歴史
魔族議会は「主戦派」「休戦派」「和平派」に別れており、本来、人間との和平を望む者が「和平派」のはずだが、前魔王の側近や、その思想に傾倒している者が「和平派」には集まっていた。前魔王を慕っていた者は前魔王を殺した者達を嫌悪しており、人間と対話するはずが王国を勇者を嫌悪していた。「和平派」と「休戦派」は混じっていたので、本来強硬な態度の鷹派であるはずの「主戦派」が王国との対話窓口であった。考えようによっては「戦争をしようという連中と対話の窓口がある、という事は『戦争は起きない』という事だ」と言える。
しかし政党は時に宗教と結びつきやすい。「主戦派」には「ベルゼブブ信仰」の熱心な宗教の信徒が多かった。
もはや「主戦派」に王女の話を聞いてくれる魔族はほとんどいない。
なので王女は対話する相手がいない。
もちろん全ての派閥と挨拶程度の会談は行うが、以前のような「膝を交えた議論」をする相手がいない、という事だ。
魔族は繁殖力が低く、そのせいで軍勢も少ない。ただ一人ひとりが一騎当千・・・とまではいかないが、五千人で二万人の人間の軍勢を相手に出来ると言われている、いや言われていた。王国軍に本当の一騎当千の兵がいたのだ。彼らは数人で魔王軍の軍勢を蹴散らし王城の王座まで迫ると先代魔王を討ち取り帰っていった。彼らは「勇者とその一行」と言われた。ちょうど人間側は王国と学園国家と仲違いした頃で、魔王軍は魔王が討ち取られたので休戦するタイミングとしては互いにちょうどよかった。なので何かに合意して休戦したわけではなく、依然として一触即発のままである。元々王国と魔族は一触即発であり、開戦の理由も国境沿いの小競り合いであり、何か理由があるわけではない。王国と魔王軍が国境を接しているのも辺境の片田舎であり、王子が赴任した事以外に特筆すべき事はない。常に小競り合いが国境沿線で行われているのではなく国境には深い森林が横たわっており人間も魔族もその森には近づかず、争いは開戦時を除き起こらなかった。王国が屈強の魔王軍の兵士を相手にする時は大勢で少数の兵士を取り囲むという作戦をとる。取り囲む事が出来ない狭い森の中は王国軍にとって不利であった。魔王軍にとっても救援物資、援軍を送るのに森を越えなくてはいけない王国との国境沿いは戦場にふさわしくなかった。双方とも「戦うのは構わないが、ここでは戦いたくない」と思っていた。なので戦場を学園国家内に移そうとしたのがどちらの軍勢であったかはわからない。休戦間際に魔王を討ち取られ、王国国境沿いまで魔王軍が追い詰められ、もう一度戦場になるがその時、学園国家の首相であった男は「痛恨の失言」をする。この男はその後の選挙で失脚するが「自国での戦いではないのにどうして学園国家が支援しなくてはならないのか?」の一言があったからこそ戦争が終わった、という見方もある。