tesm competition (Tonatu's episode) 1
10/3 投稿遅れます。申し訳ございません……
「今偵察してるのって水代高校?だっけ、紅」
ついつい暖かな感覚に眠気を誘われている中、急に耳に声が入ってくる。
「え、ああそーばい」
ひどく適当な返事。
当然私をおぶってくれている祐からは、えーと文句の声があがった。
そして振り返って私の方を見た。
私と違った、大人びた顔立ち。少しうらやましいかも。
でも祐だからこそな気もするし、私にはいらないな。
「もしかして紅、最近私を困らせて楽しんでない?」
そう言って、もうっと私にむくれて見せる。
そういう反応されると、楽しんでないなんて嘘かも、なんて思っちゃうな。
「そーかもね」
「いたずらするのはいいけど、ちゃんと視察もしてね。私、紅達と皆で全国大会行きたいから。紅が行きたいっていう全国に」
いたずらするのはいいんだ。
「うん。よかよか、しっかり見よるから。心配かけてごめん」
「うんうん全然大丈夫。偉そうに言ってるけど、紅の力がないと多分この人たちレベルには勝てないし」
「うちん力、かぁ。足さえしっかり動けば直接力になれるばってん、そこはしょうがないなぁ。あ、べつに感傷に浸らんけんでね。祐ん泣き顔、いつばってん思い出せるくらいみたし」
「別にもう泣かないよ。次泣くのは全国大会優勝の時って決めてるから」
「優勝。そんなら準決勝決勝で当たる、水代高校と舘郡高校はしっかり見ないとね」
「せやせやー」
祐が冗談めかして関西弁の真似をする。
目先10m程で行われている団体戦。S4まではやるものの、S3にしてもうすでに水代高校は勝ちを確定していた。
対戦校もここらでは強い方だというのに、強者をかき集めたっていうのは本当だったんだ。
しっかりと対策を図っておかないと。対策……
「S1ん初樹さんんギフトは伸びる上回転、無回転にストップばかけれること。祐に似た柔らかそーな感じからして、クッションのイメージしやすいかな。台上得意な人じゃなかっち厳しそう」
「えっ、急にどうしたの。というか私柔らかそうってのは余計じゃ……」
「長所のみの大まかな概要ばい。S2の響夜さんはギフトなし。ただドライブがえげつなか。混じった横回転もまちまちやし。あと目ん色変えとう、髪染めとう」
「紅のギフトそこまでわかるの!?」
「うん、祐の縮毛矯正かけとうんまでばっちり把握済みばい」
「なんか恥ずかしいんだけど」
「話し戻すよ。そんで今回はDは初樹さんと響夜さんで、S3。彩月さんで、実力んうちのメンバーん平均と同等な感じやね。明莉をあてたいね」
「確かに似てるかも、明莉と」
「で、さっきまでやっとったんのが里美さん。これはまたえげつなかギフトもちで、フォア側に伸びる球打っちゃったら一点奪われたと思ってよかと」
「あのえげつなスマッシュが打ち込まれるってことね……」
「しかもあれば直で見ると結構威圧感のあるみたいで、流れば強制的に奪われちゃうのみたい。実力ほどほどなんが救いかな」
「二番手の私が、相手した方がよさそう?」
「そーやね。できよったら頼むわ」
そうこう話しているうちに、水代高校最後のプレイヤーが台に着く。
206―64
もうすでに絶望的な、どうしようもない点数差。
その上、今から対戦するのは前個人戦一位、前団体戦一位校の大将を務めた―――
「大将戦、華築 美月、木津 夏子 台に着いてください」
県大会の、初戦にしてあまりにも大掛かりなアナウンスがコールする。
美月さん、この人だ。
けどなんか……
「思ったより、強そーに見えんな」
「そうだね、なんだかフォアフォア見てる限り普通な感じ」
祐が私の言葉に反応する。
そして「なんか、こう……」と言葉にできないむずがゆさを顔に表したと思ったら、私を背負っているのも忘れて急に勢いよく奇怪な行動をとりだした。
