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企み

まだ正妻になると思われていた頃、ネメシスの母親を当時王子だった国王が肖像画に描かせている。

今、ネメシスが持っている肖像画には最も幸せだった時代のネメシスの母親が微笑んでいる。

その肖像画を一瞬凝視したグレースは部屋のカーテンとベッドのシーツを外し、裁断し始めた。

「何をしているの?」とネメシスが聞こうとしたが聞く暇もなく、肖像画のネメシスの母親が着ているドレスが縫いあがった、しかもあつらえたようにネメシスのサイズにピッタリだ。

いくら手先が器用でも何の目印もなく布を切ったり縫ったりしてドレスが作れるわけがない。型紙を使用しないで服を縫いあげる家事スキル『パターンイメージ』が発動していたのは言うまでもない。

ネメシスのドレスの着付けをグレースとイシスが素早く行うと、イシスがネメシスを肖像画の通りのメイクと髪型にし始めた。メイクとヘアメイクにはもう少し時間がかかるようだし、グレースは別の準備をする事にした。


グレースはヘラの居室を訪れた。

グレースの無事と再会を喜んだヘラにグレースが経緯を説明する。当然日本に行った事は伏せておいてだが、説明しようにも自分でもわけがわからないし、説明のしようがないのだ。

そして、成り行きとはいえヘラの王位継承のライバル、ネメシスに手を貸す事になった事を詫びた。

「別に良いよ、私別に女王になりたくないし。それよりイシスを助けてあげて!ねぇ、何か私に出来る事はないかしら?イシスのため、ネメシスお姉さまのためなら何でもするわよ?」

ヘラに協力を頼もうとは思ってはいたが、ヘラから協力を申し出てくるとは思わなかった。


「国王は私の焼いたパンを食べたいと希望されています。そのパンがヘラ様と一緒に焼いたパンであれば国王は必ずヘラ様との会食の呼び出しに応じられるでしょう。その場に同席させたい方がいらっしゃるのですが・・・」察しの良いヘラは意図に気付いたようだ。

「任せておいて!お父様を『グレースとパンを焼くから、夕食を一緒に食べて欲しい』って呼び出せば良いのね!」ヘラはこれからイタズラをするように企みの笑顔を浮かべた。

「そうと決まれば、これからたくさんパンを焼きましょう!城中にパンを蒔くんです。『会食でしかパンが食べれない』って人が集まるんでは意味がありません。会食の場は親子水入らずで本音を語れる場でないと・・・」グレースが言うと、ヘラは楽しそうに頷いた。


こうして準備は着々と進んでいった。

説明する時間がなかったとはいえ、ネメシスと老婆はこれから何が起きるのか知る由もない。


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