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Re:Maria Rose  作者: 以星 大悟(旧・咖喱家 )
第2章 マリアローズは止まらない
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18話 運命!の、出会いは後回しにして

 ボクは急いでお店に戻り厨房に入ると早速、醤油を使って新しい―――。


「その前にトマトケチャップ、作るんじゃねーのか?」

「あ……」


 リーリエさんのツッコミでボクは正気に戻る、もう二度と出会えないと諦めていた相手に再開した事でどうやらボクはまた暴走していたみたいだ。


 カラアゲはまた後日にしよう、今はトマトケチャップが優先だ。

 何故なら今、お店には山の様に大量のトマトがある、原因はボクなんですけどね。


 昨日、トマトの農家のトーニオさんがようやく街道が復旧したからと大量のトマトを持って来てくれた、ただタイミングが悪くて臨時休業中だった。

 休業中なら必要ないだろうとトーニオさんは残念そうに納品せず帰ろうとしたけど、女将さんが纏めて全て買い上げることにした。


 その理由はボクが「トマトを使ったケチャップやトマトの水煮缶とか、ボクのいた世界ではトマトは食文化に欠かせない野菜でした」と熱く語ってしまっていたからだ。


 それで女将さんはトマトを使った料理を試作しようと言い始め、タイミングよくトーニオさんが大量のトマトを持って来て、で今に至る訳なんだけど上手く作れるかな。


 正直に言ってトマトケチャップを手作りしたのは一度だけ、レシピは頭の中に入っているし忘れない様にノートに書いてあるけど、作ったのは一回だけだから自信が無い。

 だけど何事も挑戦だ、頑張るぞ!


「私も手伝いますよ、レシピならマリアの書いたノートを読んで暗記していますので」

「はいお願いします、それでしたら―――」


 ボクが着替えて厨房に入ると副女将さんが待機していた、なので副女将さんには香辛料を減らしたレシピをお願いする事にした、ボクは最初に集めた香辛料を全部入れた方のレシピで作る。

 ついでだからトマトの水煮も作っておこう、ちょうど空き瓶もいっぱいあるから副女将さんには空き瓶の煮沸消毒をお願いする。


 トマトケチャップは一回しか作った事が無くて自信が無いけどトマトの水煮、つまりホールトマトなら何度も作った事があるから自信がある、ちゃんと作れば長期間保存が出来てしかも使い勝手が良いから特売で大量にトマトを買い込んだら半分くらいはホールトマトにしていた。

 ボクは真っ赤に熟したトマトを手にしてこれからする事を決めた、まずはトマトケチャップを作る前にホールトマトを作ろう。


 最初は湯むきからだ。


 トマトを綺麗に洗ったら薄く皮に切れ目を入れる、入れておけば後で皮が剥き易くなるから忘れずにしておく。


 お湯が沸騰したお湯に付ける、しばらくすると皮が張り裂けるから取り出す。

 うっかりお湯からトマトを出すタイミングがズレると、火が通り過ぎて柔らかくなってしまい剥き難くなるから要注意だ。


 お湯から取り出したトマトはすぐに冷水で冷やして皮を剥く、最初に薄く皮に切れ目を入れていたから簡単に剝けるから、あっと言う間に剥き終わった。


 次の作業は包丁でヘタを抜く事だ。


 うっかり力を入れすぎると潰れちゃうから力加減は慎重にヘタを抜いて瓶の大きさに合わせて切り分けながら詰めて行く。

 トマトを詰め終わったら薄い塩水を作り、それを瓶の口の2㎝下まで注ぐ。


 そして鍋に水を張り瓶を入れ瓶の口に蓋を置いて火にかける、この時に絶対に蓋を閉めてはいけないから要注意だ。


 水が沸騰したら20分から30分ぐらいに煮沸消毒した後に蓋を閉めて完成、レシピによって煮沸消毒の仕方が違うからこれは好みかな。


 さて次はお待ちかねのトマトケチャップ作りだ。


 ホールトマトと違って自信が無いから愛用のレシピノートを横に置いて作業の手順を間違えない様に気を付けながら進めよう。

 まずはミキサーがないから湯むきしたトマトを適当な大きさに切り裏濾うらごしをしてホーロー鍋で灰汁を取りながらとろりとなるまで煮詰める、鉄とかの鍋だと色が悪くなるから注意だ。


