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パスタ

「お姉ちゃんの事で何か言われるのは辛いけどしょうがないと思ってる。お姉ちゃんが法の裁きを受けるのも。今の願いはお父さんに『何で出て行ったの?何で私を守ってくれないの?』って聞きたい、それだけ。『一人でこんな気持ちを抱えきれない』って思いもあったけど今は大丈夫、あなたたちが話を聞いてくれたから・・・」中島さんは身の上を訥々と語った。

陽菜さんがアッカラカンと言う。「自分の気持ちに気付いてるなら、あとはお父さんに気持ちを聞くだけだね!でも覚悟が必要だよ?人の気持ちなんてわかんないし、お父さんの考えている事が残酷な現実を加速させるかも知れないし・・・」

それを怖がって父親の気持ちを今まで確認出来なかったのだ、しばらく下を向いた中島さんは決心したように上を向いた。

「大丈夫、この残酷な日々に意味があったとするなら、私が『打たれ強くなった』て事だけだから。お父さんに何を言われても耐える覚悟は出来てる」中島さんは力強く答えた。

次の日の放課後、父親の住む隣街に中島さんは行く事になった。

こういう時は邪魔者はいない方が良いと思い、美咲と陽菜は着いていかないつもりだったが、「一人で行くのはやっぱり不安だ」と中島さんに言われ、同行する事になった。


その日の夜、美咲は生徒手帳に書いてある住所のアパートに寝泊まりした。その部屋は美咲の部屋らしく、ポケットに入っていたシリンダー錠であっさりと解錠した。この物騒な世の中で、シリンダー錠だけで女の子一人が住む部屋のセキュリティは本当に大丈夫なのか?という問題はあるが、私立の女子高に通わせるだけでも費用的に大変なのに、そのうえその子が一人暮らしをするとなったら、このオンボロアパートでもしょうがないのかもしれない。

部屋に入るとまず目に飛び込んできたのは、コルクボードに飾られているたくさんの写真だった。

赤ん坊と一緒に幸せそうな一組の男女が写っている。しかし男性が写っている写真はそれ一枚だ。七五三の写真も、小学校の入学式の写真も美咲らしき女の子と母親らしき女性が二人で写真に写っている。そして母親らしき女性はどことなくイシスに面影が似ていた。グレースの本人格は写真に写っている男性から目が放せないようで、何度もその写真を見ている。本人格が男性に興味を示すのは珍しい事だが、俺はそれを茶化す気にはなれず好きにさせておいた。

美咲は自炊をしていたようだ。冷蔵庫を開けると沢山食材が出てきた。ポケットの中にお金は少しは入っていたが、美咲の金で無駄使いは出来ない。

乾物庫にあったパスタの麺で、ナポリタンを作ろうと思う。

スパゲティは何よりも安上がりだ。しかも調理方法が豊富で、野菜と組み合わせれば栄養バランスが片寄る事もない。

オススメは焼きそばをスパゲティの麺で作る事。安上がりで焼きそばとして充分に美味しい。

異世界でもパスタは作れるようなので今度スパゲティ作りに挑戦しよう、異世界に帰れればの話だが。

夜遅くに美咲の母親からスマホに連絡があった。

いつもの電話が今日はなかったらしい。早く美咲にこの身体を返さなきゃ、それには早く異世界に帰らなきゃいけないな、と思った。


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