外伝 スキル研究
グレースは日本滞在中、家計簿をつけていた。
そして使った食材を事細かく、ノートに書きだしていた。
その書き出しにはこう記されていた。
「大事なお金を使ってしまい申し訳ありません。出来るだけ節約を心がけましたが、それでも食材とお金を使わざるを得ませんでした。」
そこには自分がグレースという名前である事、美咲の体をかりている事、美咲の家に住んでいる事、異世界から来た事、などが書かれていた。
そして最後はこうしめられていた。
「返す機会がありましたら、色を付けて返させていただきます。ないとは思いますが。グレース」
最初、美咲は信じていなかった。「これが新しい泥棒の手口かも」とすら思った。
というのも「異世界から来たグレースが何でそんな流ちょうな日本語が書けるのか?」と思ったのだ。
この時美咲はグレースの中に日本から来たオッサンがいる事を知らない。グレースも「一度に全ての事を信じてもらう事は難しい」とその事には触れていなかった。
そんな美咲がひょんなところから「異世界」という単語を耳にする。
美咲と陽菜は家政部に所属している。料理が趣味の美咲は家政部に望んで入ったが、陽菜は「入りたい部活もないし美咲に誘われたし」という理由で家政部に所属していた。
美咲の所属している家政部は付近の学校で有名であった。家政部には美咲、陽菜、そして部長の那美の三人が所属していた。この三人はこの学校のみならず、この地域を代表する美少女三人であった。
ある日、那美は部の備品を買いに部員を何人か連れ繁華街を訪れた。その部員の中には美咲と陽菜がいた。
そこで那美は家事スキルの中では実用性が高く人気がある買い物スキル『ディスカウント プリーズ』を美咲が発動させるのを目撃した。
那美は美咲に「あなた異世界から来たの!?」と尋ねた。
美咲は「グレースという少女に体を貸したらいつの間にか『家事能力全般』のスキルに目覚めていたんです」と那美に説明した。
那美の中の戦士はかつてパーティメンバーの勇者から「グレースという少女がドラゴンを一撃で倒した」と聞いていた。
その話を聞いた那美と美咲はグレースの事を「ゴリラのような体毛の濃い大女」だと思った。顔はクラスにいるアマゾネスのような少女に似ているだろう、と何故か確信した。
そんな大女に体を使われていたという事実に美咲は身震いした。その大女が陽菜を頭から食べなかったのは奇跡だと神に感謝した。
こうして『家事能力全般』のスキルを持つ少女が二人顔を合わせた。
二人はスキル研究を行う事となる。
二人で繰り出す『合体スキル』は家事スキルのみならず他のスキルの保持者からも『合体スキル産みの両親』と呼ばれる事となる。那美は『産みの父』と呼ばれている事に対し、「何で母じゃなくて父なのか?納得出来ない」と言っていたらしいが、それは別の話。