ショート外伝 帰還前
アパートへ戻って来た。
ストッキングを脱ぐ。
ストッキングは美咲の持物だ、伝線させてはいけない。
丁寧にネットに入れ洗濯機に入れる。
素足のまま、コタツに入る。
素足でコタツはデンジャラスではなかろうか?
熱が出るところに素足で触ったら・・・
触った「熱っ!」別に少し熱いだけで何ともなかった。
忘れていた。買い物に行かなくてはいけない。
冷蔵庫の中の食材を使いきるわけにもいかないし、足りない食材を買いたさなくてはいけない。
もう一度ストッキングを履くか?面倒くさい。
じゃあ、素足で出掛けるか?やめてくれ、コタツに入った後だ、余計に寒い。
その時俺は中学生時代、スカートの下にジャージを履いていた女の子たちを思い出した。
何故忘れていたのだろう?最初からスカートの下にジャージを履けば「スカートを履きたい」グレースの本人格と「ズボンを履きたい」俺の両方の希望が通ったのではないか!しかもあたたかい。
そうと決まれば善は急げだ、スカートの下に学校指定のジャージを履いた。
グレースの本人格が「本当にこの格好はおかしくないのか?これで外を歩いて大丈夫なのか?」と聞いてくる。
「大丈夫だ。日本では学生はこの格好をするモンだ。そして今の美咲は学生だ。この格好で少しも変ではない。」俺は本人格にそう言った。
厳密に言うと変だ。「学生が寒い日に学生服のスカートの下にジャージを履く事がある」というだけであって、「私服のスカートの下にジャージなんて履く訳がない、つーかスカート脱げば良いじゃねーか」という話である。そんな格好で外を出歩いたらアホだと思われる。
まさに買い物に出掛けようとしていた時、異世界でイシスに危機が迫り、スキル『母を訪ねて○千里』が発動し、グレースが異世界へ帰り、眠っていた美咲の人格が目を醒ました。
「あれ?私学校で授業中に居眠りしてたはずなのに、何で家の玄関でこんなアホみたいな格好してるんだろう?もしかして寝ぼけてこの格好で出掛けようとしてたのかな?」