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それぞれの思惑

数年前まで数百人という単位で学園都市に学生が派遣されていた。

それが王国と学園都市の関係悪化に伴い毎年派遣者は減り続け、最後に派遣された学生はグレースを含め7名であった。

グレースも学園都市に行く予定ではなかったが「料理人になれないなら家政科のある学校に入りたい」と希望し、家政科のある学校が王国内になかったため止む無く学園国家に行くことになったのだ。


数か月前まで学園国家に住んでいた者は王国内には7人しかいないし、侍女の中にはグレースしかいない。

なので王宮にいる者の中で一番グレースが学園都市について詳しい。

ヘラが学園都市へ行く事になったのだ、グレースもこの学園都市行きのメンバーに当然選ばれる。

ヘラが選ばなくても学園国家行きに最も王国内で学園都市に詳しい侍女であるグレースは選ばれただろう。


王国と学園国家の友好状態はあまり良くない。なので護衛には力を入れる。

ヘラの護衛には周囲の推薦とヘラの希望もあり、勇者とそのパーティが選ばれた。

周囲の思惑は「これを期に、勇者と王女が付き合い始めれば良い」と思っており、

ヘラの思惑は「これを期に、グレースと勇者が付き合い始めれば良い」と思っていた。

そんな周囲の思惑を何も知らないグレースは、学園国家行きを「王女とピクニックの延長」くらいに思っており、嬉々としてサンドウィッチ用のパンを焼いていた。

グレースの頭には「今度こそヘラ様にサンドウィッチを食べてもらおう。無理でも勇者パーティは食べてくれるだろう」という事しかなかった。


そして学園国家行きの日を迎えた。

学園国家に向かうメンバーは全部で10名。

馬車に乗るメンバーは王女と侍女二人、グレースとイシスだ。それとヘラの秘書官を務める女性、それに最近勇者パーティに加わったというアストレアという冒険メイドが馬車の御者をつとめていた。

馬車を取り囲むように、騎乗した勇者パーティのメンバーが配置されている。

先行し馬車を先導する形を取っている二人が勇者と武道家の少女で「この二人がパーティの前衛なんだろうなあ」と感じる。

武道家の少女は武者修行中に勇者と出逢った。少女は生まれて初めての惨敗を勇者に喫する。「いつでも挑戦は受け付ける。そうだ、いつでも挑戦するためには一緒に行動した方が良いな。俺のパーティに入らないか?」と勇者に言われ今にいたる。勇者に惚れている。

勇者はオールマイティタイプであり、前衛タイプではない。前衛は武道家の少女一人という事で「ちょっと前衛がこころもとないんじゃないか?」と思うが、最近までいた戦士が不慮の事故で命を落としたらしい。不慮の事故と言っても寝惚けてトイレで足を滑らせて頭を打った、というマヌケなものなのだが。

勇者は戦士が抜けた前衛の穴を埋めるため前衛に入った・・・のだが、元々「レオン前に出過ぎ。前衛じゃないんだから」としょっちゅう言われていたので特に何も変わっていない。

そして馬車の後で後方を注意深く警戒しているのが、シーフの少女だ。元々コソドロで勇者の懐から財布をすろうとしていたのだが「ここまで俺の懐に入ったヤツは初めてだ。俺のパーティに入らないか?」と勧誘を受け勇者パーティに入った。勇者に惚れている。

馬車の左右にいるのが僧侶と魔法使いの少女だ。

馬車の左側にいるパーティの最古参である僧侶の少女はまだ子供の頃、魔族との小競合いに駆り出され衛生兵をしていた時、勇者に出会った。

怪我をしていた魔族の少女を治療しようとして周りから糾弾されていた時「怪我人に人間も魔族もあるか!」と庇ってくれたのが若き日の勇者だ。教会に勇者が訪れ再会した時、「ついていかせて欲しい。恩返ししたい」と申し出て今に至る。勇者に惚れている。

馬車の右側にいる魔法使いの少女にとって、勇者は同門の兄弟子である。バリバリの直接戦闘を得意としていた勇者が昔、魔法使い志望であったと知る数少ない人間である少女は、昔からレオンをライバル視していた。預言に従い勇者になったレオンは魔法使いの少女にとっては「勝ち逃げした」許しがたい存在である。「俺は逃げも隠れもしない。何時なんどき誰の挑戦でも受ける。そうだ、俺と行動すれば挑戦しやすいぞ」と言われ今に至る。勇者に惚れている。


こうして勇者以外は全員が女の集団は学園国家を目指したのである。

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