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Re:Maria Rose  作者: 以星 大悟(旧・咖喱家 )
第1章 廻った少年の日々
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3話 朝焼けと未知との・・・・・・。

 最初はすごく焦った、自分自身の体の成長と周りの会話の内容から半年は過ぎていると言うのに、依然として目ははっきりと見えていなかったからだ。


 少しずつ輪郭(りんかく)が分かる様になって来て声以外でも判断出来る様になっても、(すり)りガラス越しで見ている景色に強い不安を覚えてしまった。 このまま、ずっとこの景色だけしか見れないのだろうか?お母さんの顔も皆の顔もちゃんと見れないのかと……目が見えない人の気持ちが少し分かってしまい、日に日に不安がばかりが積もる日々だった。


 僕の隣で眠るお母さんの顔を見ても輪郭(りんかく)や髪や肌の色は分かっても、どんな顔なのか分からない。朝起きるたびに目が見える様になったか期待して、ぼやけて見えなくて落ち込んで、それを何度も繰り返す内に生まれて7ヶ月が経って一生このままだと諦めてしまった翌日、今日の事だった。


 僕は最初、目を開けた時に妙な違和感を覚えた。

 擦りガラスの様な景色じゃなかったからだ。


 天井が木で出来ていると思った時、自分の目がはっきりと見える様になったことに気が付いた、横から眩しさを感じてその方向に顔を向けた時に朝焼けで綺麗に染まった空が視界に入り自然と涙が流れて戸惑ったけど、生まれて始めて見るはっきりとした世界の色に流れる涙を抑えることが出来ないのは、仕方がない事だ。


 ゆっくりと夜が朝に染まって行く、その境のせめぎ合いが不思議な色合いで朝がこんなにも美しかったのかと思った。前世では必死だった、必死になり過ぎて生きる事を楽しんでいなかった。世界の色なんて気にしてもいなかった、だから世界はこんなにも美しいのだと、今になって分かった。希望に満ちた朝、新しい朝、喜びで胸が一杯で、ラジオ体操がしたくなった。


 日本人の性だよね、こればっかりは!


 30,40まで生きていたら少しは違ったのかもしれないけど、僕にとっては日常の中にラジオ体操があったからね、体育の授業でも習っていたしラジオ体操をすると健康に良いと自主的に毎朝していた。近所の公園でも御老人方が毎朝していたから混ざってやっていた、まあ、嫌われ一族の息子ということから参加しても白い目で見られてましたけどね。


 ―――え?


 綺麗な朝に感動していたら、何かいることに気付いた。

 あれは、何?

 鷲と最初は思った、そう見た目は鷲だった、前半身は鷲だった…は!目が合った!僕は思わず目を逸らしてしまった。何なんだろうあの鷲は、何で後半身が馬なんだ?図鑑でも後半身が馬の鳥類は見た事が無い、ヨーロッパもアメリカもそんな奇妙な生物が生息しているなんて聞いた事が無い、つまり新種?でもそんな新種の生物が生息してそうな場所は、ヨーロッパにあったっけ?無いよね、アメリカならサンダーバードとかUMAの話は聞いた事があるけど、もしかしてここは異世界?いやいやいや、異世界は一番あり得ないからね、現代日本で生まれ育った少年が異世界に転生するとか。


 もう一度、窓の方を見るとそれは窓に止まっていた。こっちを見ろ!言っているかのように羽を大きく広げている。鋭く気高さを感じさせる鷲の前半身と力強さを感じさせる後半身が馬!目を逸らさずにはいられない!


 でも、ちゃんと見ると不思議だ。

 鷲に馬の半分を取り付けたという姿は、普通なら不格好に見える筈なのに、綺麗に整っていて誰よりも速く空と大地を駆け抜けそうだと思えてしまう。

 鷲に馬の半身というより、馬の前半分が鷲の様になっている。そうい感じですごくカッコいい、男の子なら誰でも胸が熱くなりそうな位にカッコいい。天空を翔る騎士とか、あれ天空を?翔る?騎士?あれ、確か昔に呼んだ小説に似た動物が居たような……。


「うぅ……」


 やばい!お母さんを起こしちゃった!と思ったら寝返りを打っただけだった。

 振り返ってお母さんを見る。

 生まれて初めて見るお母さんの顔に思わず息を飲んでしまった。


 綺麗だった、赤色の髪は鮮やかな薔薇の様な赤色だった。肌は薄めの褐色、顔立ちは魔性とか困惑的とかそういう表現しか出来ないほどに綺麗で、目はつむっているけど優しい目元が合わさって甘く艶かな女性だった。うん、エロい。いや母親に対してその結論は如何な物かと思うけど、全体的にエロい。仕方が無いのだ、普段はとても穏やかで優しい声色の女性でもっと清純な印象だったから、まさかこんなにも官能的な女性だとは思っていなかったのだ。肌の色と顔の印象がマッチしているからより一層、エロい。異性だけでなく同性もドキ!としてしまう魔性の色香を持つ人だ、だから仕方が無い。


 うん、でもその感想は母親に対して駄目な感想だ。体は女の子でも心は青少年だから仕方が無いでは通らない。

 深呼吸をしよう、すーはー、よし落ち着いた。


 それにしてもあの鷲?馬?確かフランスの騎士道物語で一番有名なドン・キホーテ、いやあれはスペインだ。一二人、真田?思い出せない。喉の辺りまで出て来ているのに思い出せない。うん、やめよう知恵熱が出てしまう。


 それにしてもカッコいいな、器用に前足と後ろ足でバランスを取りながら窓に止まる鷲?馬?は、鷲の部分は褐色の斑点で覆われていて何となくハクトウワシの子供に似ている、馬の部分は軍馬の様に引き締まっていて力強い。

 カッコいいの一言に尽きる。

 飼いたいな、いやその前に飼えるのか?飼っていいのか?お母さんが起きたら聞いてみよう、取り合えずもう一寝入りしよう。

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