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相性

学園国家の過激派の組織が悪魔を召喚する時にベルゼブブを選んだのには理由がある。

勇者は元魔法使いで魔法はある程度使う事が出来るし、剣に魔法を宿す『魔法剣』の使い手としても有名だ。

しかし苦手分野も存在する。それは「全く法力がない」という事だ。歴代の勇者には法力があったし、簡単な浄化法力や回復法力を使う事が出来た。だが今の勇者は回復法力は使えないし、勇者のアンデッドと出会った場合の対策は「すり潰すか叩き潰す」であり「物理攻撃が効かないはずのアンデッドですら物理攻撃で倒す」というのが勇者の作戦であった。

しかしそれが通用するのは「圧倒的な力の差があるから」だ。

以前勇者は聞かれた。「勇者の物理攻撃が通じないくらい強いアンデッドが存在したら?」

勇者は笑いながら「弱いからアンデッドとして術者に利用されるんだ。アンデッドで強いっていってもリッチかアンデッドドラゴンくらいだろ?すり潰すくらいワケないぜ」と答えた。

確かに勇者のアンデッド対策に穴はないだろう。だが「アンデッドと同じ物理攻撃耐性、魔法耐性があり、弱点属性が法力」である悪魔が存在する。それが「蝿の王・糞の王」と呼ばれる大悪魔ベルゼブブである。

もちろん勇者パーティには法力を得意とする僧侶が存在する。当然ベルゼブブを呼び出す時には勇者と僧侶を引き離す策は考えられている。

悪魔を呼び出すのは呪術師の仕事であるが、七つの大罪を司る悪魔の内「暴食の罪」を司るベルゼブブを呼び出す一方で、「怠惰の罪」を司るベルフェゴールを呼び出し、僧侶に対応させるのだ。

ベルフェゴールは疫病により二十四万人の命を奪ったと言われ、疫病を引き起こす力があると言われている。

疫病に対応出来るのは一行の中で僧侶だけであり、自ら僧侶は対応を申し出るであろう。

そうすれば勇者と僧侶を引き離す事は出来る。

自国の国民が疫病で苦しむ、場合によっては命を落とすという事に対し「革命に犠牲は付き物だ」などと過激派の人々は考えていた。まさにテロリストの思考である。


学園国家は共和制だ。国の首長は選挙によって選ばれている。

従って王城という物は存在しない。外国から来賓が来た際には議会もある図書館へ案内される。

勇者パーティに守られた王国の王女ヘラも図書館に案内された。

案内をしたのが家政科の学生、グレースの後輩だ。

勇者は自分の目を疑った。今まで生きてきた中で『家事能力全般』を持っている人物はグレースとアストレアだけだったのである。それなのにこの案内の少女は何故か『家事能力全般』を持っていた。

家事能力だけなら侍女は必ず持っているし、主婦でも持っている人物は珍しくない。だが『商人能力全般』にしても『武道家能力全般』にしても、家事能力のみならず『能力全般』を持っている人物はそうそういない、というのが世間一般の常識であったし、勇者もそう思っていた・・・が、この場にはグレースとアストレアと案内の少女の三人が『家事能力全般』を持っていた。

「君、名前は何て言うんだい?」と勇者が案内の少女に聞く。

「はあ、エイラと申します」少女は「何で名前を聞くんだろ?」というように首をかしげながら答えた。

実は日本にいた時、グレースとアストレアとエイラの中のオッサンは同じ町内会の同じゴミ捨て場で、顔を合わせると挨拶をした間柄であったが、今となっては知る由もない。


「何やら外が騒がしいみたいだが、エイラは何か聞いているか?」と勇者は聞いた。

「何やら城下町で謎の疫病が流行り始めているみたいです」表情を曇らせたエイラが答える、本当は案内役どころではないのだろう。

勇者は僧侶に目で合図し、意図を読み取った僧侶は集団を一人で離れ城下町へと向かった。


こうして過激派の思惑通り、勇者と僧侶は引き離された。

一行が進む先は、ベルゼブブを呼び出す魔法陣のある部屋だ。





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