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ズッ友

城全体の掃除を10分で終わらせるのだ。

ワンルームのアパートの掃除など一瞬で終わった。


陽菜は掃除をしながら少しづつ打ち解けるつもりだったようだ。

そんな事は知らない美咲は空気を読まずに一瞬で掃除を終わらせてしまった。

「この気まずい空気どうすんのよ」小声で陽菜が愚痴る。


中島さんが父親と無言で向かい合っている。

「ほら、何かお父さんに作って来たんじゃないの?」陽菜が中島さんに助け船を出す。

中島さんが父親の前に弁当ジャーを置き、「おでん好きだったでしょう?作ってきたの」と言う。

皿を出しおでんを盛り付ける。

「ウィンナーを入れるようになったのは子供が喜ぶからなんだけどな」父親が苦笑しながら言う。

父親がおでんを食べた、笑顔も見せた、口も開いた、込み入った話をするにはあと一歩足りない。何が足りないのかわからないまま、このままお開きになるのかと思われたその時、美咲にスキルが発動した。

発動したスキルの名は『話せばわかる』という。コミュニケーションスキルで「家族のすれ違いを修復するために頑なな家族二人の本音を引き出す」という効果がある。

このスキルのすごいところが二つある。

スキルの種類は『戦闘スキル』『補助スキル』『回復スキル』『移動スキル』などがあるが、『コミュニケーションスキル』というのは『話せばわかる』以外には存在しないのだ。

もう一つの凄い点とはこのスキルが美咲が生み出したオリジナルスキルであるという点だ。

オリジナルである証拠として『話せばわかる』の用法が間違っている。本当に『話せばわかる』と言ったのは元首相犬養毅いぬかいつよしで、青年将校に暗殺される瞬間に発したという言葉が『話せばわかる』だが、美咲の勉強不足がこのスキルを産んだのだ。眠っている美咲の人格は自分に『家事能力全般』のスキルが目覚めた事と、勉強不足をさらした事を知らない。


普通人間にはプライドがあり、プライドが邪魔し本音で話すのは難しい。『話せばわかる』は二人の家族に本音で語り合ってもらうというスキルだ。

「恭子、大きくなったな。ますますお母さんにそっくりになってきた」父親が中島さんに言う。恭子って名前だったのか、知らなかった。

「お父さん何で私を置いて出て行ったの?」これは中島さんが聞きたくて聞けなかった事だ。やはりスキルで素直になっているようだ。

「恭子が大きくなるにつれてどんどんお母さんに似てきた。顔も声も口癖も仕草も何もかも・・・それが辛くて・・・家族の事は一瞬たりとも忘れた事はない」父親は中島さんの手を握りながら呟いた。


美咲は陽菜に押され父親のアパートを退出した。

「こういうのは親子二人で話せば良いんだよ。ただの勘違い、すれ違いで、お互いを想い合ってる二人なんだから」陽菜が微笑みながら言う。

陽菜と美咲の最寄り駅は違う。美咲が電車から降り、陽菜が電車に残る

電車から降りようとした美咲に陽菜が声をかける。

「私たち、ズッ友だよね?ごめん、何か美咲が遠い所に行っちゃって二度と会えない気がしたから・・・また月曜日に・・・」

返事をする前に電車のドアが閉まる。


「『ズッ友』の意味教えなくても良いか?意味は知らないが、だいたいの想像はつくぞ?」俺はグレースの本人格に問いかけた。

「教えなくても良い。意味はわからなくても、だいたいの想像はつく気がする」本人格はそう答えた。


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