tesm competition 1
7月28日 団体戦初日
私の部屋のなか、朝の陽ざしで目が覚める。
自然の光で目覚めを迎えるのは久々だ。
小鳥の声も部屋までかわいく聞こえてきて、うーんと伸びをした後に窓を開けてみる。
すると吹き込む夏の匂い。
気持ちの良い朝。
気分もすかっとしていて、団体戦初日としては最高レベル。
なんだか今日はいいことありそう!
「ふんふーん」と、鼻歌を歌いながら時計を確認。
時刻は 8:20 。
八・・時?あれ、団体戦の会場への集合時間は……。
近くにあるスマホを開く。
そして何通もの誰かからの通知を無視してメモ帳を確認。
集合時間9:00 学校から会場までは1時間前後
これは……。
「遅刻だっ!」
10:00
各県に建ててあるのが不思議なぐらい大きい卓球大会会場の中、スマートフォンにて時間と連絡を幾度となく必死に確認する。
どこに、先輩はどこに……っ。
せわしなく視線を泳がして探すも視界に移るのは赤の他人ばかり。
この大人数の中迎えに来てくれた部長を探し当てるなんてまったく容易ではない。
焦って部長を探す中、一人こちらにピョンピョンはねながら手を大きく振る人影。
「里美ちゃん、ここですここー」
ロングの滑らかな黒髪、女性ならば誰しもが憧れそうな体つき、そして何よりも整った顔立ち。
彩月とはまるで逆、彩月が洋風美少女ならば彼女は和風美人。
見間違えるはずがない、この人は
「美月先輩っ!」
「気づくの少し遅くて少しショックです」
あははと苦笑を浮かべた先輩に走って近寄る。
すると、美月先輩が人差し指をたてて確認をこう。
「里美ちゃん、ちゃんと道具は持ってきてますか?さすがに私でも道具までは対処しかねますよ」
いわれて部長の隣で手持ちバッグを再確認。
うん、大丈夫そうだ。
「しっかり持ってきてます」
「そうですか、ならよかった。じゃあ行きましょう」
優しく微笑んで、部長が私の手を握って私を先導する。
私は部長の力に任せて足を動かす。
「そういえば。里美ちゃん、この前の総当たり戦落ち込んでしまったりしてないですか」
部長がこちらに振り向き、ふと私に尋ねる。
総当たり戦、か。
つい昨日のように、イメージが思い返される。
本当に、散々だった。だって私は勝率が最下位だったんだから。
改めて、私の無力さを知らし得られた気分。
そしてきっと先輩はそのことを気にしてくれてるのだろう。
「さすがに少し落ち込みました、けど大丈夫です。むしろモチベーション上がったくらいです、みんな強いんだって」
「ならよかったです、少し不安だったんで」
それにしても今私に笑顔を向けてくれている部長。卓球をしている時はまるで別人。
あの冷たく、対戦せずとも相手を畏縮させるような雰囲気……。
その雰囲気に見合う、最強にふさわしい強さ。
今思うだけでも恐ろしい。
「一応フォローさせてもらいますけどね、里美ちゃんは私から6点も取ったんですから十分強いんですよ。だってほら、みんな5点、取れなかったでしょう?」
本当に里美ちゃんは私に想定外を体験させてくれる。
そう言って不思議な体制になりつつ部長が私をよしよしとなでる。
「ありがとうございます。でも、やっぱり悔しいです。まるで彩月との差が広まったみたいで」
「彩月ちゃん……ですか」
これまでやわらかい表情が目立った部長に、唐突に影が差す。
何かあるのだろうか。
疑問を投げかけようとしてみるも、先に先輩が答えを挙げた
「むしろ一番不安なのは……彩月ちゃんですね」
「え、彩月が?」
「はい、彩月ちゃんが。あまりにも尖っていなすぎる。だというのに彩月の実力は上の下、これではいずれ……」
言葉を濁す。
いずれ…何なのだろうか。
なんだか自分のことでもないのに、少し不安になる。
まさか、彩月が卓球をやめるなんて……ないよね?
なんだか何を意図しているのか聞かないといけない気がして美月先輩に尋ねようとするも、それは先輩の唐突な投げかけに阻止されてしまう。
「それはさておき、さてルールの確認です。団体戦はルールの変更もありましたから、問題形式でしっかり確認です。正解を挙げてくださいね」
続けて「第一問」と問題を人差し指をたてて問題を出題。
すごい急。
だけど確かにルールの確認はしておきたい。
しっかり確認しておかないと。
「団体戦は基本一試合ずつ行われますが、先鋒戦、次鋒戦、中堅戦、副将戦、大将戦、それぞれを意味する言葉と、シングルスダブルスどちらかを答えてください」
「S1 S2 D S3 S4 でしょうか?」
「正解です。続けて二問目。決勝を除く試合の時、勝ち進めるのは何校でしょう」
「二校ですね、四校のうち上位二校」
「大正解です。さて三問目。S1~S4 それぞれが何セットマッチ、何点先取かを教えてください」
「先取点はS1 S2 S3 は40点。D S4 は60点。なおかつ先取したものは、相手が1点を奪取するまで20点まで点を取り続けられるんでしたよね?あと団体戦はすべて一セットマッチで、他三校から奪った合計点を、他三校と競うんでしたっけ?」
「流石ですね。二年前のルールの改正で大きく団体戦の仕様が変わったので不安でしたが、大丈夫そうで良かったです。それじゃあ先を急ぎましょう」
安堵の言葉をもらしたのち、唐突に手をひかれる力が強くなる。
なぜだろうなぜだかその力に流されるのが嫌で、私はその先輩の力に身を任せないよう自分の力で地面を強く蹴った。




