7 困ってますじっちゃん
主人公視点です
泣きわめくだけ泣きわめき酸欠気味になり、ちょっとだけ落ち着いてきた。沸騰してた頭がちょっとだけ冷めてきた
変な網みたいなのをかぶせてきた以外は何もしてこないし危害を加えようとするような気配はない
感じがする、たぶん
声が互いに伝わらないのも何とか理解した、納得はしてないけど
息苦しいからゆっくり深呼吸を心がけてみた
膝の間に顔を埋めて呼吸に集中
黙ったまま、聞こえないから勝手にそう思ってたがこっちの様子をうかがっていたおじさん2人が目の前までゆっくりやってきた
かがんできた気配がしたからちょっとだけ顔をあげた
視線が合った瞬間、おじさんがのけぞった
おい…
なんか横の赤毛の人も固まってる
何?そんな変な顔してますか?
日も沈み灯りはランプみたいなのと小規模なキャンプファイヤーだけで薄暗い、その上廃墟
出そうなムードはあるがお化け扱いなのか?
っていうか出るの?出ちゃうのここ?
兄弟には散々に言われてるがじっちゃんばっちゃんや両親は可愛いと言ってくれる、親馬鹿ジジババ馬鹿だけど
まあ、目の前のおじさん達はイケメンだ、海外ドラマで主役楽勝なお顔とスタイル
おじさん呼びはかわいそうかな、お兄さんにしておこう
固まってたお兄さん2人は後ろから何らかの声がけがあったみたいでビクッとしてから動き出した
すみませんねぇ~衝撃的な顔してて
なんか全部じっちゃんに責任転嫁すると決めた上、今すぐどうこうされない様子に私の気分はやさぐれていた
また俯いて、声が出ないのを良いことにブツブツ愚痴る、すると思わずくしゃみが出た
ちょっと冷えてきた、霊感は無いよ…さっきの冷や汗のせいかな
動き出した茶髪のお兄さんが敷物を敷いてくれた、足をふく布も用意してくれた、座れ~みたいなジェスチャーにしたがうと敷物の隅にトレーが置かれた
何か飲み物のカップとスープみたいなのとクラッカー?食べてよいのか?これ大丈夫?
得体の知れない場所で見ず知らずの人に出された物に手を出すのは怖い
よそのお母さんのオニギリ食べれない的なのでは無いよ
落ち着いてきて考えてみたが、怪しすぎる
ここは日本じゃない気がする、外国のどっかというのでも無さそう。中学生の頃にはまったホントの中二病的なライトノベルな展開が頭によぎる
マジか…
じっちゃんは確かにかなり怪しい人だった。やることなすこと魔法みたいで…
今にして思えば、かなり無理やりな事してた気がする。幼い私はまんまと煙に巻かれてた?
思い出そうと記憶をたどる
私は3才頃から小学校低学年までじっちゃん家で過ごした
母は弟を出産後体調を崩ししばらく入退院を繰り返した
父は大学病院の医師で仕事柄夜勤などもあり家で子供の面倒ばかり見れない
兄は小学校に入学したばかりだし、弟は生まれて間もない、母の看病などで母方の祖父母はてんてこ舞いだったので私は父方に預けられた
もともと私はじっちゃんっ子だったから直ぐに馴染んだらしい
じっちゃん家はみかん農家だ、家の建つ山の南側斜面はほぼみかんの木が植えられていた
そのみかんの世話も収穫もじっちゃん1人でやっていた
家の横に建つ倉庫は収穫されたみかんを仕分けたり貯蔵したりする場所だが
たいていいつの間にか終わってた気がする
いつの間にか倉庫にはみかんの段ボール箱が山済みになり
いつの間にか出荷されていた
いつの間にかみかんの下草は刈られ
いつの間にか剪定されて
台風がきてもじっちゃんの山に被害は無かった
電線が切れたり山道が土砂に埋まっても
じっちゃん家は瓦1つ飛ばない
疑いだしたらキリがない、声がけ1つで動いた家具家電も妙にデリケートな匙加減だったような
暑い日寒い日、私の周りだけ常に適温とか…
入る直前の声がけだったのに1分かからない湯船の仕上がりだとか…
否定材料が無いよ~じっちゃん
怪しすぎるよ~じっちゃん
ホントにここドコよ~じっちゃん
じっちゃんの手のひら認識システムが私をここに連れてきたんだよ
実は魔法遣いだったとか?今更、勘弁してよ…
せっかく出してもらったけど手が伸びない
お残しはダメって躾られたけど今回は見逃して
不安と警戒心でお腹いっぱいで食欲ありません
様子を見ていた茶髪のお兄さんが近寄ってきた
トレーを私の方へ少し押す、どうぞって
今度は視線が合っても大丈夫そうだった
その顔からは少し困っている感じがしたが私は首を横に振った
お兄さんはちょっと考えてから戻ってコップを持ってきた
トレーからコップを取り上げ中身を半分自分のコップに移してごくごく飲んだ
中身が半分になったコップをトレーに戻す
あっ…毒味してくれたんだ
大丈夫だよって伝えてくれたんだ
…これはもう飲むしかない…恐る恐る手を伸ばしてコップを持つ
意を決してちょっとだけ舐める
意外に爽やかな味だった、レモンみたいな柑橘系の薄甘い飲み物だ
私がチビチビ飲み始めたのを見て、お兄さんがちょっとホットしたように見えた
うーん…
進まない