第四話 挨拶!
「______。」
いくら見てもそこにはそれしかなかった。
「ただの、紙ね。」
沈黙のなか、まぎれもない事実を絵原が最初に口にした。
てきれば口に出さないでほしかった。
あんなに膨らんだのに出てきたのはただの紙切れだった。
「紙でどうやって戦えばいいんだよ!あれか、紙で死神の鼻と口を押さえて窒息…ってできるか!。」
タイトの発言にハチがハッハッハと笑い、
「これはただの紙切れじゃない。召喚紙。」
「召喚紙?」
聞き慣れない単語を耳にしたタイトはハチに聞き返す。
「召喚紙。ここに霊力を注いだら、幽霊と戦ってくれる霊獣が召喚される。武器が召喚紙なのはとてもレアだからね。絵原ちゃんが知らないのも無理はない。」
この紙切れの説明をしたあと、ハチは召喚紙を指差し、
「タイトくんの霊獣を見せてくれないか。」
と、目を輝かせながら急かした。
ハチに言われるがまま、タイトこの召喚紙に
霊力を注いでみた。
また霊力が出せなくなるのではないかと一瞬不安になったが、一度出せると、ちゃんと出せるようになっていた。
召喚紙は、真っ白だったのに、霊力を注ぐと模様が浮き出てきて、紙からポワンと煙が出てきた。
どんな獣が現れるのかとタイトの内心はとてもわくわくしていた。
そこに現れたのは_____。
少女だった。
ただの少女じゃない。かなりの美少女だった。
緑色の髪、綺麗な青色の瞳、ゴスロリの服
みるもの全て魅了してしまうような、美しい少女が現れた。
普通なら喜ぶべきなのかもしれない。
こんな美少女がこれからタイトと共に戦ってくれるのだから。
「なぁ、ハチさん。[霊獣]が出てくるんだよな?」
タイトは大事なことを忘れなかった。
「うん、そうだよ。」
「これのどこが、霊獣なんだよ!獣ではない!このままでは戦えな...。」
そう言いかけたとき、その少女の手に持っている
物騒なものに気がついた。
「カナヅチ…。」
少女が持ってはいけない、普通のカナヅチだった。
「初めまして。あなたの霊獣です。」
霊獣はぺこりと頭を下げて、タイトに挨拶をした。
「えーーっと、初めまして。俺の名前はタイト。君の名前は?」
「自分は先ほど産まれた霊獣なのです。名前はありません。タイト様、自分の名前をつけてくれませんか?」
急にそう言われても、とっさに気の利いた良い名前が出てこなかった。
名前をつけてくれと言われて、フッと1つの名前が頭にでてきたものがあった。
「じゃあ、ツネ。」
「ツネですね。了解致しました。」
深くお辞儀をする霊獣_ツネ。
「なんでツネなの?」
絵原が聞いてきた。
「昔飼っていた猫の名前だよ。すげー可愛いんだ。この子もそんな可愛さがある。」
「霊獣に....可愛さ....?」
絵原が混乱しているようだった。
「まぁ、主人がそういってるだから、良いじゃない。」
ハチがそうフォローした。
「ツネ、本当に死神と戦えるのか?」
「はい。余裕です。」
あまり感情を表に出さないツネだが、タイトにはそう言ったツネに自信満々のようにみえた。
「まぁ、時期がくればわかってくるわよ。じゃあそろそろ、始めましょうか。」
絵原が勝手に話のピリオドを打ち、次の話へ進めた。
「何を始めるんだ?」
タイトは絵原に尋ねた。
「何って…。登録しなきゃ。そのためにここに来たのよ。」
なんの為にこんな場所に連れてこられたのか、説明もしなかった絵原に対し、タイトは少しムッとしたのだった___。