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ホワイトシチュー

イシスが仕事から帰ってきた。

「お帰りなさい」グレースはイシスの上着を受け取った。

「お仕事お疲れ様でした。ご飯の準備をしてるから、座って待っててね。」イシスはグレースの甲斐甲斐しさを見ながら「将来良いお嫁さんになるな、相手がいればの話だけど」と思った。

器に二人分のホワイトシチューを盛り付け、焼いたばかりのパンを器に並べる。こうして二人分の夕食の準備が終わった。

女二人の食卓は食べる量が少ない。そしてグレースは少食だ。

特に不満がなかった俺が、唯一の不満を言うとするなら、サラリーマン時代時間がない時唯一の楽しみが「食べる事」であったのに、グレースの体では一口食べたら、お腹いっぱいになってしまう事であった。


冷蔵庫がない世界で食材は早目に使いきらなくてはならない。

パンを作る時に用意したバターや牛乳は日持ちがしない。「小麦粉とバターと牛乳で何か料理をしなきゃならない」といって思い付いた料理が「ホワイトシチュー」と「マカロニグラタン」と「クリームコロッケ」だった、どれもホワイトソースを使った料理だ。

マカロニグラタンを作るにはマカロニとチーズを自作しなきゃいけない。

クリームコロッケは作れるが、出来ることならサンドイッチを作った後、食パンの耳を自家製パン粉にしたいし、ハムを具にしたいが、自家製ハムはまだ作っていない。


消去法でホワイトシチューしかなかったのだ。

ホワイトシチューは、日本で生まれた料理らしい。

異世界でも白いシチューは存在しなかった。

というよりもホワイトソース自体が存在しなかったのだ。


朝、グレースが鍋料理を作っていたのをイシスは見ていた。それが白いシチューだとは知らなかったが。

休日に作っていたサラリーマン時代のレパートリーを披露しているだけなのだが、イシスは独創的な料理を娘が産み出していると勘違いし、娘を料理人に出来なかった自分を「何と無力な母親だろうか」と責める事しか出来なかった。


グレースは手を止めて下を向いているイシスに、「どうしたの?美味しくなかった?」と声をかけた。

イシスは笑顔を作りグレースにこう言った。

「食べるのがもったいないくらい美味しかっただけよ。あ、そういえば姫様の家庭教師が明日お休みします。姫様にとって久々の完全休養日になりますね。姫様は近くの湖へピクニックへ行くつもりみたいですけれど、あなたも一緒に連れて行く予定になっているわ。そのつもりでいなさい。」

ピクニックの予定にイシスは含まれていなかった。イシスはグレースと会ってからの王女の「イシス離れ」を少し寂しく思いながら歓迎していた。

イシスは他の王族からも「自分付きの侍女になって欲しい」と言われていたが「自分は王女様付きの侍女なので」と断っていた。


「ヘラ様が・・・わかりました。そのつもりでいます」

グレースは仕事モードでイシスに敬語でそう告げた。

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