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外伝 確執

『いらないスキルTOP5』五年連続ナンバーワンは農業スキルの『ヒヨコ雄雌見極め』である。

「このスキルは家畜を飼っている農家では必要なんじゃないか?」「多くの人がそのスキルが必要ないだけで役に立つスキルなんじゃないか?」「あくまで『いらないスキル』であって『役に立たないスキル』じゃないんだからこのままで良いだろう」など、侃々諤々の議論が繰り広げられたが、議長ナアホナーの「一番役に立たないのはこのランキングだ。このランキングについて議論するほどバカらしい事はない」という鶴の一声によりランキングの現状維持が決まった。決まったと同時に「それを言ったらおしまいだ」「もうアイツを議長にするのはやめよう」という動きがあったので来年以降のランキングがどうなるかは未定だ。

この『いらないスキルナンバーワン』である『ヒヨコの雄雌見極め』をそこに住んでいる住人全員が持っている区画が存在する。

肥沃な酪農地帯、学園国家に属する農業地帯である。

昔その農業地帯は王国の領土であった。

魔族と交戦状態であった時代、農家の男手は頻繁に徴兵された。農地は荒れ果て、収穫どころではなかったにもかかわらず「特別徴収」という名目で農家には重い税が課せられた。

「生きていけない、このままでは干上がってしまう」と泣きついたのが、当時国家と呼ばれなかった「学園」である。

学園は各国からの寄付で運営されており、各国から広く生徒を受け入れていた。今でも王国以外から広く生徒と寄付を受け入れてはいるが。

学園は農家の人々と領土を受け入れ、この時初めて「国家」を名乗った。

王国は学園国家に対し抗議文を送る。しかし学園の解答は「農業地帯の人々が学園に通えないほど貧している現状」や「国民を護るかわりに税の徴収と徴兵を行うはずなのに、それらは国民を護るどころか国民を餓死させている。最早王国は農業地帯を統治していない。だから農民たちの要請で学園は農業地帯を統治したのだ」と主張したのだ。

国際世論は学園国家に味方したので、渋々王国は農業地帯を学園国家に明け渡した。


隣り合わせの国とは仲が悪いものである。

王国と学園国家も元々何かと摩擦があった。

しかし表立っては大きな対立はなかったし、つい三年前まで王国は生徒を学園国家に送り込んでいた。その理由に『共通の敵』があった。

魔王軍と戦う時、王国と学園国家は共闘した。

その共闘が二国間の亀裂を決定的にした。

学園国家は軍隊を持っていないし、兵役が存在しない。戦場になった学園国家の国境付近で魔王軍と戦ったのは王国軍であった。

そのかわり学園国家は費用、兵糧などを全て負担した。

学園国家の領土内で王国軍が戦っている時は良かった。

戦場を王国の領内に移した時「何で費用と兵糧が学園持ちなの?学園関係ないじゃん」と学園国家は主張した。「そんな事言ったら王国軍は学園国家の領内で戦う必要なかったじゃん」と王国は主張した。

議論は紛糾し、「もうやってられん」と王国は魔王軍と休戦条約を結ぶ。この条約に学園国家は参加していない。つまり、学園国家は未だに魔王軍と交戦状態なのだ。

学園国家は慌てて職業軍人を要請し傭兵部隊を雇い入れた。それと同時に自国民しか入学出来ない『軍学校』を設立した。

王国の言い分としては「王国を戦わせようとしてただけで軍隊持とうと思えば持てるんじゃん」と学園国家に反感を持ち、学園国家の言い分としては「何で勝手に条約結んでるんだよ!何で学園国家は蚊帳の外なんだよ!」と反感を持った。


今から三年前に「今いる王国出身の生徒が卒業したら、今後一切、王国から生徒を受け入れない」と学園国家は王国との国交断絶を宣言した。


その最後の生徒の一人がグレースなのである。



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