表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/65

因縁

魔王はプルソンに会った時の事を覚えていないという。

何事もなければ「何事もなかった」と言えば良いだけの事である。だがプルソンに会った事すら覚えていない、というのが怪しい。何かしら術をかけられ忘れるよう仕向けられているのではないか、とウェヌスは思った。「魔王様と共に行動し、おかしなところがないか。またおかしなところがあったら私が対応しよう」とウェヌスは考えた。

そんな事を考えていた時、ウェヌスは「次の日の早朝に王国の侍女がパンの焼き方を教えて欲しい、と言っている」と同僚に言われた。

魔王から目が離せないウェヌスではあったが、「プルソンが怪しい動きをしたからそれどころではない」とは言えず、その話を承諾した。


次の日の早朝、グレースは厨房へ向かった、が、そこには何故か勇者パーティがいた。つまり王女と秘書官以外の全員が起きて来てそこにいたのだ。

「敵国の人間と会うっていうのに護衛なしって訳にはいかないだろ」勇者は言った。

「・・・で何でお前らは起きて来たんだ?」勇者はパーティメンバーに聞いた。

「パンの焼き方に興味があったからです」アストレアは目を輝かせながら答えた。

しかし他の勇者パーティは目を合わせずハッキリとした理由を言わずにモゴモゴと何かよくわからない事を言った。それもそのはず他のメンバーはグレースと勇者が二人きりで会うのを阻止しようとしていただけなのだ。


ウェヌスは厨房へ来た。魔王が付いて来たが「付いて来るな」とも言えないし、監視するのに丁度良いし、敵国の人物とは言えグレースは侍女だ、子供とは言え魔王の戦闘能力は相当高い、敵国の侍女に何かされるとは考えにくいだろうと考えそのまま連れて来た。


厨房に来たウェヌスは目を見張った。

なぜかそこには勇者パーティがいたのだ。もちろんパーティメンバーは先代の魔王と戦った時とは入れ替わり、僧侶と勇者以外は見た事がないメンバーだったが。

勇者はウェヌスを、ウェヌスは勇者を覚えていた。幼かったし目隠しされていた魔王は勇者の事を覚えていない。

「ねえウェヌス、急に驚いた顔してどうしたの?」ウェヌスと手をつないでいる魔王が見上げながら言う。

「勇・・・者・・・・。そうだ・・・今・・・来ているんだった・・・」ウェヌスは自分の迂闊さを呪った。どうして侍女と勇者が一緒にいる可能性を考えなかったのだろう?最も魔王に会わせちゃダメな人間ではないか!

その時ウェヌスは「目の前にいる男が勇者である」と認識した魔王が表情を失うのを見逃した。

「この人が勇者・・・お父様の仇・・・」催眠術で操られた魔王は呟くと護身用の短刀を構え、勇者へ向かって突進した。

それを見た勇者は無言でグレースを突き飛ばした。非戦闘員を巻き込まないようにしたのである。

普段であれば攻撃をはじき返す勇者だが、勇者は子供に怪我を負わす事が出来ない。勇者の腹部に短刀を突き刺す魔王を勇者は抱きかかえるような体制になった。

アストレアが勇者に抱きかかえられ動けない魔王を軽くコツンとゲンコツで叩き家事スキル「愛のムチ」で正気に返らせる。

「あ・・・僕は何をやっているのだろう?あぁ・・・」魔王は勇者の夥しい血を見て、意識を失った。


グレースは勇者に「家事能力全般」のスキル「痛いの痛いの飛んでいけ」を勇者にかけた。

「痛いの痛いの飛んでいけ」は育児スキルの中で転んだ子供にかけられる事が多い麻酔スキルである。転んで膝小僧を擦りむいた子供に「痛いの痛いの飛んでいけ!」とスキルをかけると、痛みが和らぎ泣き止む。

だが正直あまり人気はない。理由は「実際に治療する魔法や法力やスキルがあるのに、何が悲しくて傷口に麻酔をかけにゃならんのだ」という意見が多いからである。

だが不人気スキル「痛いの痛いの飛んでいけ」は実は徐々に体力が回復していく勇者の固定スキル「キュアコンディション」と相性が良い。麻酔の効果が切れる頃には魔王に刺された腹部の傷は跡形もなくなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