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日本へ

「どうしたの?」

「悪夢を見ていた」

「どんな夢?」

「異世界で生まれ変わる夢」

「もう大丈夫だよ。ここは平成29年の日本だよ」

「生まれ変わるって言っても性別も年齢も違うんだ」

「大丈夫だよ、美咲は16歳の女子高生だよ」

「え!?」ガバッと上半身を起こす。

どうやらここは教室のようだ。俺はイスに座っているのか。

目の前に覗き込んでくる少女がいる。名札を見ると浅田さんっていうのか。人種は違うがノーマにそっくりだ。この馴れ馴れしさって親友っぽいな。こっちは知らないけど向こうはこっちの事を深く知ってそうだ。

異世界に行った時とは違い情報が頭に流れ込んで来ない。それどころかグレースの主人格が説明を求めてくる、軽くパニックになっているようだ。説明を求められても俺だってわからない。

元の世界に帰って来た、と考えても良いのか?でも体は女の子のままだし、グレースと共存しているのも相変わらずだ。わからない事で悩むより、まずわかる事を考え分析しよう。まず目の前の少女の制服、妹が通っていた私学のお嬢様女子高の制服だ。妹が第一志望の県立高校を落ちてこの高校に通ったせいで「お前、大学行きたかったら国立大学受かれよ」ってオヤジにプレッシャーをかけられたんだ。で、俺もその制服を着ている、と。制服は良いけど何で生足なんだ?意味がわからん!スーツの下にズボン下履く季節に、何でミニスカートに素足なんだよ?苦行?バカなの?何でこの格好で外歩かないといけないの?グレースの主人格も理解出来ないようだ。

あとは自分の呼び名は「美咲」というらしい。目の前の少女がそう呼んでいたな。胸に入っていた生徒手帳を見るとどうやら自分は『神原美咲』というらしい。現住所を見ると通りかかった事があるボロワンルームのアパートだ。一人暮らしなのかな?家族ですし詰めで暮らしてたらかなりイヤだぞ・・・。

あとは自分の身に起こった事を記憶を整理しながら考えよう。


朝礼の時、王女ネメシスの部屋へ行くように言われたんだよね。

王子の部屋に呼ばれた時とは違って「ふーん、そう。イヤなの?イヤだったら断れば?」みたいな雰囲気だったな。普通王族に呼ばれたら断れないよね?何かネメシスの事を侍女すら相手にしてない、というか軽んじてるような雰囲気だったな。「別に断る理由もないんで行きますよ」って言ったら周りの人が「あら意外。行くのね」みたいな顔してたな。

王女の居室を訪ねた時に違和感を感じてたんだけど、違和感の正体に今気付いた。次期女王候補の居室なのに近衛兵が一人も部屋の周りにいなかったんだ。お付きの侍女も一人もいなかったな。

で居室に入ったら部屋の魔法陣が光りだして、ネメシス様が「ごめんなさい!あなたを殺す気はないの!私は毒婦じゃないから!」って言ってたんだよね。

・・・で、気付いたら日本に帰って来てたって訳だ。ダメだ、考えれば考えるほど意味が分からない。


「何そんな難しい顔してるの?美咲っち!」説明するとしたら男を頭から丸のみするような女の子、山姥やまんば?アマゾネス?そんな感じの女の子が声をかけてきた。「相変わらず陽菜っちと一緒にいるんだね」親友っぽい女の子は浅田陽菜あさだはるなさんって言うんだ、覚えておこう。

「美咲っちが何でクラスのパリピの集団に入ってないのか不思議がられてるんだよ~?」とアマゾネスっぽい子が言う。グレースの主人格が『パリピ』とは何かと質問してくる。「意味は知らない。知らないけど『半濁音+らりるれろ』でだいたい『何にも考えてないアホ』って意味になるんだ。『プータロー』とか『パッパラパー』とか。だから『パリピ集団』って言ったら『何も考えてないアホ集団』って意味で十中八九間違いない」俺は主人格に説明した。グレースの主人格はアホ扱いに憤慨したようだ。グレースがプリプリと怒っているのにかまわずアマゾネスっぽい子が何かを一生懸命しゃべっている。で、最後に「オケマル~?」と聞いてきた。

グレースの本人格が「オケマル」の意味を聞いて来る。「オケマルって言うのは若者言葉だ。正確にはわからない、オッサンは若者の言葉がわからないもんさ。わからないけど何十年もこの国で暮らしてきたんだぜ?だいたいの想像はつくよ。『オケマル』は知らないけど似た言葉を漫画で読んだ事がある、『魍魎の〇ケマル』だ。どういう意味かって言うと正確には名詞だから意味はないんだけど、『〇ケマル』っていうのは「キレてからがヤベーヤツの代名詞」みたいなところがある。オケマルもそんな意味で十中八九間違いない。『アイツ、オケマルだから気を付けろ』みたいな使い方をするんじゃなかろうか?」グレースの主人格が感心しながら新たに「マジ卍」の意味を聞いてくる。「昔『卍固め』という技を使うプロレスラーがいたんだ。『卍固め』は本当に痛いプロレス技だったんだ。だから『マジ卍』は『マジで痛い』みたいな意味で十中八九間違いない」

そんな一割二割を引いて、グレースが間違いを覚え続けていた頃、ネメシスはグレースを学園国家へ送り込んだと思い込んでいた。

しかしグレースは別の世界で学園に通っていたのである。


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