表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/65

友達

歩いて王宮へ向かう。

普段二度見されるほどの美少女であったが、普段と違う服を着て化粧をしている今日のグレースは三度見されていた。

「王宮の正面から入る」という事は「王城の正面の跳ね橋から入る」という事である。平民であるグレースには未体験の事だ。


王城の近くでモジモジしていると門番に声をかけられた。

「イシスさんの娘さんだね?話は聞いてるよ。しかし面影あるなぁ新人の頃、君のお父さんにお世話になったんだよ。」思わぬところで父親の話が出た。どうやらグレースは父親似らしい。チッイケメンかよ!


正面扉から王宮に入る。

イシスは「娘が正面扉から来る」と周囲に伝えていたらしい。呼び止められ詰問される事はなかったが、通りがかりの人達から微笑ましく見つめられ、少し居心地が悪かった。

差し入れのパンを侍女の食堂に置き「自由に食べてください」と書置きをした。

予定していた用事も終わり、王女の居室を目指す。私服で王女の部屋へ行くのは何となく心許ない感じだ。イシスはどうして私服で来るように指示したんだろう?

王女の居室をノックして入室の許可を待つ。

イシスが中からドアを開けグレースを見て少しビックリした顔をする。グレースが来る事はわかっていた。だがこんな可愛らしい格好をしているのも、可愛らしい化粧をしているのも予想外だったのだ。

イシスは自分のお洒落や化粧に興味がなかった独身時代と、興味を持つきっかけとなった父親との出会いを思い出し「グレースが好ましい変化をした」と勘違いしたようだ。


イシスに続き王女の居室に入る。イシスはグレースの来訪を王女に教えていなかったらしい。王女は「イシス、どなたがいらっしゃったの?」などと言っている。

グレースを見た王女は一瞬目を見開いた後「ふぇぇぇぇぇぇん」とイシスに抱き着き泣き出した。

グレースはオロオロしながら「私は帰ったほうが良いですか?」とイシスに聞いた。

「違うの!友達が部屋に来てくれるのなんて、生まれて初めてだから・・・うれしくて・・・ふぇぇぇぇぇん!」王女はイシスに抱き着きながらそう言った。


ようやく「正面入り口から私服で来い」と言われた訳がわかった。

今日ここには「王女の友達として来い」という意味なのだ。

裏口から侍女の服装で入って来て、侍女として王女の部屋を訪れていたら、王女は嬉し泣きをしただろうか?王女をあやしながら頭をなでているイシスを見ながら、我が母親ながらどこまで見透かしているのか恐ろしいと思った。


泣き止んだ王女はグレースのことを「可愛い」と言い始めた。「でも素材が良いからもっと可愛くできる。」とイシスと二人で着せ替え人形にした。

「その服あげるから今度遊びに来る時はその服着て来てね、約束よ?」こんなヒラヒラした女の子っぽい服着た事ないし、この服を着て帰らなきゃいけない。グレースの主人格は叫びたかった。

「着替えないと・・・パンを焼かなくちゃいけないし・・・」グレースは言い訳がましく言った。

「今日はパンは焼けないわね。来た時の恰好でも今の恰好でもパンを焼く服装じゃないし。パンを焼く時は着替えを準備した時でないとダメね。姫様それで良いですか?」どうやらイシスは可愛らしい格好のグレースが良いらしい。口を挟んでまでグレースが着替える阻止をした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