外伝 フレイヤとブリュンヒルデのおしごと
都会に疲れた。
仕事に疲れた。
人間関係に疲れた。
田舎のスローライフに憧れる。
田舎の和気あいあいとした人間関係に憧れる。
若い時に貯めた金で田舎に空き家と耕す人がいなくなった農地を買い、仕事を辞めてそこに移り住んだ。
元々それほど金を持っていた訳ではないが、懐が一気に寂しくなった。
あとは当面の生活費と、農業をやる費用しかない。
「田舎の方が保守的で封建的で都会から来た人に心を閉ざすに決まってるじゃないですか、アホですね~。あ、もしかして町内会費とか自治会費を引っ越して来たその日に求められるまま払っちゃったりします?あちゃー・・・払っちゃいましたか。あなたがお金を払った町内会では引っ越してきた人を平気で『外様』って言って仲間外れにしてますよ~。祭りの時、神輿に肩すら入れさせないクセにゴミ拾いには参加させる、会費での酒盛りには金は払わせても参加はさせない、それが『外様』の扱いじゃないですか~。町内会に所属しない人が問題になってますけど、もしかして町内会側が無罪だと思ってるんですか~?あなたは地元の人に指示されて崖の近くを掃除してたんだけど、足元が崩れて命を落としたって訳ですね。もしかして若い人は危険なところを掃除するものだ、って思ってました?あなたと同い年の地元の人らはくっちゃべりながらチンチラしてますよ~、本当にお人好しのアホタレですね~。まあ、あなたが生まれ変わるところは、あなたが引っ越したところよりも田舎ですからね~。勝手にスローライフを送れば良いんじゃないですか~?」
若い女神がペラペラしゃべっている。それをたしなめるように先輩の女神が言う。
「少し口が悪いわよ、ブリュンヒルデ」
「そんな事言いましてもフレイヤ様~。こんなコロコロ騙されちゃうヤツ、何回生まれ変わらせても何回も騙されて死ぬだけですよ~」
「騙されやすいから、私の生まれ変わりの条件に文句を言わないんじゃない!え?あ~、何も言ってませんよ?こっちの話です。あなたも異世界でスローライフをエンジョイしませんか?空気はきれいだし、自然は一杯だし、何より人々は素直でスレていない!」
「それ以外に良いとこないですけどね~電気も水道も通ってないですからね~(ボソッ)」
「ちょっとした変化はありますが、新しい環境に変化は付き物です!」
「ちょっと女の子に変わるだけですけどね~(ボソッ)」
「ブリュンヒルデ!何か私に恨みでもあるの!?」
「いいえ、滅相もありません。ジークフリートと結婚した時にフレイヤ様だけがお祝いをくれなかったけど、それは何も関係ありません」
「たく・・・そんな事根に持ってたなんて・・・。いえ何でもないんです。あなたは学園国家の14歳の学生に転生します。ではスローライフを楽しんで下さいね!」
「でも本当に良いんですか?王国と学園国家の停戦条約って、今の国王の在任中のみ有効なんですよね?噂ではもうすぐ国王が変わるって話ですけど・・・もうすぐ戦争が始まるのにスローライフなんて送れるんですか?」