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Feeling×Hopes  作者: toki no yu
prologue
6/9

member 6

 

「団体戦ですわ!」


 もう日が落ち始め夕焼けの景色が窓からのぞかせる中、やっとの休憩時間だというのに元気そうな声が卓球場に響く。

 16:30からもう三時間半もやっているというのに、響夜先輩は元気満々といった感じだ。

 私にはもう、話を聞き取るのも困難だというのに。


 相変わらずすごい体力……。

 嫌味じゃなく本当に分けてほしいよ。


 そんなことを心内に思っていると、響夜先輩が金色に染色された腰までの天然ストレートの髪揺らしつつ、カラーコンタクトで青色に彩られた目をこちらに向ける。


「里美、県大会はいつでしたっけ?」


「え?えっと……再来月の上旬でしたっけ?」


 おぼろげな頭から答えを絞り出し、しどろもどろに返答する。

 響夜先輩はその返答に満足いったようで、ターゲットを同じく疲れ果て壁に寄り掛かった彩月に移した。


「彩月、私たち高二は今日朝練に出てました?」


 その質問に彩月は、下げた頭を無言で横に振ることで対応。

 口を開くのもつらいといったところだろう。


「そう、つまり私たちは総当たり戦の表を作っていたということなんですのよ!」


「大会の手続きも……だけどね」


 自分にしか伝わらない脈絡を豪語する響夜先輩の隣で、初樹先輩がえへへと柔げながらに苦笑を浮かべ補足を入れる。

 初樹先輩のほんわかとした雰囲気を体現した体つきと、それを強調するボブヘア。

 それは今にも柔らかに包み込んでくれそうで、見ているだけでなんとなく癒される。


「さて勝手に県大会団体戦のメンバーとして彩月と里美を入れましたけど、取り消すなら早めに頼みますわ。とはいっても、団体戦優勝のためかき集められ、資金を頂いている私たちが参加しないなんて、許されるとは思いませんけど」


 響夜先輩が、ねぇ初樹?と同意を初樹先輩に求める。


 確かに、私たち水代高校卓球部員が団体戦に出場しないのは、あまりに失礼なことだった。

 部長である美月先輩に対して。


 というのも、私たち神奈川県所在の水代高校に所属している卓球部員である、初樹先輩、響夜先輩、彩月、そして私は、美月先輩に資金を頂いてこの高校に所属しているのだ。

 それは別段金銭面で生活が圧迫しているというわけでじゃなく、美月先輩からの申し出によるもので。

「ある程度のお金を支払うため、私と同じ高校に来てほしい」という言葉は、今でも奇怪な話として頭に染みついている。


 ちなみに高校は、卓球が流行りに流行っている今では非常に珍しい、県大会から出場可能な神奈川県にあることから水代高校が選ばれたらしく、神奈川が地元であった私を除く三人は引っ越してきているらしい。

 もちろんそこらへんの資金も美月先輩が卸してくれたようだ。


 なぜ資金をそんなにも持っているのかは、いまだに尋ねていない。

 ただ彩月が言うには親がすごい人なのだとか。

 いや本人もすごいとか。

 いろいろ興奮して熱弁されたため、つい聞き流してしまい曖昧な情報しか思い浮かばない。


 ただ、一つだけ頭に入っていることがあった。


「なにより美月先輩は、前年度の全国大会の優勝者!しかも団体戦も個人戦も!すごいでしょ!高校生最強よ!」


 彩月のどや顔とともにリプレイされるイメージは、私のモチベーションを幾度となく高ぶらせた。

 絶対に勝ってやる、と。




「里美!ほら、部内総当たり戦の表」


 彩月の声が私を現実に引き戻す。

 目の前には私に一枚のプリントを差し出した彩月がいた。

 気づかないうちに話が進んでいたようだ。


「ん、ありがと」


 プリントを受け取ると、紙とは思えない湿った感触を指に感じる。

 すぐに視線をプリントに移すと、点々と、ところどころ線のように彩月の汗がついていた。


「うわ……」


「なによ。上の空な里美のために取って来てあげたんだから、それぐらい我慢しなさいよ」


「むぐっ」


 返す言葉もない。

 しぶしぶ視線を汗から文字に移すと、対戦順一覧が挙げられているところに目が留まる。


 一回戦 彩月 二回戦 休み 三回戦 響夜 四回戦 美月 五回戦 初樹


「まずは里美を倒して、流れをつかむといったところね」


 わざとらしく私を挑発する。

 易い挑発、でももちろん私は


「簡単に勝てると思わないでよね。絶対、負けないから」


 笑ってしまいそうなくらい、わかりやすい挑発を返す。

 でも彩月と応援しあうなんて、私にはできなかった。

 競い合うこと以外では。


「里美、彩月!もうここ閉めますわよ!」


 先輩の声が卓球場に響き渡る。

 もうそんな時間か、早く外に出ないと。


 ぐっと重い足に力を入れて立ち上がると、彩月とともに卓球場を後にした。



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