member 5
梅雨だというのに雲一つない空。
さすような光が、私の肌を焼く。
未だに少し汗で湿った制服から漂う制汗剤の匂いは、自然の香りとはまた違った夏の訪れを感じさせる。
彩月より早く卓球場にたどり着くのに必死だった朝には気づかなかったものの、冷静に見ると少し服が透けかけていたので、私は対策として厚手のシャツを着こんでいた。
お陰様で太陽光の当たらない服の内側からも押し寄せる熱気。
夏、いやだなぁ。
汗の量はだんだんと減ってはいるものの、未だに体をつたいこそばゆい。
その上に、半端な休憩をしたことで太ももは尋常でない痛みを発している。
どうしよう、見えないように湿布でも張っておこうか……。
おじさん臭いかな。
そんな疲れ切った私をよそに、隣には凛として歩く彩月の姿。
まるで疲れも辛さも見せていない。
でも、流石の彩月でも、疲労たまってる……よね?
少しちょっかいでも。
「彩月って本当、疲れ知らずだねー」
あはは、と彩月の軽く太ももをむにむにともんでみる。
ぐいと食い込む私の指先。
それは思いのほか効いてしまったようたようだ。
彩月から発せられるは声にならない声。
「……っ!」
パンっと私の手を叩き落とすと、涙を目に浮かべながら太ももを擦りつつ、目で小動物のように私を威嚇する。
何だ彩月も痛いのかと安心する反面、流石に申し訳ない気持ち。
でも我慢なんてする必要ないのに。
する方が彩月っぽいけど。
「あはは、ごめんごめん」
冗談めかした笑いとともに謝罪をすると、ふんっ、とそっぽを向いた。
しばらくそうして沈黙が続く。
黙々と歩を進める。
ふと、今日の卓球の結果が頭によぎった。
朝練の試合の点数結果は97:116。
悔しいが、完全に負け越している。
もっとうまくならないと駄目だ、再来週の大会にも向けて……。
あまりにも乗り越える課題は多いけれど、その量に圧倒されず少しでも成長しないと。
負けるなんて、面白くないから。
と、そういえば。
「今日先輩達来なかったよね」
「多分余程の用事でもあったんでしょ。でも誰一人来ないなんて初めてかもね」
「だね。放課後のは来るのかな?」
「来るでしょ、流石に。私は美月先輩さえ来ればいいけど」
「相変わらずなついてるねー」
「なついてるって、なんか嫌な表現。ま、美月先輩以外の人に卓球で負ける気しないし」
「随分強気だね」
本当に突っかかるなぁ、先輩に対してまで。
いつか身を滅ぼしそうで、正直不安……。
ちらと横目で彩月を見る。
するとちょうど彩月と視線が合った。
目と目が合う。
なんだかドクンドクンと心臓の音がする。
一秒一秒と時が進む。
何だろう、この合間は。
雰囲気に耐えられず無理に口を開こうとする。
しかしそれはかなわない。
彩月は声を被せてきたのだ。
「そういえ……」
「いやあんたは、里美は、別かもね」
違和感のある笑顔。
それは不思議な気分にさせた。
何だろう、例えようのない……。
視線は移動することを許さない。
「別……?」
思考の中の声が漏れる。
それはきっちり彩月聞こえたようだ。
それでも彼女は相変わらず笑みを浮かべ続ける。
「負けないから、どんなことでも」
ドクン、ドクンと心臓が跳ねる。
何だか気分が高揚する。
なんて返答しようか頭には浮かばない。
けれど声にははっきり表れた。
「私だって、負けない。どんなことでも」
その返答をしたとき、確かに私も笑っていた。
どうしてかもわからないけど、確かに。
一日二日更新遅れます。誠に申し訳ありません……。




