3話 五歳菓子と言う名の
「お待たせしました、これが五歳菓子です」
「え――」
これってクリスマスツリーとかの飾りでよく見る丸いあれだよね、いやお菓子と言うからには見た目が似ているだけだと思うけど、ボクの手より大きいし何より食べ物とは思えないくらいの光沢がある。
「大丈夫だよマリア、見た目は奇抜だがよ、中は普通の飴菓子だ」
「だからこんな風に艶があるんですね」
納得、納得……出来るか!!銀箔でも張ってるのかと言うくらい銀色で光ってる飴菓子なんて、包み紙じゃなくて食べる所が銀ギラ銀に光ってるお菓子なんて、アメリカにはあるかもしれないけど日本の一般的なスーパーには無かった。
「さあ、一思いに食べてください。少し力を入れただけで砕ける程度なので警戒しなくても大丈夫ですよ」
ボクが警戒しているのはそこじゃないです!
ええい、男だろうが女だろうが大事なのは度胸だ。
それに五歳菓子は祝い菓子、千歳飴と同じな筈だ。
食べた瞬間にドリアンの可能性は無い、うん大丈夫だ。
よし一口目―――。
「―――?!?!!」
あ、あ、あ、アンモニア!?なにこれ不味い。
アンモニアだよこれ、臭い口の中が爛れる。
それに苦い、酸っぱい、渋い!?
「頑張って全部食べてくださいね、そうじゃないと色々と、来年に持ち越しになるので」
ド根性!!ボクは何事においても全身全霊・粉骨砕身、最後に重要なのは諦めない挫けない心、つまりド根性で乗り越えて来た。
諦めなければなせる。
「ぜ、ぜんうぷっ!はあ…はあ…食べました……」
「本当に全部食べちゃった」
人間不信になりそうです、特にセラス様に対して……。
「わりーわりー、これも通過儀礼なんだよ。帰ったら甘い菓子作ってやるから」
「ううう……じゃあ、シロップたっぷりのパンケーキが食べたい」
「いいぜ、作ってやる、でっかいの作ってやるから」
でもそれよりも前に口の中が、口の中が悲惨な事になっている。
「これを飲んでください、五歳菓子を食べきった子のご褒美ですよ」
「……松脂?」
思わず、アンモニア臭の飴菓子ときたら次は松脂な気がしてというよりこの人なら平然と追い打ちを仕掛けそうだったから聞くと、すごくショックを受けた顔をした。
「本当に、甘いシロップを溶かした牛乳なの、本当よ……」
ああ、悪いことしちゃったかもしれない。
取り合えず、飲もう。
「本当だ甘い、それに口の中がすっきりしました」
さっきまでの口の中に広がっていた名状した難い味が綺麗に無くなって、甘いシロップと牛乳の優しい味わいが広がって行く。
「マリアちゃん、ごめんね。でもこれにはね見た目に騙されてはいけませんよ、という戒めとソルフィア様にこの子はこれを食べられるくらい強い子ですよ、と示す意味合いがるの、だから許して、ね?」
涙目だ、うん悪い事をしてしまった。
セラス様も仕方がなくしたんだから恨むのはお門違いだ。
「大丈夫ですよ、これくらいの事で嫌いなったりません。それに必要な事なのですから気にしないでください」
怒っていないよ、と意思表示の為に笑う。
子供の成長を願う行事は何も子供に嬉しい事をするだけとは限らない、ボクが生前生まれ育った町にも怖いお面を被って子供や大人を棒で叩く風習があった、あれすごく怖かったけど叩かれると風邪や病気にならないと言われていて、保育所や幼稚園では毎年やっていた。
それと同じ事だ、それに恨まれ役を買って出るって思ってるよりも難しい事だ、それが出来るという事はセラス様は少なくとも司祭様より信頼できると思う。
「それじゃあ帰るとするかね」
女将さんがそう言うとボクたち教会を後にして淑女の酒宴に向かって帰り始める。
帰りはアストルフォの背中に乗せてもらって行よりもゆっくりと帰る、初めて乗ったアストルフォの背中はボクが思っていたよりも大きくて力強かった。
それにしても楽しみだな。
帰っておやつの時間にはパンケーキ、リーリエさんはお菓子作りがすごく上手だ。
一つ一つ丁寧に手間の掛かる下処理も省略せずしっかりとしているから出来上がるお菓子はどれも絶品で、一口食べるだけで口の中が幸せになる。
その為にも今日は帰ったらしっかりと掃除をしないといけない。




