5 またか(隊長さん視点)
ちょっとだけ話がつながってきました
思った通りというか、予定よりも遅くに廃村に到着した
出発して日が高くなり気温も上昇し始めたらヨークが遅れ出した。水魔法の遣い手なら体温調節など楽なハズだが度々休みを取りたがる
ハリーに視線を向けても、ほっとけという感じで近寄りもしない。治癒魔法かけてやらないのか?同級生だよな?
気温の高い日中の移動につき合わされて、皆が疲れた頃にやっと目的地に着いた
魔法遣い達には野営の準備を頼むが、ヨークには一応痕跡探しに同行するか訪ねるが休ませてくれと悪い顔色をさらに悪くしている
付いてこられたくなくて治癒しなかったのか
私とハリーで問題の魔法の痕跡を探す
私の魔力は平均くらいだ日常生活と自身の持久力アップや火事場の馬鹿力的な瞬時の怪力に使う程度
ハリーは炎と治癒が使える、どちらもなかなかの腕前だが魔法遣いではなく騎士に成る道に進んだ
お互いに魔力の残滓くらいは感知できる
しかし、妙だ。南軍砦の金の魔法遣いが感知したほどの魔法だ、使えば何か残っていても良いはずだ
「何も感じませんね、この辺りには他に廃村はありませんから場所が違うわけではないでしょうし。あの金の魔法遣いが勘違いするなんて事もないなら……」
「残滓を消したのかもな、となると少し厄介だな…」
残滓を感知出来ないくらいきれいに無くしてしまえる魔法遣いは稀だ、かなりの魔力の持ち主
おそらく騎士団団長クラスか魔法省でも室長クラスの選りすぐりの者だが魔力の強い魔法遣いは国が所在地を逐一把握している
今、こんな所に居るはずは無い
国に属さない強力な魔法遣いとなると他国からの不法侵入となる
やれやれ面倒事は勘弁してほしいが
ひとまず皆の所に戻る、今夜は村の教会跡地に泊まる
小高い丘にあり周囲を見渡せる。屋根はないが馬をつないでおける木々もある
壁のレリーフは崩れ見るかげも無いが微かにモザイクの色タイルが残っていた
確か10年前に廃村になった村だ、頻発するかすかな地震は今日も何度か体験したが、こう揺さぶられてはこのわずかなタイルも直ぐに剥がれ落ちそうだ
野営は主に若い2人が支度してくれたらしい
ノーマンはヨークの補佐だと聞いていたが親しいわけではないようだ義務的なやり取りしかしていない
アーヴィンは人懐っこい性格らしくしきりに我々に話しかけてくる、しっぽがあればブンブン振ってそうだ
ヨークは口だけは達者でろくに動きもせず、ローブのあちこちに高価な魔導具を仕込んでいることばかり主張してくる
もし腕試しに魔法遣いが来ればそれらを発動させる仕掛けだとか
我々を見つけたら腕試しの魔法を遣うどころか逃げると思うがな、普通は
ハリーがヨークに対して感じている一部分を理解した
とにかく今日はもう何事も起こらないで欲しい
そんな時、ゴオっと地鳴りがして今日一番の地震が起こった
全員が体制を低くして身構える。今度こそ壁が崩れるんじゃないか?膝をついた方が良いかもしれない
そして目の前の壁が崩れた、イヤ、消えた!
消えた?
と同時に目の前に人が躓くように現れた瞬間、腰の剣の柄を握るが
相手は子供のようだ、驚いた顔をして少しずつ後ずさりしている
13、4歳の少年は肩までの黒髪に碧い瞳、グレーのシャツに紺のズボンと簡素な服装に裸足だ…黒髪…
次の瞬間ヨークが呪文を唱えた。イヤ、ダメだろ
薄いネットのような物が少年にかぶさり消えた
「ヨーク、おい!何をした?」
「だって青目ですよ、同じ属性なら薄い私が不利です、こんな所に来る魔法遣いは違法性があります、だから先に封じました」
「何を封じた?」
「……呪文です…」
少年はへたり込んでオロオロと周りを見やり、首に手をやって戒めの首輪を外そうとしている
泣き叫んでいるようだが声は聞こえない
「おい…本当に呪文だけを封じたのか?あの少年の声が聞こえないぞ」
「使ったのは呪文封じの魔導具です…」
「学生の頃から、ヨークの使う魔法は少し変なんですよ」
ハリーが言うには、簡単な事は大丈夫だが、試験などになると途端に変になる。魔法が歪になる。水を真上に向けて水柱を作らせれば横に滝になり、氷の壁を作らせれば小山になる、など
高度になればなるほど歪さが増のだそうだ
とにかく私とハリーで呪文は唱えないようになんとかするから解呪しろとヨークに言うと、出来ないと言う
「これは高名な白の魔法遣いの作った魔導具なので私では解呪できません…」
またかっ……と後ろでノーマンが小さく吐き捨てた
またって事は前にもあったんだな
泣き声も聞こえないまま泣き叫ぶ子供をどうすればよいのか、我々の誰も白の属性は無い
事情を聞くことも説明することも出来ない
その上黒髪に深い碧い瞳だ
なすすべなく時間が過ぎる中、誰かの腹の虫がなった……ヨークまたお前か…
次こそは隊長さんの名前を…