さんとお祖母ちゃん似のこの容姿をどう見たら化け物に見えるんだ?それに初対面の相手に石を投げつけて化け物呼ばわりするなんて失礼な子達だ。


 でもまあ、もしかしたら勘違いの可能性もあるから確認しておくか。


「一応聞いておくけど、化け物ってボクの事かな?」

「当り前だろ、そんな真っ白な髪と肌と真っ赤な目!まるでゴブリンじゃないか!」


 あ、うん、潰していいかな?さすがにボクでもゴブリン呼ばわりは本気で怒るよ。


「それに母ちゃんが言ってたぞ、淑女の酒宴には次々と新しい料理を考える恐ろしい子供がいるって!」


 頭の悪い子だ、それは別の意味だよ。

 ゴブリンとかをそういう意味の化け物ではないよ、いや似てるけど意味合いが大きく違うからね。


「普通なら泣かしますが初犯なので見逃してあげます、それにボクは子供を泣かす様な趣味はないので今すぐ尻尾巻いて逃げ帰れば見逃してあげますよ?」

「てめぇ!」

「てめぇではありません、マリアローズです。人の名前はちゃんと言う、お母さんに教わっていないんですか?」

「て―――」

「また言おうとしましたね、学習能力が無いんですか?自身の行いが周りに対してどの様な影響を与えるか考えてください、もしも自分の両親を大切に思うなら尚更気を付けないといけません」


 ボクが畳み掛ける様に言うと悪ガキ三人は顔を真っ赤にしてグギギと言う唸り声を上げ始める、実際にあんな唸り声を上げる人なんて居たんだ、さすがは異世界だ。


「もう我慢ならねえ!やっちまうぞ!」

「「おう!!」」


 我慢してないよね君達、さっきから言いたい放題言ってるよね。

 我慢してるのはボクの方だ、あ、どこからともなく棒切れを持ち出して握り始める。


 困ったな、ボクはまだナイフとか武器の扱いと基本の体捌きとしか習っていないからもしこのまま喧嘩になったら、避けたりするのは問題ないけど怪我をさせない様に無力化は難しい。


 投げたり極めたりするのは出来るけど、素人を相手に下手に技を掛けると大怪我を負わせてしまうかもしれない。


 どうしようかな、さっきから棒切れを力任せに振って来るだけだから問題なく避けられるけどこのままだと相打ちとか始めそう、で怪我をした責任がどうとかモンスターペアレントが怒鳴り込んで来る。

 ドラマの定番だし、どうしたら良いのかな……。


「くそ!さっきからチョコマカと!囲んじまえ!!」

「「おう!!」」


 リーダーと思われるボクを最初に化け物呼ばわりした悪ガキは、その物言いに反して頭は回るみたいだ、上手く二人に指示を連携してボクを取り囲む。


 これは……避けたら盛大に相打ちだ。


 体の硬さを強化すれば棒切れ程度なら問題なく折る事が出来るけど痛くない訳じゃないし、でも注射よりは痛くない、ただそれだとお母さんと女将さん達が絶対に怒る。

 困った、とボクが腕を組んで考えていると、


「お前たち、何をしている!!」


 と、ボクを取り囲んでいる悪ガキ三人に対して怒鳴る声が聞こえた。

 まだ声がまだ幼いから子供かなと振り向いたら、何と言うか将来は絶対に野生的な美男子になりそうな美少年が立っていた、それと後ろでオロオロとする警邏官のお兄さんもいた。


 居たのなら早く助けて欲しい、そんなんだからお母さんに振り向いてもらえないんだ。


 そう言えばボクは警邏官のお兄さんの名前を知らない、お母さんに告白しては玉砕する人と言う印象しか無くて、たぶん何度か名乗っていると思うけど玉砕の印象の方が強くて名前を覚えられないや。

 そんな情けない警邏官のお兄さんを置き去りにして、美少年は悪ガキ三人を睨みつける。


「女の子一人相手に、複数人で、武器まで持って襲うなど、男として恥ずかしくないのか!!」


 子供とは思えないお腹から出される迫力のある声に悪ガキ三人は怯んで怯え始めている。


「どんな理由があろうとその様な卑劣な行い、見過ごす事は出来ない」


 少年が一歩前に出る、すごい気迫だ。

 ボクは女将さん達で慣れているけど素人の悪ガキ三人には刺激が強過ぎるみたいだ、今にも漏らしてしまいそうな顔になって震えている。


「その子に変わって俺が相手をする」


 少年が一歩前に出る度に悪ガキ三人は一歩下がって行く。

 そして少年の気迫が一層高まる。


「さあ、かかって来い!!」


 少年が拳を握りボクサーみたいに構えた瞬間、悪ガキ三人は脱兎の勢いで逃げて行った。

 何だろうな、悪役ていうのはこういう時の逃げ足は恐ろしく速いよね、さっきボクを襲っていた時よりも速いや。


「そこの君、怪我はないか?」

「え?あ、はい。危ない所をありがとうございました、ボクはルシオ・マリアローズと言ういます、差し支えなければお名前をお聞きしてもよろしいですか?」


 ボクの問いに少年は少し考えるそぶりをした後、よく思い付いた時に使う手を叩く動作する。


「俺はアレックス、アレックス・ベイツだ。ただの通りすがりのお節介焼きさ」


 そう言って爽やかに笑う、普通ならここでトキメイて恋に移行するんだろうけど残念ながらボクは心が男だからトキメキはしない、ただカッコいいなと思うだけだ。


「アレックス様、先程助けていただきありがとうございました」


 ボクはもう一度、お礼を言って会釈をする。

 当然、副女将さん仕込みの営業スマイルも忘れずに、すると少年は顔を少し赤くする。

 さっき拳を構えて戦うとして興奮したから、頭に血が昇ったのかな?


「あ、え、あ、その…君は何で絡まれていたんだ?彼らに何かしたのか?」


 まあ、傍から見たら悪ガキがメイドを襲っていたという珍妙な光景だったから疑問に思って当然か、とりあえず大まかにに分かりやすく説明をしよう。


「成程な、許せんな。はっきりと言って君の容姿は、その、あれだ、あの者達が言ったような事は決してない、それどころか都で君より綺麗な少女はいないと断言できる」


 褒めてくれるのは嬉しいけど何で目を逸らすんだろう?

 それよりも都と言っていたから王都から来たのかな、こんなド辺境で圧制が敷かれて近くにはマフィアとギャングの根城がある街に、親戚にでも会いに来たのかな。


「もしまたあの者達に何かされたら言ってくれ、すぐに駆け付ける。それとこの者にも言っておくから頼るといい」


 それだけ言うと少年は馬車の方へと向かって行く、警邏官のお兄さんに対して上から物言いという事はそれなりの身分の少年みたいだ、伯爵家とか侯爵家とかな、でもそんな高い身分の人がこの街に来る訳がないか、男爵家の子息とかだと思う。


 だけど何だろう、どこかで見た事がある顔だった。

 金髪で野性味があって、それでも野蛮そうに見えない美少年で将来は間違いなく美男子に成長しそうだった。

 誰だったっけ、すごく身近にいると思うんだけど分からないや。


 それよりも上で殺気立ったてるアストルフォが悪ガキ三人を追いかけて何かする前に止めないと。


「アストルフォ、下りて来て手伝って!」

「クエ?クア!」

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