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マヨネーズ

母親と一緒の時間に目を覚ます。

母親は朝四時に目を覚ましていた

母親と言っても生まれ変わる前の自分より年下だ。

そんな娘さんに朝食の準備を任せて、寝ているのも良心が痛む。

「今日から朝食の準備は私もやるよ」と母親に言う。

二人で朝食の準備をするとすぐ終わってしまい時間が余ってしまった。

何となくデザートで食べたリンゴの皮と芯を使って天然酵母を作る事にした。

いや、こちらの世界へ来て思ったんだ「パンが不味い」って。

何をしてるか知らないはずだけど、イシスは何も言って来ない。

娘に全幅の信頼を置いているのだろう。男性関係以外は。

何も言わないはずのイシスはグレースの男性関係にだけ口を出してきた。

グレースが男性と疎遠なのも奥手なのも自分のせいだとイシスは思っていたのだ。


時間になり宮廷に向かう事になった。

イシスと共に王宮へ向かって歩く。

裏口から王宮に入り昨日と同じように昨日朝礼が行われた侍女の詰所に入る。

「昨日の賄いを作った新人ってグレースさんの事ですよね?王女様がお呼びです。」

中間勤務の侍女から呼び出しの連絡を受ける。

やばい怒られるのかな?いくらスパイスが手に入りやすいとはいえ、景気よく使いすぎたか。賄いってよくわかんないんだよね、余り物だけじゃ料理作れない事もあるし、だからと言って新しい食材ってどれだけ使って良いんだろ?まあ怒られたら素直に謝ろう。


王女付きの侍女と一緒に王女の部屋へ行く。

王女付きの侍女ってイシスなんだ、家で話した事ないから知らなかった。


王女の部屋に入る。

土下座なら自信がある。宇宙で一番美しいジャパニーズ土下座を決める事が出来る。

ドアをノックして開ける。「失礼します」


グレースの美が原石の美だとすると王女の美は洗練された宝石の美であった。

部屋に入った途端、グレースは目前の金髪碧眼の少女に目を奪われた。

王女はグレースに駆け寄り、手を握った。

「昨日の賄いを作ったのはあなたね!食が細い私に爺やが侍女たちの賄いを持ってきてくれたの!もう一度アレを作ってくれるかしら!?」王女は興奮しながらそう言った。

「申し訳ありません。余り物の組み合わせで味付けを整えながら作るのが賄いです。同じ物が同じ数量余らないと、同じ味は再現不可能なんです。」グレースは申し訳なさそうに王女に言った。

「そっか…」王女は残念そうにうつ向いた。

「その代わりと言っては何ですが、今日の昼食はグレースが作ります。」イシスは落ち込む王女に言った。


グレースはイシスを改めて尊敬した。王女の食事を入って二日目の侍女に作らせて良い訳がない。それを決定出来るのは本来、王本人だけだろう。それを一侍女であるイシスが提案した時、決定が下るのは本当なら一週間以上後だろう。だが、イシスの決定に対し文句を言う者はいない。誰もが「イシスの言う事なら間違いがないだろうし、何か問題があったとしても、イシス以外には責任は取れないだろう」と思っているのだ。スキルのおかげで作業速度や仕上がりはイシスよりグレースの方が上だろう。しかし積み上げてきた信頼や人間性はグレースはイシスに追い付く事が出来るのだろうか?


厨房に入り何を作ろうか考える。賄いとの違いは使える食材が段違いに多い事だ。

若いんだから肉は食わなきゃいかん。でも美容に気を使ってるんなら鶏肉かな?

確か「食が細い」みたいな事言ってた気がする。

食が細い人に食欲出させるには「酸っぱさ」クエン酸かな?

レモンみたいな柑橘類か梅干し・・・梅干しはこの世界にはなさそうだ。「鶏のササミの梅肉和え」とかすごい美味しそうなのに・・・そのうち自家製梅干しを作ろう。しょうがないから今回は「鶏の竜田揚げのレモン添え、自家製マヨネーズとともに」で良いか。

こちらの世界の食品油ってオリーブオイルっぽいんだけど、揚げ物って出来るよね?マヨネーズでも油使うんだけど、それは多分大丈夫。サラダ油じゃなくてオリーブオイルでもマヨネーズ出来たし。問題は酢だよ。酢の代りがワインビネガーで大丈夫なのかな?あと入る物は塩と胡椒か。特に問題はないでしょ。


厨房で調理をしながら「軽く30人前は作ってるけど、これで『食が細い』なんて言うんだろうか?そういや王公貴族がどれだけ食べるか知らないし、こんなモンかも知れない」などと考えていた。

その後も「へー片栗粉じゃなくてコーンスターチ使うと、パーティーなバーレルに入ってる鶏肉みたいになるんだ」など、細かい発見もありつつ王女の昼御飯が完成した。


王女はすごく喜んで、出された食事を完食した。

王女に出された食事は少しだけで「あれ?作った分どこいっちゃったのかな?」と思ったら、実は王族の食事全てをグレースは作っていたらしい。

マヨネーズの作り方をグレースは厨房のコックに教えたが、王族の間でマヨネーズブームが起きていた事をグレースは知らない。

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