外伝 輪廻転生概論
必修でなければ出ない授業だ。
だいたい「眠りの神ヒュプノス」に授業をさせる事が間違っている。
「・・・であるからして」
クラスの大半が寝ている中、かまわず先生は授業を進めている。
僕も賭けに負けて「ノート係」にならなければ寝たのに。
眠気をこらえて黒板の内容をノートに書き写す。あとでノートを寝ている連中に回し読みさせなくてはならない。
「死んでも存在は残るのである。死んでもすぐには忘れられないようにの。」
先生が子守唄のように授業を続ける。
「同じ存在は同じ世界で存在する事は出来ん。生まれ変わりは他の並行世界で行われるのである。」
先生が図解して説明するが卑猥なマークにしかみえない、これをノートに書く事になるとは・・・僕は小学生か!
僕は眠気覚ましに手を挙げて質問することにした。
「先生は同じ存在とおっしゃられましたが、同じ存在などいるのですか?生まれた時は同じでも、その役割は環境で変わってくると思うのですが。」
先生は「聞いてた生徒がいたのか」と驚いた顔をした。アンタが驚くな!しばらくすると気を取り直し質問に答えてはじめた。
「同じ存在は並行世界に必ずおるぞ。同じ世界に存在出来ないだけじゃ。その役割は与えられた環境によって様々に変化するがの。」黒板に図を書きながら説明する、だから卑猥なマークを書くな!
「最近一人の女神の行った生まれ変わりによって飛躍的に研究が進んだんじゃ。『同じ存在は一つの身体の中で同じ世界で共存できる』『同じ存在は同性じゃなくても良い』『同じ存在には個性がある。考え方もまちまちだ』」先生は黒板に便所の落書きを展開した。コレを女子生徒にも書かせるのは軽いセクハラだと思う。僕は眠気に抗うため、更に質問した。
「一つの身体に二つの存在が共存と言いましたが、三つの存在は共存出来ないんですか?」
「コレは今までに例がないから仮説なんだがの?身体には容積があって三つの存在は入らん。だから溢れないように一つの存在が凍結するじゃろうの。ホラ、凍らせれば容積は減るし、凍らせればはみ出ても溢れないじゃろう?じゃが三つの存在が一つの身体に入るなんて事はあり得ん。そうさな・・・二つの存在を一つの身体に持つ者が別の並行世界に飛ばされる・・・そこには同じ存在がいるので存在だけがその世界の同じ存在に入る・・・あり得んだろう?天文学的な確率じゃて。」先生は黒板に子供に見せられないような落書きをしながら言う。
「ありえませんか・・・」僕は恥ずかしくなった、荒唐無稽な質問をしてしまったようだ。
「あり得たとしてもそれを証明する方法がないじゃろう。本当に有能な魔術師ならば足りない魔力を補助する魔法陣を使って元の世界に帰って証明するかもしれんがの?魔術を使えないヤツは行った先で骨をうずめる事になるだろうの。残された人間にとっては『いなくなった』という事実が残るだけじゃ」