 すりおろした玉葱と葫、塩・胡椒に各種の香辛料を入れて軽く煮てからお酢を加える。

 最後に濾してベイリーフなどの葉を取り除くと完成だ。


 保存は煮沸した瓶の中に入れて粗熱が取れたら冷蔵庫で保管しれば一週間は持つと思うけど、日本で売ってる物の様に保存料が入っていないから保存期間はとても短い、ただ人気が出れば何度も追加を作る事になると思うから、特に問題にならないと思う。


 ボクは出来たトマトケチャップから粗熱が取れたのを確認すると小皿にトマトケチャップを注いで女将さんの所に持って行く。


「女将さん、味見をお願いします」

「ああ、どれどれ……旨いね!香辛料の味とトマトの味がしっかりとしたスパイシーな味だね」

「ベル、次は私の方を」


 副女将さんも出来たみたいでトマトケチャップの入った小皿を女将さんに渡す。

 副女将さんが作ったトマトケチャップを味見した、女将さんは目を見開いて驚く。


「こっちはトマトの味が主体だね、程よい酸味に絶妙な香辛料の辛み、何より親しみやすい味付けだ」


 女将さんはボクが作ったトマトケチャップを味見した時以上に驚いている。

 ボクも気になって味見させてもらったけど、はっきりと言ってボクが作ったケチャップは香辛料が主体になっていてトマトが脇役だった。


 だけど副女将さんが作ったケチャップはトマトと言うプリマドンナを最大限に生かす為に余計な香辛料を極力減らして、ただトマトの持つ旨味を最大限に引き出したマイルドな、だけどどこまでもトマトの濃厚な旨味が広がる味だった。


 うん完敗だこれ!それ以前にボクが書いた某国営放送のレシピじゃない、副女将さんオリジナルのレシピだ!

 さすがは副女将さんとしか言えなかった、ボクの方は少し香辛料が多過ぎて味が全体的に尖っていた、使う香辛料の種類や量を調整すれば今より良くはなると思う。


 ボクは敗北に打ちひしがれている間に女将さんの中でどっちを使うか結論が出たみたいだ、ただボクの予想とは違い。


「どっちも旨いから両方とも採用だ、スパイシーとマイルドで使い分けるよ」

「では人気のある方を中心に作るという方向にしましょう、それに味が分かれたおかげで料理によって使い分けが出来ますね」


 え?えええ!?いや、どう考えてもボクが作ったトマトケチャップは不採用だ。

 だって圧倒的に副女将さんの方が美味しかった、けど女将さんと副女将さんは早々にトマトケチャップの増産に取り掛かっている。


 ううん……ここでボクが何か言っても聞き入れてはもらえないと思う。

 なら改良を加えよう、幸いな事にウスターソースを作る為に大量の香辛料を買い込んでいる、それにトマトもまだまだ沢山ある。


 幾らでも試作が出来る、だから切り替えて行こう。

 ボクは厨房に戻って女将さんと副女将さんの手伝いをしつつトマトケチャップの可能性を語る。


「トマトケチャップは色んな料理に仕える万能調味料の一つです、ポークチョップやナポリタン、他にも色んな料理が作れます」

「成程ねえそいつは良い、それじゃあ今日の夕食はそれにしようかね」

「マリアに見せてもらったノートにレシピが載っていましたね、他にもトマトケを使ったレシピがありました、腕がなります」


 女将さんと副女将さんが燃えている、それもそうか、新しい調味料とそれを使った料理のレシピがあったら料理好きの二人が燃えない訳がない。

 これだとリーリエさんも燃えるだろうな……ボクは今回は食べる事に徹しよう。


 その後、ボクはナポリタンやポークチョップ、アメリカンスぺリブなどトマトケチャップを使った料理とミートスパゲッティーやトマトの肉詰めなどトマトを使った料理のフルコースに舌鼓を打った。


 そしてこれを機に淑女の酒宴に対する評価は変わって行く。

 最初はお酒しか取り柄の無い店と言う評価から、お酒が飲めて料理は絶品で働いている従業員は美人揃い、アーカムが誇る最高峰の美食を出すお店として知られて行く事になる。

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