「ふぉおお!みたいな機械みたいな動きすのかと、てあれ?なんで紅、息上がってるの」
「いや、祐が急に暴れだすから……私が振り回されて」
「あ、ごめん。ほんと気づかなくて」
「勘弁してなー」
そう言って嘘の怒りを表情に浮かべると、さて、と仕切り直しの言葉を入れる。
「ちょっとおんぶポジション悪くなりよったから、ちょっと直して」
「はいはい」
祐が私をポンと投げ上げるようにしてポジションを整える、その瞬間だった。
さっき見ていた台の方から、あまりに耐えがたい寒気を感じる。
背筋がぞわってする感覚……。
こんな感覚初めてだ。
「ひゃっ!」
「ふぇっ!」
つい祐にかけていた腕をぎゅうとしめてしまう。
そのしめたところが悪かったようで、連鎖的に祐にも被害が及んだようだ。
「もう、だからいたずらするのは……!」
「いや、今回んはしたくてしたんやなくて」
「聞きません」
「冷たいなぁ」
「……」
「……」
「で、どうしたの」
「祐は甘いなぁ」
ま、でもこれは話しとかないとなぁ。
個人戦一位さんとの、美月さんとの、向き合い方を。
「祐、美月さんとはまともに戦わんけん方がよかと」
「うん?一点でも多くとれる当て方した方がいいんじゃないの?」
「そー、そうなんだけどね。だけん、そげな話やなくて」
「そんな話じゃない?」
「うん、彼女のギフト相手じゃ。どん返球がどげんなるかが確率として見れる力ん前には、うち達やかなわんけん」
「……取れて、何点?」
祐の優しい声色に、私の相手の力を見抜くギフトを働かせる。
もし、もしうちのメンバーで美月さんと戦ったなら……。
不安で不安で仕方がない。
身内びいきで有利な結果を導きたい。
けど、イメージの中でさえそんなものも圧倒する、美月のギフト。
仮想の中での試合は瞬く間に終焉を迎えた。
本当は答えは、最初から分かっていた。
「取れて、五点。序盤に五点。そこからは点数全部奪われる」
導き出される絶望的な結論。
実際戦う人を前に不安に思うのは失礼かもしれない。
安心させる言葉を言うべきなのかもしれない。
けど、大丈夫なんて嘘、私には口に出せない。
しばらく続く沈黙。
私の心音は、祐に伝わっているのだろうか。
少なくとも、祐の鼓動は私に聞こえてこない。
ふと、意外な言葉がこの沈黙を破る。
「大丈夫、だってこれは団体戦だから」
「大丈夫じゃなか……1%くらいかもしれん……」
つい本心がもれた。最低だ。
けれど、そんな私の目の前に、祐が人差し指をたてた手を向けた。
そして一言。
力強い、一言を。
「1%、1%にしがみつくんだよ。紅が私に、うちのメンバーに出会ったみたいに」
「うちが祐に出会ったみたいに……?」
「そう!」
そう声を張り上げると、横顔ながら微笑みをこちらに向けて続ける。
「団体戦なんだから、個人戦よりはやりようはあるよ。それに、死ぬ気でやれば百万回に一回くらい勝てるかもしれない。その一回をひくの」
あはは。ぶっとんだ理論。でもそうかも
「死ぬ気なら、一万回くらいやれば腹痛ばってん起こしとってくれて勝てるかもなぁ」
「腹痛なら死ぬ気関係なくない?」
「相手さんの実力だと腹痛でも多分きつか」
「……死ぬ気でやるから大丈夫!」
「そんならうちは祐の分まで休んどくね」
「あれ、それ怠けてるだけじゃ」
「せやせや~」
ふと、祐の背中の温かさに眠気を覚える。
いつの間にか終わっていた試合のスコアは、60‐1
さっきまでの私なら、そのスコアにまたも不安に不安をおぼえていたかもしれない。
でも今は、祐のゆったりした鼓動と私の鼓動が同調して、安心感を覚えていた。
不安がるのは仕方ない。
でも不安がっても仕方ない。
私は私のできることをするんだ。
私達徒夏高校の仲間に、より良い結果をもたらすため。
私に神奈川での卓球の場所を作ってくれた、仲間たちに。
キャラクターどんどん増えてごめんなさい。
次回あたりにまとめて書き上げておきます




