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オカルト

例えば「豚は必ず川などの水が流れるところで小便し匂いを消す。だから豚には綺麗好きな一面もある」というのを「豚は綺麗好き」と言い換える。「そういう一面もある」というのを断定するのだから、ゴミ屋敷に住んでいても「几帳面で綺麗好き」である。「いや、そんな事はない」「そんな一面はない」などと言っても「いや、深層心理ではそう思っているはずだ」「本当はそういう人間なんだ」と言われてしまう、これが『的中率100%のトリック』だ。

これは占いや血液型性格判断に利用される。

そういったオカルトが遊びや占いである場合、大きな問題にはならない。

だが、血液型性格判断を政治利用した独裁者がいる。

ナチスドイツのヒットラーである。彼はドイツ人に多い血液型を優秀、ユダヤ人に多い血液型を劣等とし差別を行った。

当然根拠はない。ブラッドタイプハラスメントは差別としてその後定着する。だいたい血液型を四つに分類するのが乱暴なのだ。血液型を四つに分類するのは一昔前に「輸血出来るか否か」の判断を四つに分けていただけで、今はその判断すらもっと細分化されている。

しかしそういったオカルトを利用する権力者は珍しくない。

卑弥呼は鬼道で政治を行っていたというし、諸葛亮孔明は祈りにより東南の風を吹かせたと言う。


「そんなバカな話があるか」と思うような話でも、民衆が信じてさえいればそれは政治利用される。

「魔王が18歳になるまで政治には関わらない。これは星占術により決められた事である」

普通に考えれば「占いで何で大切な事を決めてるんだよ、バカバカしい」という話だが、このオカルトを魔族は信じているのだ。


本当は「人間に育てられた魔王に決定権などを与えたら人間と和睦してしまう」と思われ側近達から決定権を奪われていたのだ。

権力者が子供の間、側近がかわりに政治を行うのは室町幕府の執権政治を行っていた北条氏など珍しい話ではない。

問題は「権力者のかわりに政治を行っていた者が権力を握り、手放さなくなってしまう事」だ。

こうして魔王は傀儡化かいらいかし、全く権力は無くなった。

それどころか魔王は軟禁状態にあり自由に部屋を出る事すら許されなかった。

軟禁された魔王の世話係がウェヌスであった。

だいたい魔王を敬っていたら「魔王に勇者を刺殺させる」なんて危険を冒させるはずがない。


権力を握っていたのが宰相をしていた男爵家のプルソンという男だ。

彼は魔族としては力や体力は低く典型的な文官である。だが猪武者の多い魔族には珍しく悪知恵が働く男で、「主戦派」の中心であった。彼の家は武器製造を行っており、男爵なので地位はそれほどでもないが戦争の特需景気で権力を確固たるものにした、と言われている。なので「勝とうが負けようが戦争が行われていれば懐が潤う」と思っており、現在の休戦状態を快く思っていない。


王女一行は客人の間に通された。その日はすでに遅かったので通された先で夕食を取り、会談は次の日、という事になった。

やけに人間の侍女が多いな、自分たちに合わせて人間の侍女を配置したのかも知れない、などと思いながら夕食を取った。グレースはそこで食べたパンに絶句した。このパンには天然酵母ではなくイースト菌が使用されている、これぞパンだ。「このパンはどこで手に入れたんですか?」と聞くグレースに侍女たちは「魔王付きの侍女がパン作りの名人で彼女に作り方を教わったんです」と答えた。

「パンの焼き方を教えてもらいたいのですが、彼女に会えますか?」グレースは聞いた。

「ここの厨房を使うのは構いません。自由にして下さい。学園国家の来賓の方々は我々が提供する物ではなく食材や調理器具も持参し、調理人も連れて来てここの厨房を使用します。彼女に会えるかどうかは彼女に聞いてみないと何とも言えないのですが・・・おそらく大丈夫だと思います。明日の朝、少し早くになりますが彼女と会えるよう予定を調整しようと思います」


こうしてグレースとウェヌスは顔を合わせる事になったのだ。



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